1. ホーム
  2. 研究活動
  3. 過去の研究プロジェクト
  4. フィールドに根ざした地域情報学の創出(h21)

フィールドに根ざした地域情報学の創出(h21)

過去の研究プロジェクト

フィールドに根ざした地域情報学の創出(h21)

地域研萌芽研究
代表: 山本博之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員:  
期間: 平成21年6月1日~平成22年3月15日
目的:  地域情報学とは何か。現実社会の様々な制約のなかで得られた限定的な情報をもとに、対象の全体像を効率的に把握することに関わる研究方法である。その方法には、①各地に散在する情報を横断検索等によって統合することで情報の全体性を高める方法、②断片的な情報をもとに対象の全体像を組み立てる方法の2つがありうる。前者は高度の技術と長期に及ぶ大量の作業によって実現されるもので、制度的な拠点化が不可欠であり、これまで地域研が進めてきた通りである。後者は、現地調査の現場で研究者が日々抱えている問題であり、フィールドや個人の研究室で比較的容易に利用できる技術でデータが収集・処理できる方法が求められているが、この点を意識した研究はまだ十分になされていない。本研究では後者の意味での地域情報学の創出を目指す。すなわち、現実社会の制約のために得られる情報が限られており、しかも問題解決のための時間が限られている状況で、高度の技術に頼ることなく、限定的な情報をもとに全体像を描くことを通じて研究を行う方法を検討する。
研究の意義:  地域研が研究機関としての独自性を認知させる上では、地域研が掲げるミッションの1つである地域情報学を推進することが不可欠である。地域情報学には前項のように2つの異なる方法があり、これまで地域研では高度の技術と大量の作業を背景とした地域情報学の創出と確立を進めてきた。この方面での研究は横断検索システムの構築など一定の成果を見せているが、他方で実際の研究活動と十分に結び付いていないという問題を抱えている。この背景には、現実の研究対象が刻々と変化している状況で、目前の課題に対応するため、多少のデータ上の不整合や不備があっても利用可能な範囲のデータ処理を進め、限定条件付きあるいは近似的でありながらも何らかの結論を導こうとする地域研究の発想が、これまで地域研で進められてきた地域情報学に十分に反映されていないことにある。本研究課題では、フィールドや個人研究室での研究実践において意味のある情報処理のあり方を模索し、「フィールドに根ざした地域情報学」として積極的に打ち出すことを試みる。この成果をもとに情報学の専門家との共同作業を行うことで、地域情報学のさらなる展開が期待され、さらにそれを通じて地域研究方法論の議論を豊かにすることが期待される。
期待される成果
将来の展開
について:
 来年度以降は、本研究を基礎とする研究プロジェクトが公募による共同研究の「地域研究方法論」あるいは「地域情報学」の個別ユニットとなることが期待される。あるいは、地域情報学の創出という地域研のミッションに関わる研究として、公募による共同研究プロジェクトとは別の枠組で本研究のような研究プロジェクトが位置づけられることが期待される。
研究実施計画:  2009年6月、複合ユニット「地域研究方法論」の連携研究プロジェクトを募集する。テーマおよび研究費は本研究課題の枠内とする。採択された研究プロジェクトの代表者は、「地域研究方法論」の他の個別研究ユニットの代表者とともに複合ユニット「地域研究方法論」を構成する。審査は複合ユニット「地域研究方法論」の共同研究員の意見を参考に6月中に行い、採択された研究プロジェクトは7月から研究を開始する。半年間の研究期間で、地域情報学に基づく個別の研究テーマに関する研究を進めるとともに、地域研究の方法論を検討することが求められる。
 なお、研究プロジェクトが1件も採択されなかった場合(応募がなかった場合を含む)や、採択された研究プロジェクトが自前の研究費を持っている場合には、本研究課題の実施を取りやめる。
研究成果の
公開計画:
 研究が順調に進めば、本研究課題をもとに2010年度の地域研公募共同研究に地域研究方法論の個別研究ユニットとして応募し、採択されれば本研究課題と個別研究ユニットの研究成果を合わせて2010年度刊行予定の『地域研究』の特集記事の一部を構成することで研究成果の公開とする。