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現代中東における国家運営メカニズムの実証的研究と地域間比較(h18~h19)

過去の研究プロジェクト

現代中東における国家運営メカニズムの実証的研究と地域間比較(h18~h19)

個別共同研究ユニット
代表: 末近浩太(立命館大学国際関係学部・助教授)
共同研究員: 末近浩太(立命館大学国際関係学部・助教授)、小副川琢(放送大学・非常勤講師)、菅瀬晶子(総合研究大学院大学葉山高等教育センター・上級研究員)、辻上奈美江(神戸大学大学院国際協力研究科・博士課程)、中村覚(神戸大学国際文化学部・)、澤江史子(神戸大学国際文化学部・非常勤講師)、山本博之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、小森宏美(京都大学地域研究統合情報センター・助教)、山尾大(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士課程)、松尾昌樹(宇都宮大学国際学部国際社会学科・講師)、青山弘之(アジア経済研究所)、横田貴之((財)日本国際問題研究所・研究員)、髙岡豊((財)中東調査会)
期間: 平成18年10月~平成20年3月
目的:  中東国家における民族、国家、宗教のありようとその相互の関係性に着目し、国家運営のメカニズムに見られる類似点と相違点を抽出する。中東地域において「ネイション・ステイト」の枠組みはどの程度適用可能か、また、国家の存在を支え続けている制度(民主制度、権威主義体制など)や思想(宗教、民族など)とはいかなるものなのか、などに関し事例研究を行う。
 加えて、相関型地域研究構築の試みとして、ヨーロッパ、東南アジア、ラテンアメリカにおける国家運営システムとの比較の可能性を探る。「ネイション・ステイト」を相対化し、その近代において特徴的であった領域性を超越しようという動きが世界各地で確認される現代において、国際的人口移動、言語的・宗教的マイノリティの分離ないし自治要求等を経た国家変容にもかかわらず、それでも「ネイション・ステイト」が分析枠組みとして適当か、あるいはその場合の「ネイション・ステイト」の内実とはいかなるものなのか、などの点に関し地域間比較の視点から検討を行う。
研究実施状況: -平成18年度-
 本年度は次の通り、3回の研究会を実施した。
●第1回2007年6月8日(東外大本郷サテライト)
・高岡豊「シリア・レバノンにおけるパレスチナ諸派」
・末近浩太「レバノンの政治構造」
●第2回2007年11月3日(京都大学地域研究統合情報センター)
・浜中新吾「中東諸国におけるグローバリゼーションと政治体制の頑健性」
・山尾大「現代イラクにおける国家体制とレジティマシー:バアス党権威主義期と戦後連立政権期」
●第3回2008年1月26日(同上)
・小副川琢「国際関係理論から見たレバノン・シリア関係(1975ー2005年)」
・松尾昌樹「忘却されたオマーン」
-平成19年度-
 本年度は11月と2月の2回の研究会を実施した。第1回研究会では、研究代表者の末近氏からの報告「現代中東政治研究の方法論的課題:新たな枠組みの構築に向けて」で、中東政治研究が今日直面している方法論的(および政治的)諸問題が指摘され、地域を既存の学問の「ネタ」として扱うだけではなく、また地域を「地域の論理」とことばだけで理解・説明するのでもない、新しい枠組みの構築に向けた議論を試みることが本研究会の目的であることが説明された。以降、事例研究として辻上氏よりサウジアラビア、横田氏よりエジプト、青山氏よりレバノンおよびシリア、菅瀬氏よりイスラエルの事例が報告された。
研究成果の概要: -平成18年度-
地域研究と比較政治理論研究を架橋する方法の検討を行うことを第一の目標とする。「現代中東研究」では、民族、政治制度、宗教、大衆運動などを変数にして、それぞれの国家ごとに特殊性の抽出を行ったが、そこで明らかになったことは、中東地域の政治には地域独自のファクター(イスラエル/パレスチナとの関係、アラブ・ナショナリズム、イスラーム、石油資源等)が及ぼす影響は大きいものの、他方で、国家間の差異もまた大きく、域内の多様性は無視できないということであり、目的に掲げた、地域間比較を十分に行う時間的余裕がなかった。
-平成19年度-
 まだ2回の研究会を実施したのみであるが、「民主化/民主主義」を軸に、政治体制と政治運動ならびに社会との関係について「地域の論理」を超えての議論が試みられ、中東・イスラーム地域の事例は、他地域(ヨーロッパおよび東南アジア)の文脈でも十分比較検討が可能であることが明らかになった。他方、ナショナリズムやアイデンティティなどをめぐる議論では、地域内でも理解にずれが生じていることが認識され、今後の新しい枠組み作りに向けての課題としてメンバーの間で共有された。
公表実績:  -平成18年度-
ユニットメンバーに若干の協力者を執筆者に加え、『現代中東政治学リーディングガイド』(末近浩太編)を刊行し、地域研HPにおいて公開した。
-平成19年度-
 本研究は18年後半に開始されたばかりであり、研究成果の公表については今後の検討課題である。
研究成果公表計画
今後の展開等:
 「中東諸国家運営メカニズムの普遍性と特殊性の析出-地域間比較における現代中東政治研究のパースペクティブ-」を後続研究として、本共同研究の枠組みで平成20年4月-22年3月の期間、実施する。