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2011/10/14 研究会「ローカル文明にみる現代的指針―ジャワの原子力発電所反対運動をめぐって」

「災害対応の地域研究」プロジェクトと東南アジア学会関西例会の共催により以下の研究会を行います。
ご関心のある方ならどなたでもご参加いただけます。多数のご来場をお待ちしています。
(ふだんの東南アジア学会関西例会と会場は同じですが曜日と時間帯が違いますのでお間違えのないようにご注意ください。)

日時: 2011年10月14日(金) 15:00~17:00
場所: 京都大学稲盛財団記念館中会議室
     アクセス:アクセスマップ

報告 加藤久典(大阪物療大学)
    「ローカル文明にみる現代的指針―ジャワの原子力発電所反対運動をめぐって」

報告要旨
現代社会では、18世紀にヨーロッパで起きた産業革命以来続く近代化・工業化が大きな価値を持っている。より多く、より早く生産と消費を繰り返し、またそれらを拡大させようとする方向に人類全体が向かっているともいえる。この西洋文明の支配的な社会の維持には膨大な電力が必要で、原子力が有効な発電手段とされる。
東南アジアにありながら、近代西洋文明の影響を大きく受けている現在のインドネシアでも原子力発電所の建設計画が政府によって進められている。中部ジャワの農漁村であるバロンが、この工業化の象徴である原子力発電所の建設予定地である。しかし、このバロン村では計画に対する反対運動が起っている。その反対運動では、インドネシアで最大の宗教であるイスラムとイスラム以前のジャワの土着文明が大きな役割を果たしている。
イスラム指導者たちは原子力発電所の建設を「禁止」(haram)とする宗教宣言を発令し大きな注目を浴びた。しかし、この決定はあくまで相対的なもので、状況が変化することにより覆る可能性を秘めている。その意味で、イスラム文明が近代西洋文明の「進歩」を批判的に検証し、新たな人類の方向性を示す理念となり得るかどうかは、疑問である。
一方、ジャワ文明には現代の近代化・工業化一辺倒の社会傾向に与しない理念がある。それらは「精神性の重視」であり、「自然への畏敬」であり、「相互扶助の精神」また「清貧の思想」である。「原子力発電所反対運動」は単なる政治闘争ではなく、必要以上に電力を消費する社会のあり方に根本的な疑問を投げかる「理念」としての社会運動ということもできる。ジャワ文明というローカルな英知が今後の人類のあり方に選択肢を提示しているといえるのかもしれない。発表では、2010年2月にインドネシアの中部ジャワのジェパラ・バロンで行ったリサーチを元に以上のことについて検討する。

山本博之