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包摂と排除から見る地域(h22~h23)

過去の研究プロジェクト

包摂と排除から見る地域(h22~h23)

複合共同研究ユニット
代表: 小森宏美(早稲田大学教育・総合科学学術院・准教授)
共同研究員: 押川文子(京都大学地域研究統合情報センター・教授)、北村由美(京都大学東南アジア研究所・助教)、篠崎香織(北九州市立大学・准教授)、篠原拓嗣(京都大学地域研究統合情報センター・助教)
期間: 平成22年4月~平成23年3月(2年間)
目的:  グローバル化や地域統合の下では、従来の国民国家体制とは異なる包摂と排除の論理や公式・非公式の制度構築が見てとれる。例えば、国内ではムスリムとしてマイノリティ化ないし排除=「他者」化されている場合でも、国際的ネットワークにのり、国家内「他者」がエンパワーメントされることは必ずしも不可能ではない。本研究では、そうした状況の変化を踏まえ、地域における「他者」認識の範囲の変容と、「他者」の側の対抗行動を、複数地域(この場合は、ヨーロッパ、東南アジア、ラテンアメリカ、東アジア、中東などを想定)のそれぞれの事例に即して検討し(事例は国や国家より下位の地域も含む)、「他者」をめぐる状況から「地域」の把握に努めると同時に、「他者」をめぐる問題群の地域研究からの理論化を試みる。
研究実施状況: -平成22年度-
(1)研究代表者が、適宜各個別共同研究会に参加して議論に加わった。
(2)個別ユニットの共同研究代表者らによる研究打合せを開催し(2010年10月26日)、今年度の各個別ユニット研究成果を踏まえ、2年目の共通課題を次のように設定した。①制度と認識の相互作用。例えば、現実の国境の変化に伴い、空間認識はどのように変化するのか(あるいはしないのか)。②排除と包摂をめぐる認識と実態の間の齟齬。例えば、ある制度を自らを包摂するものと誤認する場合があるか。あるとすればその原因はどこに求められるのか。
-平成23年度-
とりまとめのため、以下の通りワークショップを開催した(事前に、ワークショップ準備のための研究打ち合わせを行った)。
1.日時:2012年2月11日13時30分~18時
2.場所:晴海グランドホテル4階419号室
3.プログラム
第1セッション
1.小森宏美 趣旨説明と「戦間期バルト三国の文化自治:ユダヤ人の包摂と排除」
2.池田有日子「エッセンシャル・アウトサイダーとしての華人・ユダヤ人にとってのホームランド、国家-その意義と関与の異同比較分析-」
コメント:篠崎香織
第2セッション
1.押川文子「『教育権利法』の包摂と排除:最近のインド教育改革から」
2.南出和余「バングラデシュの『複線的教育制度』に見られる包摂と排除―個にとっての「学歴」の意味づけ―」
コメント:鳥羽美鈴
研究成果の概要: -平成22年度-
 本複合共同研究に参加する個別ユニットの共同研究の進め方は、対象地域ならびに方法の点で多様である。従来、共同研究の場で取り上げられることの多くなかった2つの対象から相関性を読み解こうとする研究や、共同研究の場を基盤に外に開かれた議論共有環境の構築をめざす研究などそれぞれが独自のアプローチで現代社会における包摂および排除という現象の記述と解明に取り組んでいる。複合ユニットは、今年度、そうした多様な研究方法・態度から得られた知見を統合するための枠組みを検討し、地域を理解するための準備段階として、次の仮説を立てた。すなわち、①包摂にも排除にも複数のレベル(超国家、国、地域、町内など)があるが、個人は、そのいずれかに包摂されていれば問題がないというわけではなく、またどのレベルに包摂されることが最も望ましい状況を創り出すか(あるいは最も望ましいと認識されるか)は、文脈に依存する。②包摂ないし排除を行う場を「共同体」としてとらえるならば(他の概念の方が適当である可能性は排除しない)、現代社会における「共同体」は確固たる境界線によって区切られない、ある人びと・集団にとっては不確定・不安定な存在である。そうした不確定さ・不安定さに対する一方で個人の側、他方で集団の側の戦略は地域によって異なるが、部分的パターン化も見出すことができる。
-平成23年度-
本複合ユニットは、対象地域も方法論も異なる4つの個別ユニットによって構成されている。そこで、それぞれの研究成果を統合した形でまとめることを追求する代わりに、今後の議論につながる論点を整理することで、今年度で終了する本研究の成果として示したい。
第一に、言説、法制度、実態という3つの視点を挙げたい。すなわち、とりわけ「必要不可欠のアウトサイダー」ユニット*や「ヨーロッパの複合的国家」ユニットが明らかにしたように、国民国家やマジョリティと、マイノリティの関係は法制度からだけでは見えてこない。法制度としては包摂されていても、実態として排除されている場合もあり、またその逆もありうる。第二に、それとは異なる位相の問題として認識がある。 認識という視点から、集団の中にも当然差異があり、また同じ人間であってもその認識に変化が生じるという事実が浮かび上がる。「南アジアの教育」ユニットはこれら第一、第二の両方について緻密な事例研究を積み重ねた。第三に、国民国家の枠の多様な越え方という視点の広がりが得られた。研究開始当初は、国家内の宗教的・言語的マイノリティが国外の同種の集団とのつながりの中でエンパワーメントされる様態を念頭に置いていたが、人と人との結びつきは必ずしもそれに限定されないことを、「マレーシアの大衆映画」ユニットはその活動の中で示してきた。すなわち、結びつくのは、必ずしも宗教的・言語的・民族的属性を同じくする人々ばかりではなく、関心や目的を共にする結社的な紐帯の存在が浮かび上がった(ばかりでなく、実践された)。
*ユニット名は一部省略してあります。
公表実績: -平成23年度-
個別ユニットごとに行っている。
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成22年度-
 2011年度末(2012年2月ないし3月)に個別ユニット合同のワークショップを開催予定であり、それに向けて3回程度の打合せおよびプレ研究会を行う。
 合同ワークショップは各個別ユニットからの1~2名の報告者によって構成し、”研究成果の概要”で暫定的に提起した①複数レベルの包摂と排除、②不確定的な「共同体」についての議論を行う。
-平成23年度-
ワークショップで区切りをつけたので、複合ユニット全体としては、現時点では考えていない。