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「自然生態資源の利用における地域コミュニティ・制度・国際社会」(h19~h21)

過去の研究プロジェクト

「自然生態資源の利用における地域コミュニティ・制度・国際社会」(h19~h21)

複合共同研究ユニット
代表: 柳澤雅之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員: 阿部健一(総合地球環境学研究所・研究推進戦略センター・教授)、Wil de Jong(京都大学地域研究統合情報センター・教授)、落合雪野(鹿児島大学総合研究博物館・准教授)、田中耕司(京都大学地域研究統合情報センター・教授)
期間: 平成19年4月~平成22年3月
目的:  自然生態資源は、地域住民の生活・生業複合の中で制限なく利用される有用資源として存在するわけではない。その利用は、国の制度として規定されたり、地球環境保全を根拠とした国際社会からの要請により制限されたりする。地域住民の間でも利用に関する規範が多くの場合ある。しかし、それらの規定・規範は重層的に存在し、必ずしも、統一的に制定されているわけではない。本研究では、とくに1950年代以降の自然生態資源の利用をめぐる歴史的経緯に焦点をあて、1)自然生態資源そのものの歴史的変容の解明、2)事例研究を通じた自然生態資源の利用方法の変化とその要因の分析、3)地域間比較を通じた自然生態資源の利用方法の変化に影響を及ぼす通地域的要因の分析、4)自然生態資源の利用における地域コミュニティの規範・国家の制度・国際社会の役割について自然科学と社会科学の両面から総合的考察を行うことを目的とする。
研究実施状況: -平成19年度-
 複合共同研究ユニット「生態資源利用における地域コミュニティ・制度・国際社会」は4つの個別共同研究ユニットから構成され、個別に議論を進めた。
 個別共同研究ユニット「生物多様性をめぐる地域コミュニティと国際社会」(代表:阿部健一)では、6月に日本熱帯生態学会と協力し、「熱帯雨林の人と森-サラワクからの便り」と題する公開シンポジウムを、12月には「経験をつなぐ:グローバルコモンズとしての森林」と題する国際シンポジウムを開催した。「東南アジア大陸部における資源管理国家体制の比較」(代表:柳澤雅之)では、平成20年2月25日~3月9日にかけて、移動型ワークショップをカンボジアにて開催した。「Transborder Natural Resource Governance」(代表:Wil de Jong)では、平成19年12月5日~6日に国際シンポジウム”Transborder Natural Resource and Environmental Management”を開催した。 「東南アジア大陸部における人・モノ・情報・技術のフロー:地域社会の動態的理解に向けて」(代表:落合雪野、鹿児島大学)では、中国が、ミャンマー・ラオス・ベトナムと接する地域を対象に、中国とそれぞれの国というふたつの大国に挟まれた地域における、人やモノ、情報、技術の流れ(フロー)から、大国のはざまに暮らす人びとの生存戦略を動態的に捉えようと企画し、研究会を重ね、科学研究費の申請を行い、平成20年度に採用された。
-平成20年度-
 2008年度の複合共同研究ユニット「自然生態資源利用における地域コミュニティ・制度・国際社会」は以下の3つの個別共同研究ユニット「東南アジア大陸部における人・モノ・情報・技術のフロー:地域社会の動態的理解に向けて(代表:落合雪野・鹿児島大学総合研究博物館・准教授)」、「Transborder Natural Resource Governance(代表:Wil de Jong)」、「東南アジア島嶼部における「自然」と「非自然」の境界生成に関する学際的研究(代表:石川登・京都大学東南アジア研究所・准教授)」から構成された。「東南アジア大陸部における人・モノ・情報・技術のフロー:地域社会の動態的理解に向けて」では、2回の公開研究集会を含む、合計5回の研究会を開催し、とくに具体的なモノ・技術のフローから概念整理と今後の調査方法について議論した。「Transborder Natural Resource Governance(代表:Wil de Jong)」では、平成21年2月17日~18日に国際シンポジウム”Forest Policies for a Sustainable Humanosphere”を京都大学稲盛財団記念館大会議室にて開催した。「東南アジア島嶼部における「自然」と「非自然」の境界生成に関する学際的研究」では、4回の国内研究会を開催した。
-平成21年度-
  複合共同研究に含まれる二つの個別共同研究ユニットの活動をつなぐための研究会活動を中心に行った。個別共同研究ユニット「土地権・環境・暴力-インドネシアにおけるアブラヤシ開発に伴う諸問題」(代表:中島成久)では、東京で開催されたアブラヤシに関する国際会議(土地権、環境、暴力:インドネシアにおけるアブラヤシ栽培に関する諸問題」11月28日、法政大学)にコメンテータとして参加し、研究会メンバーと議論を行った。また、関連する研究会として、アブラヤシ研究会(平成22年度の地域研共同研究会として採択予定(代表:岡本正明))にも参加して研究会メンバーとの交流を図った。それらの活動を通じ、地域研の全国共同利用研究拠点を利用した研究者ネットワークの拡大を図ることができた。
  また個別共同研究ユニット「ストックとフローからとらえられる東南アジア大陸部山地―自然資源利用におけるストック概念の再検討」(代表:松田正彦)では、主要メンバーとしても参加し、ミャンマー、ラオス、ベトナムにおける中国国境地域のフローとストック概念を通じた資源利用について検討を行った。
研究成果の概要: -平成19年度-
 とくに1950年代以降の東南アジアの森林地帯における自然生態資源の利用を鳥瞰した場合、地域を超えた共通点として、1) 人為的な要因による、自然生態資源およびその利用の急激な変化と、2) 自然生態資源の利用におけるローカルな人びとによるイニシアティブの増大、という2点があげられる。ここから以下の3つの研究課題を構想するに至った。
1. 生態資源利用におけるローカルな知識・経験のグローバルなレベルでの共有化
在来のあいまいな慣習的土地利用vs政府の土地収用といった二項対立を超えて、地元民と政府の双方で東南アジアの近隣諸国における生態資源利用の経験と知識を共有化するために必要なことを議論する。
2. 地域社会の生存基盤確保のための多様な持続可能性の確立
生存基盤を確保し、持続可能であるための生態的・社会的メカニズムに加え、急激に浸透した商品経済を前提とした経済的持続可能性を含めた、多様な持続可能性を確立するための方策を議論する。
3. 小規模で多様な地域社会をサポートするための、より大きな制度的枠組み構想
ローカルなイニシアティブが活発化し、多様で多数の小規模な社会が存在するとき、それらをサポートするためには、どのような、より大きな制度的枠組みを持つことができるのかについて議論する。
-平成20年度-
 3つの個別共同研究ユニットでは、個別に議論が進められた。
 「東南アジア大陸部における人・モノ・情報・技術のフロー:地域社会の動態的理解に向けて」では、資源は不変の価値を持つものではなく、外部世界の需要や、アクセス、地域社会での相対的重要性に等に応じて絶え間なく変化するものであり、中長期の視点で資源利用を考える必要のあることを論じた。「Transborder Natural Resource Governance」では、ヨーロッパの研究者が、国を越えた政策協調の歴史が長いヨーロッパの森林政策の歴史と現状を報告し、アジアの経験と情報交換することができた。「東南アジア島嶼部における「自然」と「非自然」の境界生成に関する学際的研究」では、自然の多義的な意味を確認し、「自然」と「非自然」の二項対立的な理解が自然理解を限定していることが論じられた。以上の3つの個別共同研究ユニットは個別に議論が重ねられたものであったが、共通した課題も見られた。具体的には、自然(資源)のもつローカルな意味づけが、時間的・空間的にいかに変容しているのかについて、それぞれが異なるアプローチでの議論を進め、変容することを前提とした資源利用について議論が進められた。
-平成21年度-
 二つの個別共同研究ユニットも、地域の自然生態資源の利用を、地元vs外部社会、慣習法vs近代的法制度、開発vs保護といった二項対立の中で理解するのではなく、さまざまな利害関係者が利用する中で複雑に関連しあう因果関係を整理しなおし、利用の永続性の中で保護を位置づけようとしている点が共通していた。中島研究ユニットの研究会では、インドネシアの90年代後半以降の「改革」の時代におけるアブラヤシ開発をめぐる土地権や地方政府の役割について議論した。3つの県におけるアブラヤシ開発プロセスの違いがから、「改革」の時代以前からの政策導入プロセスや地方政府の開発への関わり方に加えて、地域住民側の政策への対応力の違いがアブラヤシ開発の地域差を生み出していることを検討した。
 松田研究ユニットの研究会では、東南アジア大陸部山地の国境地帯を対象に研究会を行った。松田は、ミャンマー・タイ国境地域で雨季に棚田を造成し水田を行い、乾季には棚田を壊して畑地化し商品作物であるシャロット栽培を行う事例を報告した。土地に労力や資本を投下して造成する棚田は一般にストックであると考えられるが、ある特定の条件下ではフローとして利用されることによって、生態資源利用の技術的あるいは農家経済的にどの程度合理的であるかを検討した。落合は地元住民にとってローカルな利用に供するための資源であったジュズダマが、加工され流通される過程で異なる文化的価値を付与され新たな商品としての経済性を獲得し、このことが逆に、地元住民にとっての資源の価値を変化させてきたプロセスを検討した。
公表実績: -平成19年度-
国際シンポジウム「経験をつなぐ:グローバルコモンズとしての森林」と題する(2007年10月11日~12日、京都)
国際シンポジウム”Transborder Natural Resource and Environmental Management” (2007年12月5日~6日、京都)
移動型ワークショップ “Changes in Land-use in Cambodia” (2008年2月25日~3月9日、カンボジア)
日本熱帯生態学会・年次集会・公開シンポジウム「熱帯雨林の人と森-サラワクからの便り」 (2007年6月17日)
-平成20年度-
国際シンポジウム”Forest Policies for a Sustainable Humanosphere” (平成21年2月17日~18日、京都)を開催した。また、平成20年度に開催した国際シンポジウムの成果報告書であるForest Policies for a Sustainable Humanosphere (CIAS Discussion Paper No. 8) edited by Wil de Jong を刊行した。
-平成21年度-
『CIAS Discussion Paper No.15 インドネシアにおける土地権と紛争』中島成久編、2010年3月、京都大学地域研究統合情報センター発行
『シンボルとしての土地―アジア・太平洋におけるリージョナリズムとアイデンティティ―』中島成久編、2010年3月、「アジア・太平洋におけるリージョナリズムとアイデンティティ」研究会発行
公開シンポジウム
国際会議「土地権、環境、暴力:インドネシアにおけるアブラヤシ栽培に関する諸問題」11月28日、法政大学
CIAS全国共同利用研究「ストックとフローからとらえる東南アジア大陸部山地―自然資源利用におけるストック概念の再検討」7月11日、京都大学
CIAS全国共同利用研究「ストックとフローからとらえる東南アジア大陸部山地―自然資源利用におけるストック概念の再検討」10月31日、名古屋大学
CIAS全国共同利用研究「ストックとフローからとらえる東南アジア大陸部山地―自然資源利用におけるストック概念の再検討」2010年3月1日、名古屋大学
研究成果公表計画
今後の展開等:
中島研究ユニットの成果は2010年度の「東南アジアにおける油ヤシ農園生成・拡大の政治経済学」(代表:岡本正明)にも継承されている。