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地域情報学プロジェクト

非文字資料の共有化と研究利用

複合共同研究ユニット
代表: 貴志 俊彦(京都大学地域研究統合情報センター・教授)
共同研究員: 平成27年4月~平成28年3月(1年間)
石川 禎浩(京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター・教授)、梅村 卓(明治学院大学・非常勤講師)、太田 出(広島大学大学院文学研究科・准教授)、菊池 暁(京都大学人文科学研究所・准教授)、貴志 俊彦(京都大学地域研究統合情報センター・教授)、白山 眞理(日本カメラ博物館・運営委員)、瀧下 彩子(東洋文庫・研究員)、武田 雅哉(北海道大学大学院文学研究科文学部・教授)、田島 奈都子(青梅市立美術館・学芸員)、谷川 竜一(京都大学地域研究統合情報センター・助教)、陳 來幸(兵庫県立大学経済学部・教授)、富澤 芳亜(島根大学教育学部・教授)、萩原 充(釧路公立大学経済学部・教授)、松本 ますみ(室蘭工業大学人文化系領域・教授)、丸田 孝志(広島大学大学院総合科学研究科・教授)、向井 佑介(京都府立大学文学部・講師)、山本 一生(東京大学大学院教育学研究科・教育学研究員)、竹中 朗(国書刊行会・編集部課長)
平成25年4月~平成27年3月(3年間)
石川 禎浩(京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター・教授)、小野寺 史郎(埼玉大学教養学部・准教授) 、川島 真(東京大学大学院総合文化研究科・准教授) 、貴志 俊彦(京都大学地域研究統合情報センター・教授) 、呉 孟晋(京都国立博物館学芸部・研究員) 、小林 聡明(慶煕大学哲学科・専任教員) 、白山 眞理(日本カメラ博物館・運営委員) 、孫 安石(神奈川大学外国語学部・教授) 、瀧下 彩子(東洋文庫・研究員) 、武田 雅哉(北海道大学大学院文学研究科文学部・教授) 、田島 奈都子(青梅市立美術館・学芸員) 、谷川 竜一(京都大学地域研究統合情報センター・助教) 、陳 來幸(兵庫県立大学経済学部・教授) 、丸田 孝志(広島大学大学院総合科学研究科・教授)
期間: 平成25年4月~平成28年3月(3年間)
目的:   非文字資料は、地域や歴史の記憶としてだけでなく、人々の集合的記憶を反映させており、近年その学術利用の価値が再認識されている。本プロジェクトは、歴史学、美学、カルチュラル・スタディーズ、表象文化論、メディア論などのディシプリンを連携させて、地域研究における非文字資料の研究や解釈の方法について共同討議することを目的とする。この複合プロジェクトでは、東アジアを事例としつつも、その他の地域との比較検討を進めている。平成27年度については、京大人文研所蔵の華北交通写真群に特化した共同研究を進める予定である。
 なお、本プロジェクトで、非文字資料の表現手段やその効果が、特定の政策や機構、メディアやテクノロジーによって規定されるだけでなく、その底流には、人びとのアイデンティティや集合的記憶、国家観や時代認識など、さまざまなファクターが深くかかわってきたことに留意したい。こうした観点から、非文字資料の解釈や分析の方法論について検討を加えるとともに、非文字資料共有化の枠組みについても討議を進めたいと考えている。
研究実施状況: -平成26年度-
(1)非文字資料の研究利用方法を共同討議
・個別研究ユニット「写真雑誌に見る第二次世界大戦期の記憶とジェンダー・エスニシティの表象分析」との共同で、2015年3月15日、広島で公開シンポジウムを開催した。
・個別研究ユニット「20世紀前半のサハリン島に関する歴史的記憶」と共同で、9月3日~10日ロシアサハリン州で、現地研究者と学術交流を進めるとともに、初歩的ながら図画像資料を用いたフィールドワークを実践した。
・京都大学人文科学研究所所蔵の「華北交通写真群」の写真資料の本年度課題分のデジタル化を実施し、メンバー内ではあるが、すべてのデジタル化写真の共有をはかった。
(2)非文字資料の共有化の試みを公開
公益財団法人東洋文庫等との連携により、戦前の写真、写真帳、画報類のウェブ・アーカイブを公開した。本年度は、下記の成果のとおり、雑誌『北支』および写真帳『亜細亜大観』のデータベースを構築し、公開した。
(3)機関とデジタル・アーカイブの研究連携を協議
非文字資料データベースの連携(統合)を進めるため、ラファイエット大学から来訪した2名の研究者とともに、統合システムの方法について共同討議するとともに、今後の協力が約束された。
研究成果の概要: -平成26年度-
・2015年3月15日に広島で、同月17日に京都で共同研究の途中経過の成果報告をおこなった。多くの参加者からは、原爆や戦争をめぐる記録の重要性とともに、それらの記憶化を継続させるためのメソッドづくりの重要性が指摘された。その両面から、渡邉英徳氏が開発されたヒロシマ・アーカイブ、ナガサキ・アーカイブには強い関心が寄せられた。
・出版物としては、非文字資料研究(画像、写真、音声等)をめぐる3冊の研究成果を刊行した(以下、下記7参照)。白山眞理の『〈報道写真〉と戦争』は、名取洋之助・木村伊兵衛・土門拳ら報道写真家たちの実像に迫り、日本の報道写真(ルポルタージュ・フォト)がどのように生まれ、それらがいかに戦争と関わったのかついて読み解く。貴志俊彦『日中間海底ケーブルの戦後史』は、残された文字記録と、音声による記憶との相互補完性について検証するために、1976年日中間海底ケーブル建設事業をトピックとして取り上げた。貴志俊彦・山本博之・西芳実・谷川竜一編『記憶と忘却のアジア』のうち、坂部、泉水、貴志各論考は、満洲、沖縄、華北の記憶化の定位過程と同時に、忘却過程を重視し、記録の両面性について喚起する。
・公益財団法人東洋文庫との共同作業により、雑誌『北支』全ページ画像データベース(2014年4月7日公開)及び写真帳『亜細亜大観』データベース(2015年3月31日公開)を構築した。この2つのデータベースにより、グラフ雑誌や写真帳の公開の2つのモデルを提示できたと考える。同時に、異なったアプリケーションを利用した図画像データベースを統合化する方法が課題として浮かび上がった。
公表実績: -平成26年度-
【出版】
・白山眞理『〈報道写真〉と戦争』(吉川弘文館、2014年、総513頁ページ)
・貴志俊彦『日中間海底ケーブルの戦後史――国交正常化と通信の再生』(吉川弘文館、2015年2月、総254ページ)
・貴志俊彦・山本博之・西芳実・谷川竜一編『記憶と忘却のアジア』(青弓社、2015年3月、総248ページ)
【公開シンポジウム等】
・2015年3月15日、Remapping Hiroshima: 「ヒロシマ」を(再マッピングする――核時代の到来・起点としての「ヒロシマ」――、広島市まちづくり市民交流プラザ 6階 マルチメディアスタジオ
・2015年3月17日、華北交通論集第1回協議会、京都大学人文科学研究所本館1Fセミナー室2
【データベース】
・雑誌『北支』全ページ画像データベース(2014年4月7日公開)
(http://124.33.215.236/research/hokushi/hokushi.php)
・写真帳『亜細亜大観』データベース(2015年3月31日公開)
(http://www.tbcas.jp/ja/lib/lib4/)
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成26年度-
 本年度は、京都大学人文科学研究所所蔵の「華北交通写真群」に特化させて、2016年秋の論文集刊行に向けて集中的に研究を進める予定である。そのための具体的な作業は、以下のとおりである。
① 整理カードに貼りつけた密着プリント・紙焼きプリンとネガとの照合作業を実施し、ネガの状態をチェックし、それらの所蔵状況について、全般的な調査を実施する。
② 研究メンバーは、「華北交通写真群」から「企業」「鉄道」「鉱工業」「愛路運動・治安・宣撫」「弘報」「写真(家)」「考古・遺跡」「民俗」「教育」、それぞれのトピックを担当し、地域、時代として考証すべき写真を選択し、分析・考証する。
③ 戦時期発行の『晋察冀画報』(中国)、『Picture Post』(イギリス)などと比較検証する。
 以上の成果を検討するために、2015年12月頃に公益財団法人東洋文庫会議室にて、華北交通論集第2回協議会を開催する。