1. ホーム
  2. 研究活動
  3. 過去の研究プロジェクト
  4. 地域表象情報学の試み―写真は地域の何を私たちに語りかけるのか?(h24)

地域表象情報学の試み―写真は地域の何を私たちに語りかけるのか?(h24)

過去の研究プロジェクト

地域表象情報学の試み―写真は地域の何を私たちに語りかけるのか?(h24)

個別共同研究ユニット
代表: 貴志俊彦(京都大学地域研究統合情報センター・教授)
共同研究員: 石川禎浩(京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター・准教授)、上田貴子(近畿大学文芸学部・准教授)、内田尚孝(同志社大学グローバル・コミュニケーション学部・准教授)、袁広泉(京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター・客員准教授)、小野寺史郎(京都大学・人文科学研究所附属現代中国研究センター・助教)、柴山守(京都大学地域研究統合情報センター・研究員)、白山眞理(日本カメラ博物館・運営委員)、原正一郎(京都大学地域研究統合情報センター・教授)
期間: 平成24年4月~平成25年3月(1年間)
目的:  地域情報学の進展とともに、時空間分析の必要性、そして語彙分析の重要性が喚起されてきたが、本申請ではこれにあらたな検証次元として表象(あるいはイメージ、シンボル)を導入することを提言したい。表象の装置としては、とくに写真メディアを取り上げ、写真の被写体となった地域を計量的に分析するために、被写体に描かれたモノ事象などを語彙として抽出し、それら言語媒体を介して図画像資料を統計学的に処理したいと考えている。こうした地域イメージの語彙化をはかるためには、「地域研究」「歴史学」「表象研究」「画像処理研究」をつなぐ新たな研究手法としての「地域表象情報学」の構築を試みることが、本申請の目的である。こうした新たな、しかし萌芽的な地域研究の在り方を検証できればと考えている。
 具体的な検証材料は、京都大学人文科学研究所が非公開としてきた36,534枚に及ぶ、通称「華北交通写真」である。この写真に移されたイメージを語彙化させることで、撮影者や撮影意図、空間の切り取り方などについて、他の機関と違った国策会社の「視点」やその特徴、歴史的意義づけが明らかにできると考えている。
研究実施状況: ・「華北交通写真」については、本共同研究経費等を利用して14,158枚のデジタル化を終了した。しかし、なお22,376枚の未了分があるため、京大地域研と人文研と共同で「平成 24 年度 研究資源アーカイブ研究資源化申請」をおこなった。申請研究資源名は、「人文科学研究所蔵:戦前期中国写真画像――旧華北交通株式会社撮影写真群」である(申請の可否は未決)。
・公開研究会・協議会を、計3回実施した。写真資料を含めた図画像資料をめぐる多様な学術利用の研究事例が紹介された。そのほか、図画像資料の分類方法や、語彙の抽出についての方法をいかに確定するかについて、メール協議などを含めて、何度も行われた。
・研究メンバーが、財団法人東洋文庫等での図画像資料に関する個別調査を2度実施した。
研究成果の概要: ・本共同研究では、語彙分析の重要性を指摘していたが、語彙の確定については公式、非公式の研究会を通じて、協議に相当な時間を要した。そこで、国外で先行的な研究成果をあげている機関とのタイアップが図られ、米国Lafayette College Librariesが公開するデータベース「The East Asia Image Collection」の担当者Paul Barclay教授と連絡をとった。同教授との協議により、「華北交通写真」の場合も、Human Relations Area Files (HRAF)の分類方法「Outline of Cultural Materials Subject Categories」を、語彙分析の利用に適用できることが確認された。ただ、経費不足により、データベース項目入力のためのマンパワーが確保できず、サンプルを作成するのにとどまった。デジタル化できた画像のすべての入力が終了しなかったために、語彙分析をするまでに至らなかったため、継続して今後の課題とすることが確認された。
・「華北交通写真」のデジタル化作業のなかで、カードに添付した画像データのサイズ、形式、元データの分類番号に相当な違いがあることが確認され、その対策を業者とともに協議した。
・下記に示した通り、写真を含めた図画像資料の学術利用の方法について、多分野の研究者とともに、合同協議がおこなわれた。ただ、それぞれの目的意識、方法論が異なるため、この一年では共通するメソドロジーを確立するまでには至らなかった。
公表実績:  共同研究会に関連した公表実績(出版、公開シンポジウム、学会分科会、電子媒体など)
・CIAS個別研究ユニット「地域表象情報学の試み」共同研究会
日時:2012年6月30日 10:30~17:00
場所:国際日本文化研究センター 第3共同研究室
概要:研究会は、この個別ユニットとともに、科研「朝鮮博覧会と京城の空間形成」(代表:朴貞美)、 NIHU現代中国地域研究プログラム「東洋文庫現代中国研究資料室図画像資料班」と共同で主催した。発表ツールとしての「ウィキ」の可能性、写真・絵はがきの検閲法規、絵葉書の考古学利用の3つの報告を軸としながらも、史資料のデジタル利用の在り方の是非、その方法なども含めた共同討議がおこなわれた。図画像資料についても、厳密な史料批判、検証をおこなうための研究者の理念の在り方、それを具体化させるための学術的スキル向上のための方法と関連するトレーニング、デジタル化が陥りがちな問題点など、多様な論点をめぐって議論が交わされた。
・京都大学人文科学研究所所蔵「華北交通株式会社写真」合同協議会
時間:2012年9月28日  10:00~12:00
場所:京都大学人文科学研究所本館3F・セミナー室4(331室)
概要:京大人文研との合同開催。研究代表者から、華北交通写真のデジタル化の進行状況と課題について報告がなされ、その後、この写真を使った学術利用について共同討議をおこなった。あわせて、図画像資料の分類方法や、語彙の抽出についての客観的な方法をいかに確定するかについても協議がおこなわれた。
・公開ワークショップ「図画像資料研究の新しい方法論を求めて」
日時:2012年9月28日 14:00~16:00
場所:京都大学地域研究統合情報センター・セミナー室
概要:”図画像資料研究の新しい学術利用の方法論を求めて、日本史、写真史、文学などの立場から、戦前の写真帳、戦時写真、連環画、児童雑誌の利用事例について紹介がおこなわれた。これらの報告に対して、アジア史、日本史、漫画研究、建築学、情報学、美術史、メディア史、社会学など多分野の研究者のほか、出版社からも参加者があり、多彩な合同討議がおこなわれた。図画像資料の研究の多様性をめぐっては、方法論を含めて、共通した議論ができる理論研究の重要性が確認された。
研究成果公表計画今後の展開等:  単年度計画のため、本年度で終了。ただし、図画像の語彙分析など残された課題については、来年度から実施される「複合テーマ5 非文字資料の共有化と研究利用」で継続的に取り扱う予定である。