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地域研究方法論プロジェクト

 今日の世界において、地域研究の意義はますます大きくなっています。それは、冷戦が終わり、従来のように西側陣営と東側陣営という安易な区分で世界の出来事を理解することが難しくなり、世界の国々を内在的に理解することが必要となっているためです。また、グローバル化によって国境を越えたヒトやモノや情報の移動が増大し、移民やその家族の移住先での法的立場の問題や、感染症や災害などの国境を越えたリスクへの対応といった問題が生じているのに対し、従来はそれぞれの国内で対応・解決が図られてきたこれらの問題に国の枠を越えて協力して対応することが求められているためです。

 このような現代世界の状況のもと、特定の国や地域について調査研究を深めていればよかった約20年前までの地域研究とは異なり、今日の地域研究は、特定地域の調査研究を深めるとともに、研究対象地域や分野の垣根を越えて地域研究者どうしが協力連携することが強く求められています。また、研究と社会とを切り離すのではなく、社会の現場で意味のある形で地域研究の研究成果を発信するため、外交、企業活動、防災・人道支援などの各分野で地域研究のエンドユーザである官公庁、民間企業、市民団体などの実務者との協力連携も求められています。

 また、地域研究方法論プロジェクトでは、地域研究者が社会的存在である側面に目を向けて、それぞれの研究者が置かれた環境が異なることに積極的な意義を見出すような地域研究のあり方を考えます。
 これまで学術研究の方法論では、常勤の研究者が勤務時間中に何をどうするかにばかり目が向けられ、個々の研究者が置かれた環境の違いにはほとんど目が向けられてきませんでした。しかし、研究者のあり方が多様になっている今日、研究者の社会における存在の側面を考慮せずに研究の方法について考えることは難しくなっています。

 一人ひとりの地域研究者は、どのようにして自分を取り巻く社会に自身を位置づけて研究を続けているのか。有期の職を重ねながら研究を続けている人。出産・育児をしながら研究を続ける人。研究対象の地域社会で家族や職を得て暮らしながら研究する人。官公庁や民間企業での経験を積んで、それを研究にまとめて仕事に活かそうとする人。このような人たちは、いずれも今の日本の社会状況や研究環境では多数派でないため、研究を続けるうえで不都合を感じることも多いと思います。制度や研究環境の問題点を改善することはもちろん必要ですが、それと同時に、そのような制約と折り合いをつけようと工夫することが研究に積極的な影響を与えることにも目を向けてもよいように思います。

 地域研究方法論プロジェクトでは、地域研究において研究者は決して研究対象や研究課題から切り離された無色透明な存在ではなく、個々の地域研究者が置かれた環境が研究課題や研究内容に大きく影響を及ぼしていること、そしてそこにこそ地域研究の味わいがあるのではないかと考えています。
 地域研究方法論プロジェクトでは、プロジェクト全体として「大学院で教える/学ぶ地域研究」「地域研究者のキャリアパス」「異業種・異分野との連携」の3つのテーマに重点的に取り組んでいます。また、それ以外のテーマについても、本センターの公募共同研究に採択された共同研究を通じて取り組んでいます。

 地域研究方法論プロジェクトについての具体的な活動内容については以下のページをご覧ください。
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/~yama/areastudies/

大学院で教える/学ぶ地域研究

地域研究方法論巡回ワークショップの実施(2008~)
地域研究を掲げた大学院や研究所・研究センターは全国にあり、それぞれ特色ある研究や教育に取り組んでいます。本プロジェクトでは、地域研究に携わる国内の教育・研究機関を訪問して地域研究方法論の研究会を行い、教育・研究の現場で地域研究に取り組んでいる人たちと情報共有や意見交換を行っています。これまでに、東京大学(2008年11月、2009年7月)、早稲田大学(2009年2月)、上智大学(2009年6月)、大阪大学(2009年12月)、東北大学(2010年2月)で開催しました。研究会のプログラムや記録は地域研究方法論研究会のウェブサイトに掲載されています。
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/~yama/areastudies/index.html

学術雑誌『地域研究』(総特集:地域研究方法論)の刊行(2011)
本センターが進めてきた地域研究方法論プロジェクトの活動成果をもとに、2012年3月、学術雑誌『地域研究』の「地域研究方法論」総特集号(第12巻第2号)が刊行されました。
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/publish/?cat=4

地域研究方法論シンポジウム「実践系学知としての地域研究」の開催(2010)
地域研究コンソーシアムとの共催により、2010年11月5日、上智大学で地域研究方法論シンポジウムを実施しました。「実践」を広く捉えた上で地域研究を「実践系学知」と位置づけ、「文理融合」「ヨーロッパ地域研究」「人道支援・国際協力」の3つの切り口から地域研究について考えました。本ワークショップの様子は『地域研究コンソーシアム ニューズレター』No.10に掲載されています。
http://www.jcas.jp/jcas_image/jcas_news_10.pdf
また、議論の概要は以下のページに掲載されています。
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/~yama/areastudies/report/20101105.html

地域研究者のキャリアパス

「地域研究とキャリアパス」巡回ワークショップの実施(2011)
地域研究コンソーシアムの社会連携部会との共催により、2011年12月から2012年2月にかけて、地域研究者のキャリアパスについて考える巡回ワークショップ「地域研究とキャリアパス―地域研究者の社会連携を目指して」を開催しました。大阪大学(2011年12月)、九州大学(2012年1月)、北海道大学(2012年2月)、京都大学(2012年2月)を訪問してワークショップを実施した後、2012年2月19日に上智大学で最終ワークショップを開催しました。ワークショップの記録は報告書『地域研究とキャリアパス―地域研究者の社会連携を目指して』として地域研究コンソーシアムと本センターが共同で刊行しました。
   http://www.jcas.jp/about/jcs.html

異業種・異分野との連携

「ルックイースト政策」研究の実施(2012)
学術研究の結果をもとに、研究対象地域の政策を評価し、政策提言することも地域研究の役割の1つです。留学生を派遣して日本や韓国の文化や企業倫理を学ぼうというマレーシアのルックイースト政策(東方政策)は、今年で実施30周年を迎えました。日本マレーシア学会(JAMS)の協力のもと、マレーシアの教育・研究機関や日本の外務省との連携により、ルックイースト政策の成果を学術研究の立場から評価し、マレーシア政府に対して政策提言を試みます。

「地域の知」シンポジウム「中東から変わる世界」の開催(2011)
地域研究コンソーシアムとの共催により、2011年4月16~17日、「地域の知」シンポジウム「中東から変わる世界」を開催しました。中東政変の世界史的意義や今後の展望を考えるにあたって、中東地域の専門家だけでなく中国、ヨーロッパ、旧ソ連地域、東南アジア、アフリカ、中南米といった世界の諸地域の専門家を集め、異なる地域の経験を結ぶことを試みました。また、外務省から2名の報告者を迎え、実務の現場の知見と地域研究の連携をはかりました。シンポジウムの議論をもとにした報告書『中東から変わる世界』を地域研究コンソーシアムと本センターが共同で刊行しました。
   http://www.jcas.jp/about/jcs.html

共同利用・共同研究プロジェクトによる活動

地域研究方法論プロジェクトでは、本センターの公募共同研究を通じて以下のようにさまざまな角度から地域研究の方法論について研究を進めています。

「研究者の広がり」

「公共領域としての地域研究の可能性―東南アジア海域世界における福祉の展開を事例として」(代表者:西尾寛治、期間:2008年4月~2010年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/index.php/kyodo29
「ヒューマン・パワー時代の外交・安全保障の現場と地域研究」(代表者:川端隆史、期間:2010年4月~2012年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2010-72

「手法としての映像」

「地域研マレーシア映画データベースを活用した研究」(代表者:山本博之、期間:2009年6月~2010年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/hoga2009-28
「映像実践による現代宗教復興現象の解明を通じた地域研究手法の開発」(代表者:新井一寛、期間:2008年4月~2010年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/index.php/kyodo30
「大衆文化のグローバル化に見る包摂と排除の諸相―マレーシア映画を事例として」(代表者:篠崎香織、期間:2010年4月~2012年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2010-12
「『混成アジア映画』に見る世界―一潮流としてのマレーシアを中心に」(代表:篠崎香織、期間:2012年4月~2013年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2012-52

 「実践的活用」

「災害対応と情報―人道支援・防災研究・地域研究の連携を求めて」(代表者:西芳実、期間:2010年4月~2012年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2010-71
「紛争・災害後社会のメディアと記憶」(代表者:西芳実、期間:2012年4月~2013年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2012-61

「地域の暗黙知」

「地域研究の再帰的分析」(代表者:小森宏美、期間:2009年4月~2010年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/index.php/kyodo2009-02

 「文理接合」

「自然科学者による地域研究方法論の構築」(代表者:柳澤雅之、期間:2009年6月~2010年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/hoga2009-27

 「情報技術の活用」

「地域情報学の表現形態に関する研究」(代表者:山本博之、期間:2009年6月~2010年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/hoga2009-20
「フィールドに根ざした地域情報学の創出」(代表者:山本博之、期間:2009年6月~2010年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/hoga2009-26
「『仮想地球』モデルをもちいたグローバル/ローカル地域認識の接合」(代表者:荒木茂、期間:2009年4月~2010年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2010-73
「『仮想地球』モデルをもちいたグローバル/ローカル地域認識の展開」(代表者:荒木茂、期間:2010年4月~2011年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2011-73

 「通史を書かない地域研究」

「地域研究における情報資源の共有化とネットワーク形成による異分野融合型方法論の構築」(代表者:錦田愛子、期間:2011年4月~2013年3月)
   http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2011-74

「ライフとキャリア」

「女性地域研究者のライフとキャリアのネットワークに関する研究」(代表者:王柳蘭、期間:2012年6月~2013年3月)

「生活とコミュニティ」

「アジアと日本を結ぶ実践型地域研究」(代表者:安藤和雄、期間:2012年6月~2013年3月)

 「企業活動と地域研究」
「地域研究コンソーシアムを通じた地域研究の将来構想に関する研究」(代表者:立岩礼子、期間:2012年6月~2013年3月)

(山本博之)

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