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集合的記憶と中東欧地域の音楽:比較研究に向けてのデータベース構築

地域情報学プロジェクト

集合的記憶と中東欧地域の音楽:比較研究に向けてのデータベース構築

個別共同研究ユニット
代表: 福田  宏(京都大学地域研究統合情報センター・助教)
共同研究員: 池田 あいの(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教務補佐員)、岡本 佳子(東京大学大学院総合文化研究科・学術研究員)、神竹 喜重子(一橋大学大学院言語社会研究科・博士後期課程)、中村 真(大阪大学大学院文学研究科・招聘研究員)、半澤 朝彦(明治学院大学国際学部・准教授)、福田  宏(京都大学地域研究統合情報センター・助教)、松本 彰(立正大学・非常勤講師)、棟朝 雅晴(北海道大学情報基盤センター・教授)、吉村 貴之(早稲田大学イスラーム地域研究機構・准教授)
期間: 平成25年4月~平成27年3月(2年間)
目的:  本研究の目的は、中東欧地域における国歌と唱歌(ここでは二つを合わせて国民歌と呼ぶ。理由については後述)を比較検討しつつ、集合的記憶における音楽の機能を明らかにしようとするものである。フランス革命の際、シャンソン(歌)が情報伝達手段として機能し、大衆を動員する上で重要な役割を果たした点は既に指摘されている(プラース『革命下のパリに音楽は流れる』2002)。識字率が低かった当時の社会においては、新聞の朗読や演説会といった手段も活用されていた。だが、集団での歌唱によって感情を高揚させる機能を持ち、人から人への伝播が比較的容易な歌は、集合的記憶の形成という点において最も重要なメディアであったと言えるだろう。そこで本研究では、国民形成に影響を与えた歌を網羅的に収集し、そのデータベースを構築すると共に、地域・国民単位での歌の記憶形成機能をパターン化して把握することを目的としたい。
研究実施状況: -平成25年度-
 初年度となる2013年度においては、比較の前提となる議論の枠組を設定することに重点を置いた。国民音楽については、個々の事例については研究が進んでいるものの、比較する試みについては意外にも少ない。また、歴史学・音楽学・民俗学といった人文諸科学の中でも研究成果が十分に共有されておらず、かなりの程度の認識のギャップが存在する。例えば、歴史学・政治学の分野ではナショナリズムに対する構築主義的な理解が定着しており、国民史を批判的に再検討する作業が行われてきたが、音楽学の世界では国民を原初主義的に理解する傾向が強い。そのため、初年度においては、ワークショップおよびパネル・ディスカッション等により、主として歴史学と音楽学の立場から知見を持ち寄り、データベース構築を行うに当たって、何が課題となり、何が必要となるかについて検討した。
研究成果の概要: -平成25年度-
 9月に地域研にてワークショップ、10月に政治経済学・経済史学会にてパネル・ディスカッションを開催した。これらの会合では様々な分野から参加者を得ることができ、議論を行うための共通の土台を一定程度形成することができた。だが、ここで改めて浮き彫りとなったのは、人文社会科学と情報学とのギャップの大きさである。音楽情報科学研究会(SIGMUS)の活発な活動に見られるように、ここ数年の研究の進展はめざましいものがある。だが、そうした成果は人文社会科学において共有されていない。例えば、エッセン音楽データベースには、世界各国の民謡が約1万曲収集されており、音楽情報学の分野で積極的に活用されているが、歴史学や音楽学の研究者には知られていない。たとえ知っていたとしても疑いの眼で見ていることが多いのが実情である。その根底には、情報学で音楽を分析することに対する不信感が存在する。
 そのため、次年度において課題となるのは、人文社会科学の研究者にとって有用と思われるデータベースの構築である。既述のように、音楽情報学の分野では相当の研究蓄積があり、活用されているデータベースも既に存在する。このユニットにおいて課題とすべきは、既存の実績に屋上屋を架すことではなく、文系と理系の共同研究を進展させるようなデータベースのあり方を提示することである。
公表実績: -平成25年度-
【合同ワークショップ 「中央ヨーロッパ音楽の比較研究に向けて:集合的記憶としての国民音楽」】
日時:2013年9月23日
会場:京都大学稲盛財団記念館3階 中会議室
主催:京都大学地域研究統合情報センター共同研究・共同利用プロジェクト複合ユニット「非文字資料の共有化と研究利用」および同個別ユニット「集合的記憶と中東欧地域の音楽:比較研究に向けてのデータベース構築」
共催:音楽と社会フォーラム
●「中・東欧における国民音楽の比較:音楽データベース活用の可能性」
●池田あいの(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「マックス・ブロートと国民音楽:チェコからイスラエルへ」
●神竹喜重子(一橋大学大学院言語社会研究科)
「ソ連国歌の誕生:社会主義における国家と国歌」
●岡本佳子(東京大学大学院総合文化研究科)
「『新しいハンガリーの音楽』の詳細:バルトーク《青ひげ公の城》を手がかりに」
●中村真(大阪大学大学院文学研究科)
「Z. ネイェドリーのV. ノヴァーク批判再考:チェコ国民音楽の位置づけをめぐって」
●コメント:小野塚知二(東京大学大学院経済学研究科)  
      左近幸村(日本学術振興会特別研究員)
【2013年度政治経済学・経済史学会パネル・ディスカッション 「中・東欧における想像と創造の国民音楽を比較する」】
日時:2013年10月19日
会場:下関市立大学
報告1.中・東欧における国民音楽の比較-音楽データベース活用の可能性
京都大学 福田 宏
報告2.マックス・ブロートと国民音楽-チェコからイスラエルへ
京都大学 池田 あいの
報告3.ソ連国歌の誕生-社会主義における国家と国歌
一橋大学大学院 神竹 喜重子
コメント 日本学術振興会特別研究員 左近 幸村
司会 東京大学大学院経済学研究科 小野塚 知二
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成25年度-
 初年度は人文系のみの研究会となってしまったため、次年度は情報学を交えたワークショップを開催し、データベース構築に向けた具体的な議論を行う。また、二年間の研究会を踏まえたCIAS Discussion Paperを年度内に刊行する。
 データベース構築にあたっては、言語(方言)を中心的なテーマとして設定する。日本民謡の計量的分析において、民謡の地域的差異と方言地図との相関性を示唆する研究が出始めているが、その点は、中東欧地域などの他の地域についても当てはまると考えられる。データベースの具体的な素材としては、ハプスブルク帝国において収集されていた未完の民謡コレクションを用いる。時間と予算の制約があるため、その全てを網羅できるわけではないが、ここでの目的は、全体を俯瞰するデータではなく、文系研究者にも有用と思わせるデータの情報学的活用法を提示することである。