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アジア太平洋におけるリージョナリズムとアイデンティティの現在(h19~h20)

過去の研究プロジェクト

アジア太平洋におけるリージョナリズムとアイデンティティの現在(h19~h20)

個別共同研究ユニット
代表: 中島成久(法政大学国際文化研究科・教授)
共同研究員: 青山薫(法政大学、東京外大、横浜国立大各非常勤講師、国立女性教育会館客員研究員 非常勤講師)、今泉裕美子(法政大学国際文化研究科・准教授)、川村湊(法政大学国際文化研究科・教授)、熊田泰章(法政大学国際文化研究科・教授)、曽士才(法政大学国際文化学部・学部長)、高柳俊男(法政大学国際文化研究科・教授)、中島成久(法政大学国際文化研究科・教授)、南塚信吾(法政大学国際文化研究科・教授)、山本真鳥(法政大学経済学部・教授)、吉村真子(法政大学社会学部・教授)
期間: 平成19年4月~平成21年3月
目的:  ある国民国家がその内部を一元的に支配するという20世紀型の国家像では、ソ連崩壊後の世界秩序の変化、グローバリゼーションの進行、あるいはアジア通貨(経済)危機後の変化にさらされているアジア・太平洋地域の地域社会、国家、地域間協力の実態が正確に捉えきれない。この研究では、そうした大きな変化にさらされているアジア・太平洋地域における「リージョナリズム」の現状を、地域社会におけるアイデンティティの形成と国家、地域間協力の動態を歴史的に理解し、また社会・文化論的に分析し、新たな国家像とアイデンティティの提示を目指す。
 その特徴として、次の3点が挙げられる。
・大国からの観点ではない地域研究
・ローカルな地域研究と国家、地域間協力との関係を明らかにする地域研究
・各地域におけるアイデンティティの実態を検証する地域研究
以上を踏まえ、21世紀の新たな国家像を支える実証的/理論的な研究を目指す。
研究実施状況: -平成19年度-
(1)ワークショップの開催(2007年12月1日、3日)
‘Peoples’ Right under the Palm Oil Boom in Indonesia’(アブラヤシブーム下インドネシアにおける民衆の権利)というテーマで、インドネシアのNGO活動家二名を招聘して、東京と京都で二回のワークショップを実施した。
(2)研究会の実施
 メンバーによる研究会を二回実施した。1回目は2007年6月22日で、発表者は研究代表者の中島が行った。二回目はメンバーの今泉裕美子が2008年1月20日に発表した。
(3)連続講演会の実施
 別予算で、「21世紀の国家像を求めて」というテーマで連続講演会を実施した。講師は、姜 尚中氏(2007年11月8日、「東北アジア・コモンハウスを求めて――多極共存型国家の行方」)と上野千鶴子氏(11月15日、「ネオ・ナショナリズムとジェンダー」)であった。
-平成20年度-
 2008年5月、7月、10月、12月にそれぞれ研究会を実施し、5人の研究者の発表を行った。2009年1月には「スハルト退陣後のインドネシアの土地紛争」と題する国際ワークショップを行った。
研究成果の概要: -平成19年度-
 上記で述べたワークショップは、インドネシアにおけるアブラヤシ栽培という開発を農園の現場から問い直す試みである。インドネシアのアブラヤシ栽培は、1980年代以降急速に拡大するが、大きな問題を引き起こしている。中でも、アブラヤシ農園開発をめぐる土地紛争は、全インドネシアで2000~3000箇所で起きていて、深刻な問題となっている。このワークショップはJANNI(日本インドネシアNGOネットワーク、松野明久代表)との共催であり、日本、インドネシアにおける研究者とNGO活動家との共通の問題認識、議論の場を作り出すことができた。東京でのワークショップには25名以上が参加し、京都では8名の参加者があった(大阪のインドネシア領事も参加され、反応は上々であった)。
 各研究会には毎回コメンテーターをつけ、議論が活発に行われた。毎回10名前後の参加者があった。また、連続講演会では130~150名の参加者があり、盛会であった。
-平成20年度-
 国際ワークショップでは、アントン・ルーカス氏(豪フリンダース大学社会科学部准教授)とアフリザル氏(インドネシア、アンダラス大学社会政治学部上級講師)に発表をしてもらった。英語によるワークショップでありながら、20名程度の参加者があり、大成功であった。4回の研究会の発表者は、次のとおりである。2008年5月:山本真鳥氏、「人種とアイデンティティ」、7月:青山薫氏、「社会的期待に呼応するセクシュアリティとジェンダー」、10月:阿部健一氏+安部竜一郎氏、「熱帯林のポリティカル・エコロジー」、12月:押川典昭氏、「抵抗の文学/抵抗の人生としてのプラムディヤを読む」。
公表実績: -平成19年度-
 インドネシア語でなされたワークショップの講演記録を日本語に翻訳し、それを一つの報告書として、JANNIの「ニュースレター」(第62号、2008年4月刊行予定)に掲載される。
 研究会での発表はすべてテープ起こしをしていて活字化される。すでに中島の報告は、出版された。中島成久「祝福されるオランダ植民地支配――インドネシア、西スマトラ州における共有地返還闘争における過去の認識」『異文化』論文編、pp81-110、法政大学国際文化学部紀要第9号。
-平成20年度-
 国際ワークショップの発表原稿は、ワークショップでの議論を参考にすでに書き直してもらっている。また、各研究会では発表をテープに録音し、学生、院生にテープ起こしを行ってもらい、各発表者にはそれに基づいて報告書用の文章をまとめてもらっている。
研究成果公表計画
今後の展開等:
 2008年度の予算額を大幅に超えてしまったので、2009年度実施する「土地権、環境、暴力――インドネシアにおけるアブラヤシ開発に伴う諸問題」プロジェクト(代表者:中島成久)と一緒に研究成果を公刊する予定である。