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グローバル経済下における生産、生存、環境(h21)

過去の研究プロジェクト

グローバル経済下における生産、生存、環境(h21)

地域研萌芽研究
代表: 生方史数(京都大学東南アジア研究所・特定助教)
共同研究員: 遠藤環(埼玉大学経済学部・講師)、河合真之(東京大学大学院農学生命科学研究科・博士課程後期課程)、後藤健太(関西大学経済学部・准教授)、内藤大輔(京都大学地域研究統合情報センター・学振研究員)、柳澤雅之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
期間: 平成21年6月1日~平成22年3月15日
目的:  現代のグローバル化は、資本や労働の移動、交通・通信のネットワークを通じて競争を激化させ、生産過程における地域性を希薄なものにしつつある。一方で、人間の生存は、基本的には地域的な人・モノ・情報のつながりや地域環境に根ざしている。ゆえに、グローバル経済の進展によって、生産の論理が生存の論理を圧倒する事態が急激に増えてきている。また、グローバル化は産業の生産過程を国際化し、原材料、資本、労働力などの確保や商品、廃棄物、リスクの生産、分配の様相を見えにくくしている。
 本研究では、アジアを中心に、生産、生存、環境の関わりが大きい3つの産業クラスター――地域環境と密接な関係を持つ農林水産業、天然資源を原料として使用する資源利用型産業、労働力の雇用を通して生存の論理と密接に関わる労働集約型産業――を事例とする。生産組織・制度、商品連鎖、環境問題の質的な違い(汚染、資源劣化など)に着目しながら、産業の論理がどのように生存の論理、地域・環境の論理と関わってきたのか、その過程で生産現場の住民、生産物の消費者、利用されている資源は、どのような影響を受けているのかを明らかにし、環境志向かつ住民の生存を脅かさない産業のあり方を考えたい。
研究の意義:  第一点は、地域研究の枠組みの中で産業や生産活動を直接扱ったものは、これまで非常に少なく、地域研究の新たな領域の開拓を目指している点である。当該分野の研究は、従来経済学の独壇場であったが、近年は社会学や人類学もこの分野に参入してきており、学際的研究の可能性は高まってきている。本研究では、生存や環境といった地域の視点なしに語れない問題を取り上げることによって、産業を地域研究の視点から分析することを目指す。第二点は、生産、生存、環境の関係を包括的にとらえるという試みである。この三者のバランスをどう取るかという問題は、世界各国、とりわけ産業化が進む途上国にとって焦眉の課題となっているが、これらを包括的に捉えた研究はまだ少ない。本研究は、生産過程に着目することによって、経済学の伝統的課題であった生産と生存の問題に、環境経済学のメインテーマである生産と環境の問題と、環境社会学の主要課題である生存と環境の問題を接合させることを目指す。
期待される成果
将来の展開
について:
 第一に、各産業クラスターの特徴、グローバル化の度合い、新たな制度の導入などによって、人々の生存および地域環境(あるいはグローバルな環境)へ与える影響が異なってくることが予想される。また、生存、環境と一言でいっても、どの側面をみるのか混乱することも多く、より厳密な場合わけが必要となる。本研究では、これらの違いを体系的に整理し、将来的には理論的に位置づけることを目指している。第二に、グローバル経済下の産業が、他のアクターとの相互作用で、生存や環境を脅かさないために達成してきたことや、残された課題・矛盾が明らかになる。産業が生存や環境に与える影響を考察する一方で、逆の視点、すなわち産業が自らの生産様式をどのように変えていけるのかを具体的に明らかにしていく。将来的にはこれらも理論的に位置づけていく作業をしていきたいと考えている。
研究実施計画:   アジアにおいて共同研究メンバーが過去に行ってきた研究に関連するように、以下の3つの研究班を編成する。各班の研究成果を、以下の予定で開催される研究会およびシンポジウムにおいて発表し、各産業クラスター間の共通点と相違性について議論する。
第1班(農林水産業):柳澤、内藤
第2班(資源利用型産業):生方、河合
第3班(労働集約型産業):後藤、遠藤
2009年7月に京都で研究打ち合わせを行い、メンバー間、班間での意見の調整を行う。
2009年9月に尼崎の中小企業を訪問し、インタビュー調査を行う。
2009年10月に研究会を京都で開催する。
2010年2月にシンポジウムを京都において開催する。
研究成果の
公開計画:
 各自がそれぞれのテーマ設定に従って論文を執筆することはもちろんであるが、それに加えて、本年度中に1回シンポジウムを開催し、その成果を地域研のディスカッションペーパーとして出版する。来年度末をめどに、これを書籍として出版することを目指したい。
関連
プロジェクト:
 京都大学G-COEプログラム「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」研究代表者:杉原薫(東南アジア研究所)