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東南アジア地域の古文書を対象とした汎用的データベース公開システムの検討(h22~h23)

過去の研究プロジェクト

東南アジア地域の古文書を対象とした汎用的データベース公開システムの検討(h22~h23)

個別共同研究ユニット
代表: 星川圭介(京都大学地域研究統合情報センター・助教)
共同研究員: 伊東利勝(愛知大学文学部・教授)、柴山守(京都大学・東南アジア研究所・教授)、Chalermsukjitsri Chaimongkol(Human Rights and Education in Indigenous Language Program・所長)、富田晋介(東京大学大学院農学生命科学研究科・助教)、原正一郎(京都大学地域研究統合情報センター・教授)、山本博之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
期間: 平成22年4月~平成24年3月(2年間)
目的:  本研究の目的は、東南アジア諸地域の古文書資料をデータベース(以下「DB」)として公開するシステムの枠組みを検討することにある。
 東南アジアの古文書DBには、北タイ貝葉や三印法典(京都大学東南アジア研究所・地域研)、ミャンマー古文書DB(愛知大学)などの先行事例があり、いずれも高い完成度を有しているが、それらの技術的枠組みを他の文書に直接応用することは出来ない。文書の物理的形態や文字・記述法などが地域や文書の種類によって大きく異なるためである。本研究では先行事例を参照しながら、東南アジア諸地域の文書資料に広く対応したDB公開システムの枠組みを検討する。具体的作業としては、東南アジア諸地域の資料のデジタル化と公開を実施あるいは構想中の古文書専門家と、文書DB作成に詳しい情報技術専門家とが、研究会の場で技術的課題とその解決策を議論する。またその議論の材料として東北タイ南部クメール語貝葉文書DBを試作する。
研究実施状況: -平成22年度-
 6月に全体集会を開催。各共同研究者が作成・公開を進めるデータベースについて互いに紹介するとともに、各データベースが抱える技術的な課題や、古文書資料公開のための共通の枠組み構築の可能性について話し合いを行った。
 また、共同研究者である富田晋介氏(東京大学)を地域研に招聘し、同じく共同研究者である原正一郎氏(地域研)との間で、富田氏所蔵のラオス伝統文書電子資料のデータベース化と地域研のサーバからの公開に向けた技術的打ち合わせを実施した。
 一方、タイでは、現地の共同研究者Chalermsukjitsri Chaimongkol氏(Human Rights andEducation in Indigenous Language Program)にクメール貝葉文書の電子データ化とメタデータ作成を委託。バンコクにてCheymongkol氏と代表者、共同研究者との間で4度の技術的打ち合わせを行うとともに、代表者も2度にわたってデータ作成現場を訪問した。
-平成23年度-
昨年度実施した研究会等の成果を受け,本年度は古文書・写本のメタデータ項目設定について,特にタイの貝葉資料を対象として検討を実施。8月には本複合・個別ユニットの共同研究者である柴山教授,原教授,富田助教,Cheymongkol氏,杉本教授とともにコンケン大学人間学部を訪問し,同学部で図書館情報学を専門とする研究者・学生合わせて十数名と,貝葉のメタデータ項目についての意見交換を行った。
また昨年度に引き続いて,メタデータ項目検討や資料デジタル化の方法論検討のための材料としての東北タイ南部貝葉文書データベースの試作を進めるとともに,地域研のサーバにデータとデータベースシステムを置いた上で現地の研究者のサーバに置かれた検索・閲覧インターフェースからデータベースにアクセスするためのシステムを検討した。 年度末には貝葉データベース作成を担当するCheymongkol氏と打ち合わせを行い,作成されたデータベースを今後研究や教育に生かしていく方法について検討を行った。
研究成果の概要: -平成22年度-
6月に実施した全体集会では、共同研究者がそれぞれ、インドネシア・マレーシア、ラオス、タイ、ミャンマーの古文書(伝統文書)資料のデジタル化とデータベース化について自己の事例を紹介し、技術的な課題について意見交換を行った。この結果、さまざまな古文書に共通して利用可能なデータベース公開システムを開発するにあたり、記述内容の文字表現やテキスト化をどのように行うかが最も重要な課題となることが改めて浮き彫りとなった。文書の中には、コンピュータ用のフォントが無いばかりか、すでに「文字」とは呼べないような「文字」で記述されたものもある。データベース公開システムではそうしたケースにも対応できるよう、内容をテキスト化せず、文書の複写画像を表示する形で行う選択肢も残すなど、柔軟な設計が求められることが明らかになった。
 またデータベースの試作に関しては、本年度中に、東北タイ南部の3寺院に所蔵の64タイトルの貝葉のデジタル化を完了した。2葉一枚でデジタル画像化されており、計1,791枚のデジタル画像(JPEGフォーマット・TIFFフォーマット)と、メタデータからなる。この試作過程において、資料に応じてデジタル化にどのような機材(カメラ・レンズ・スキャナ)を用い、どのような手順で行うべきか、多くの知見が蓄積された。
-平成23年度-
タイの図書館学分野における貝葉メタデータ作成方針についての理解が進んだ。図書館学分野における貝葉メタデータの項目は非常に多岐に及んでおり,あらゆる種類・言語,形態の文書に対応できるようになっている.ただし実際に貝葉を電子化して整理するという実務においてはそれら多数の項目のうち,多くとも10項目程度の基本項目(保管場所名,県,郡,区,村,記述文字,言語,タイトル,内容類型,等)が埋められる程度であることもCheymongkol氏を含めた議論の中で明らかになり,本プロジェクトとしては図書館学分野で策定されるメタデータ項目との統合も考慮に入れながら実務者であるCheymongkol氏が設定するメタデータ項目に従ってデータベースを作成することとした。
試作品としての貝葉データベース作成に関しては,本年度新たに171タイトルの電子化とメタデータ作成が完了した.また昨年度までに電子化された資料に関してはすでに地域研のデータベースシステムでの試験公開が行われて,公開に向けた準備が整った。
地域研外のサーバに置かれた検索・閲覧インターフェースから地域研のサーバに置かれたデータベースにアクセスするためのシステムが完成し,東北タイ南部貝葉データベースについてはインターフェースの試作を行った.これにより日本や東南アジアをはじめ世界各地で古文書・写本の電子化とデータベース作成に取り組む研究者が,地域研のサーバを利用しつつ,自身のウェブサイトからそのデータベースを公開できる仕組みが整った。
公表実績:  
研究成果公表計画
今後の展開等:
 -平成22年度-
タイでは引き続きデータベース試作を進める。文書のデジタル化とともに、さまざまな地域や資料の形態にも適応できるよう、メタデータの形式(フォーマット)についても検討を重ねる。また、内容についても一部テキスト化を図る。
 試作されたデータベースについては、次年度中に、地域研のシステムを用いてウェブ公開する。ただしあくまで現地の機関・研究者が公開しているような形態を目指し、その方法・技術についての検討も次年度の課題とする。またこれと平行して、共同研究者である富田氏の資料公開についても作業を進める。
 上記データベースの仮公開後、日本側の共同研究者とともにタイを訪問し、タイ側共同研究者によるデータ製作現場を視察するとともに、現地研究者との連携拡大のために現地で集会を開催する。
 国内での活動に関しては、国内で東南アジアの古文書の研究に従事する研究者を訪問し、情報交換を行うほか、年度の終わりに日本側共同研究者が集って成果取りまとめの研究会を開催する。
-平成23年度-
本プロジェクトの成果の一つである東北タイ南部貝葉文書データベースは既に公開可能な状態にあり,近日中に公開される予定である。試作した検索・閲覧インターフェースをデータベース製作者であるCheymongkol氏に譲渡することにより,地域研のウェブサイトの他,現地の研究者のサーバに置かれた検索・閲覧インターフェースからもアクセス可能な状態とする。
今後はCheymongkol氏と共同で貝葉資料の電子化を継続するとともに,現地の貝葉研究者にデータベースの存在を周知し,データベース利用者を開拓する。また検索・閲覧インターフェースを地域研外に置くシステムについても内外の研究者に周知し,利用の拡大を図る。