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21世紀の『国家』像-共存空間の再編-(h18~h21)

過去の研究プロジェクト

21世紀の『国家』像-共存空間の再編-(h18~h21)

統括班
代表: 村上勇介(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員: 柳澤雅之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、小森宏美(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
期間: 平成18年4月~平成21年3月(3年間)
目的: ヨーロッパを起源とし世界各地で建設が試みられてきた国民国家は、20世紀の間に様々な困難に直面し、また挑戦を受けてきた。特に、冷戦の終結とともに世界の諸地域において顕著となってきた民主化、市場経済化、民族問題や民族紛争の深刻化、情報化、社会的紐帯の弛緩、環境問題・疫病問題などの拡散といった、グローバル化現象とその影響により、国家は大きな再編を迫られ、またその存在基盤が揺らいできた。場合によっては、それまで所与のものとして当然視されてきた国家の存在自体が疑問視される場面も見られ、グローバル化の進展や、国家を超える国際的な組織あるいはNGOなどの成立と発展により、また、地方分権化の推進や国内における地域主義の台頭を背景に、国家の役割が超国家、ローカル両レベルで相対化される現象も遍く観察されている。そうした状況を背景に、国家の消滅が現実味を帯びてきたとする見方も提出された。
 しかしながら、このような歴史変動の中で変容を迫られ、動揺し、あるいは崩壊した例があるにもかかわらず、新たな国家が生まれた場合も含め今日まで国家が存在し続けていることも事実である。また、既存の国家の変容を求める勢力や組織も、国家に新たな機能や役割を期待する場合が少なくない。今後、相当期間にわたり国家が存続することになるであろう。
 このような前提のもとに、本プロジェクトは、地域研究の立場からあらためて現代世界における「国家」を多角的に検証し、グローバル化現象を背景に人類の共存空間の再編過程が進行する中で、世界の諸地域との関係性において「国家」がいかなる位置を占め、いかなる役割や機能を果たしているのか、あるいは果たしうるのかを明らかにしようとするものである。
 プロジェクトは、「リージョナリズムの歴史制度論的比較」、「『民主化』と体制転換の比較研究」、「自然生態資源利用における地域コミュニティ・制度・国際社会」の3つの複合共同研究ユニットが研究活動を展開する形で進められた。
研究実施状況: -平成21年度-
 予算が配分されなかったことから、メンバーの間で5回の内部研究会を実施し、共同研究ワークショップ「移植される世界、交雑する地域─「21世紀の『国家』像」プロジェクト総括」の準備を行った。
研究成果の概要:  連邦制や国内の地域主義などを出発点として研究が進められた「リージョナリズムの歴史制度論的比較」の研究からは、国家に対抗し抵抗する「地域」ではなく、「地域」と国家の「共生」が生じていることが明らかとなった。また、「民主化」や体制転換を切り口とした「『民主化』と体制転換の比較研究」からは、新自由主義により拡大した格差や貧困に喘ぐ弱い立場の人々に基盤を置く勢力が、その地位向上のために国家に対し積極的な役割を求めていることが確認された(ただし、どの程度までの役割かについては論争が続いている)。「自然生態資源利用における地域コミュニティ・制度・国際社会」の研究からは、地域コミュニティと国際社会の役割の重要性が指摘され、国家の比重は低下しているように捉えられるものの、地域コミュニティ自体が国家とは関係なしに存続していけるのか、さらに検証を重ねる必要があると考える。
公表実績:  平成21年度京都大学地域研究統合情報センター共同研究ワークショップ「移植される世界、交雑する地域―「21世紀の『国家』像」プロジェクト総括─」 稲盛財団記念館大会議室、2010年4月24日
研究成果公表計画
今後の展開等:
 雑誌『地域研究』での成果発表などを検討する。