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変動する自然資源と地域社会(h21)

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変動する自然資源と地域社会(h21)

地域研萌芽研究
代表: 柳澤雅之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員: 河野泰之(京都大学東南アジア研究所・教授)、田中耕司(京都大学地域研究統合情報センター・教授)、星川圭介(京都大学地域研究統合情報センター・助教)、山口哲由(京都大学地域研究統合情報センター・学振特別研究員)
期間: 平成21年6月1日~平成22年3月15日
目的:  途上国に暮らす大多数の人びとにとって、自然は自らの生業をささえる重要な資源である。グローバルな要因が地域にもさまざまな形で波及する現代世界では、その地域のローカルな利用だけを考えて地域社会の資源を利用することは不可能である。外部社会との関係性の中で、ローカルな自然資源を最大限利用しつつ、地域社会の生業活動が成り立っている。そのため、自然資源の質や量は降水や気温などの自然の変動に応じて時間的・空間的に変化するだけでなく、外部社会の要因によって価値そのものが変化する。たとえば、外部社会の需給関係やネットワークによって森林から得られる産物の経済的価値は刻々と変化する。環境観・環境理解の変化に伴い、保護された森林であることが新しい経済的・社会的・文化的価値を持つこともある。すなわち自然資源は、人間活動との関係性の中で中長期的に見た場合、時間的・空間的に一定して存在するわけではなく、また価値固定的な存在でもない。自然に対する静的な見方をシフトし、変動することを前提とした動的な資源利用のあり方を考えることが必要とされている。本研究はそのための視点と具体的な方策を試論として提出することを目的とする。
研究の意義:  本研究では、中長期的に自然資源と地域社会における利用を考え、自然資源を従来のように静的に捉えるのではなく、地域社会と外部世界との関係性の中で生態的・社会的・経済的・文化的に変化することを前提とした動的な見方を提示することを試みる。それにより、自然のメカニズムに内在する変化の論理と、利用する人間側の社会経済メカニズムに内在する変化の論理を比較検討し、両者の変化の中に見られる相互作用を明らかにする。この作業を通じ、自然の中に組み込まれた人間のかかわりと、人間生活の中に組み込まれた自然の再生する力を明らかにし、自然・人間関係についての新しい見方を議論することができる。また、自然と人間の関わりの中で自然を理解するにより、先進国と途上国、保護と開発、自給と販売、国家の制度と在来の慣習、地域コミュニティと国際社会のような、従来、二項対立的に捉えられてきた関係性についても新しい方策を議論する基礎となる自然・人間関係についての見方を提供することができる。
期待される成果
将来の展開について:
 本研究は、2008年~2010年にかけて実施されている複合共同研究ユニット『生態資源利用における地域コミュニティ・制度・国際社会』(代表:柳澤雅之)で行われている議論を発展的に継承し、さまざまな地域で蓄積されてきた地域研究の成果を統合し、自然科学者と協働しながら、自然・人間関係の新しい理解に基づいた新しい資源利用に関する理解を提示しようとするものである。自然科学を修めた研究者による地域研究は相対的に数が少ないため、地域横断的に研究成果を統合するだけでなく、自然科学者による地域研究的な研究成果を取り込む必要がある。本研究ユニットを2010年度以降の複合共同研究ユニットとし、それら両方の成果を取り込んだ研究ユニットを形成する予定である。そして、本申請研究は、2010年度以降の複合共同研究ユニットの中で、自然科学と人文社会科学を統合するためのコア研究ユニットを形成する。
研究実施計画:  研究実施計画は、ブレインストーミングによるコア研究の策定と、関連する研究会の開催とからなる。
第1回:研究プロジェクトの趣旨説明・今年度の計画策定
第2回:地域研究者による地域横断型研究会(1)
第3回:自然科学出身者による自然・人間関係研究会(1)
第4回:地域研究者による地域横断型研究会(2)
第5回:自然科学出身者による自然・人間関係研究会(2)
第6回:コア研究会の策定
研究成果の
公開計画:
『地域研究』、『東南アジア研究』等の関連雑誌での論文発表
関連
プロジェクト:
・ 複合共同研究『生態資源利用における地域コミュニティ・制度・国際社会』(代表:柳澤雅之)
・ G-COE『生存基盤持続型の発展を目指した地域研究拠点』(代表:杉原薫・京都大学東南アジア研究所・教授)