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大陸部東南アジア仏教徒社会の時空間マッピング・データベース

 本データベースは、上座仏教徒が集住する西南中国を含む東南アジア大陸部の上座仏教寺院と出家者に関するデータを臨地調査によって収集しマッピング・データベースとして統合したものである。データベース作成の目的は、上座仏教徒が造営する寺院施設を地域の文脈から類型化するとともに、地図上へのマッピングによって出家行動がもたらす仏教徒社会の移動パターン、寺院間・出家者間のネットワークの様態を解明することにあり、東南アジア大陸部の宗教と社会、文化研究の領域では世界に先例のないものである。
データは、以下の二つの科研での臨地調査によって収集された。

 ひとつは、平成17-22年度科研基盤研究(S)「地域情報学の創出-東南アジア地域を中心にして」(研究代表者:京大南アジア研究所教授・柴山守)に研究協力者として参加した林が平成18、19年に実施した東北タイのラオス国境地域での調査で得たもの、他のひとつは平成20-22年度科学研究費補助金(基盤研究(A)[1])「大陸部東南アジア仏教徒社会の時空間マッピング-寺院類型・社会移動・ネットワーク」(代表:京大地域研 林行夫)で得たものである。上記地域の調査は両科研をまたぐかたちで継続するとともに、後者の科研では調査対象地域をタイ=ミャンマー国境、ラオス(三地域)、カンボジア(二地域)、中国雲南省(西双版納、徳宏)、ミャンマーに拡大した。データは、各地域で基本的に共通する項目の質問票を各国語で作成し悉皆調査で収集されている。全地域を横断する同時期のデータとしては2009年と2010年の雨安居期のデータがそろっている。

 エクセルファイルで入力済のデータは、寺院施設と出家者にかんするものである。寺院については、名称(行政当局登録名と地元での呼称)、施設の法制度類型、結界設立年などの履歴、位置情報(GPS計測値)を記している。出家者については、当該寺院に止住する出家者名(俗人名と出家者名)、出身地、年齢、所属する「教派」、得度した寺院名、調査年から過去5年間さかのぼって止住した寺院名(所在地)を記している。これは移動経緯が追跡できるデータとなる。さらに、これらに地名(行政区画)コードを付している。
以上のほか、調査対象地域の全寺院施設の構成、境内やその周辺に造営されている建造物についての記述データとそのデジタル画像があるが、いずれも未整理のままである。

 上記のデータは膨大な数にのぼるため、整理作業が終了したものから順次情報学の手法を援用して分析を進めてきた。しかし、HuTime、ラティスやオートマトン、トラッキングルートのプログラムを適用しえたのはタイの一地域のみで、その内容も試験的なレベルに止まる。これらのプログラムは他地域のデータにまだ適用されておらず、地域間のデータ比較分析の段階には至っていない。すべてのデータを統合して分析が可能となれば、寺院施設の立地条件、出家行動の時空間的な位相と変異、国家や地域ごとの実践の特徴と動態が浮き彫りにされる。

(文責/小島敬裕・林 行夫)

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