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「混成アジア映画」に見る世界:一潮流としてのマレーシアを中心に(h24)

過去の研究プロジェクト

「混成アジア映画」に見る世界:一潮流としてのマレーシアを中心に(h24)

個別共同研究ユニット
代表: 篠崎香織(北九州市立大学外国語学部・准教授)
共同研究員: 小野光輔(㈱和エンタテインメン・代表取締役)、金子奈央(東京外国語大学大学院・博士後期課程)、ジュリアン・ブルドン(京都大学地域研究統合情報センター・研究員)、宋鎵琳(株式会社エスピーオー・職員)、西芳実(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、野沢喜美子(株式会社プレノンアッシュ・非常勤職員)、深尾淳一(映画専門大学院大学・准教授)、増田真結子(株式会社小学館国際ライツ業務室・海外版権対応業務嘱託スタッフ)、光成歩(東京大学大学院総合文化研究科・博士後期課程)、山本博之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
期間: 平成24年4月~平成25年3月(1年間)
目的:  映画は、現実世界を映している側面と、人々が手にしていないけれどそれが現れることを願っているもう1つの世界を映している側面があり、この2つによって現実以上のリアリティを獲得することができる。本プロジェクトでは、まず、戦後日本のアジア映画への関心の向け方を辿ることで、日本がアジアにどのような関心を向けてきたのか、また、日本の人々がアジアの人々とどのような関係を作ろうとしてきたのかを整理する。そのうえで、近年日本で多く見られる映画制作の形式を「混成アジア映画」と位置付け、その制作が盛んになりつつあることの意味を映画史とアジア社会史の双方から検討することにより、今後のアジアにおける日本の位置づけにどのような可能性があるかを検討する。これとあわせて、研究者、映画制作業界、情報処理技術の専門家が協力して京大地域研が所蔵する映画データベースを検討し、利用者のニーズに即した映画データベースのあり方を提案する。
研究実施状況:  2回の研究会と4回の公開シンポジウム(うち2回は日本国内の国際映画祭と連携)を行い、1冊の出版物を刊行した。
(1)研究会
・第1回研究会 報告者:山本博之「『混成アジア映画』という視点」(2012年6月9日、京都大学)
・第2回研究会 報告者:野澤喜美子「ツァイ・ミンリャン作品にみる家族・セクシュアリティ」(2012年9月27日、映画専門大学院大学)
(2)公開シンポジウム
東京国際映画祭、大阪アジアン映画祭などと連携して公開シンポジウムを行った。詳細は項目7を参照。
(3)出版
雑誌『地域研究』第13巻第2号にアジア映画の特集を企画した。詳細は項目7を参照。
研究成果の概要:  マレーシアは、マレー人ムスリム、中国系(華人)、インド系をはじめとする世界の様々な民族が集まる「文明の交わりの地」であり、さらに近年はインドネシア、フィリピン、ミャンマーなど近隣諸国からの長期・短期の移住労働者が民族的多様性を増している。住民が多様な文化的背景を持ち、人の出入りが激しい地域社会では、その地域社会の歴史や経験を共有し、共通の意識を形成することが極めて重要な課題であり、そのための手法や媒体が模索されてきた。歴史的に、新聞・雑誌、ラジオ、テレビ、インターネットなどの様々な媒体が使われてきたが、近年では、技術の進展によって映像の制作と公開が容易になったため、映画・映像も重要な役割を担いつつある。マレーシアでは、2000年以降の「新潮流」により、国内の民族的少数派や民族混成状況を積極的に描いた作品が多く作られるようになったほか、越境する災い(病い、テロ、災害)、血統と家系の継承、家族の絆、信仰と暴力といった国境や民族を越えるテーマも多く描かれるようになった。マレーシアを中心に、インドネシアやシンガポールなどの近隣諸国の事例を含め、『地域研究』第13巻第2号の総特集「混成アジア映画の海」で議論した。また、この総特集企画を進める過程で、マレーシア映画の新潮流に至るアジアの「映画大国」におけるグローバル化への対応や、マレーシア以外のアジア諸国の映画に見られる混成状況との比較検討を行い、その成果も上述の『地域研究』の総特集号で発表した。同特集企画を通じて、映画を素材としてアジア地域と世界の課題を読み解く地域研究者のネットッワークが形成された。
公表実績: (1)出版
『地域研究』(総特集:混成アジア映画の海―時代と世界を映す鏡)第13巻第2号(2013年3月刊行)
(2)公開シンポジウム
「栄光は誰れのために―マレーシアの経済発展の裏にある教育」(2012年7月30日、芝蘭会館)
「『外中華』映画の世界―ツァイ・ミンリャンとエドウィンに見る世代の絆」(2012年10月23日、ハロー貸会議室六本木、協力:東京国際映画祭)
「記憶の写し絵―内戦・テロと震災・原発事故の経験から紡ぐ私たちの新しい物語」(2012年12月22日、キャンパスプラザ京都)
「旅人が見る世界」(2013年3月15日、大阪歴史博物館、共催:大阪アジアン映画祭)
(3)ウェブサイト
マレーシア映画文化研究会ウェブサイト(http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/~yama/film/index.html
研究成果公表計画今後の展開等:  本共同研究を通じて培われた地域研究者のネットワークを利用して、地域研究の素材として映画を扱う方法論を検討すべく、地域研究者が映画を切り口に現代アジアの課題を読み解く場作りを行う。この試みは、本共同研究を発展させた京都大学地域研究統合情報センター共同研究「映画に見る現代アジア社会の課題」(2013年度~2014年度)で実施予定である。対象をアジアの各国・地域に拡大し、国内で研究会やシンポジウム、ワークショップを開催し、映画の内容・表象分析や映画の系譜(作り手の背景など)の把握を行うとともに、それらの情報を地域研究で得た知見に基づき当該地域の社会の文脈にどのように位置づけうるのかを議論する。地域研究者のみならず、映画研究者、映画制作者、映画に携わる実務家とも国内外で連携を図る。