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ユーロ危機下における南欧諸国のガヴァナンス変容―東欧諸国との地域間比較の視点から

相関地域研究プロジェクト

ユーロ危機下における南欧諸国のガヴァナンス変容―東欧諸国との地域間比較の視点から

個別共同研究ユニット
代表: 横田 正顕(東北大学大学院法学研究科・教授)
共同研究員: 伊藤 武(専修大学法学部・准教授)、小森 宏美(早稲田大学教育・総合科学学術院・准教授)、泰泉寺 友紀(和洋女子大学国際学類国際社会専修・准教授)、 竹中 克行(愛知県立大学外国語学部・教授)、西脇 靖洋(上智大学グローバル教育センター・特別研究員)、野上 和裕(首都大学東京大学院社会科学研究科法学政治学専攻・教授)、平田 武(東北大学大学院法学研究科・教授)、深澤 安博(茨城大学人文学部・教授)、細田 晴子(日本大学商学部・准教授)、 松森 奈津子(静岡県立大学国際関係学部・准教授)、村田 奈々子(東京大学大学院総合文化研究科)、八十田 博人(共立女子大学国際学部・准教授)、横田 正顕(東北大学大学院法学研究科・教授)
期間: 平成25年4月~平成27年3月(2年間)
目的:  2009年のギリシャ財政問題を発端とする「ユーロ危機」は、ポストグローバ化時代の象徴としても重要であるが、この問題への取り組みにおいては、独仏のような欧州中核諸国の視点からのユーロ圏全域的分析がなお支配的であり、危機の中心舞台である南欧諸国の実態に注目した研究は希少である。
こうした現状を踏まえ、本共同研究では、南欧諸国における社会・経済的利益の表出、媒介、調整の構造が、ユーロ危機の複雑な展開の中で被りつつある変化について、政治学、歴史学、社会学などの研究分野の学際知に基づき、同じく欧州の非中核地域を構成する東欧との地域間比較の視点を取り入れつつ分析を行う。
すなわち本共同研究の目的は、(1)対象諸国固有の条件と欧州通貨制度に内在する構造的脆弱性との共振作用の発現過程を明らかにし、(2)ユーロ危機下における「恒常的緊縮」という不可避の「外圧」がもたらす(であろう)ガヴァナンス構造の変容を、中長期的射程から比較考察することである。
研究実施状況: -平成26年度-
 本共同研究では2014年12月6日、2015年3月30日の2度にわたって研究会を実施した。また、一部研究員は科研費等を利用して海外調査を実施した。研究会の内容は以下の通りである。
【第1回】
日時:2014年12月6日
場所:京都大学稲盛財団記念館3階・中会議室)
八十田博人「ユーロ危機後のイタリアの金融と財政―何が変わった(変わらなかった)か?-」
横田正顕「ユーロ危機とデモクラシーの質―スペイン・ポルトガルを中心に」
【第2回】
日時:2015年3月30日
場所:首都大学東京秋葉原サテライト
出版企画会議:横田正顕、野上和裕、深澤安博、伊藤武、八十田博人、細田晴子、小森宏美、西脇靖洋、秦泉寺友紀、村田奈々子の参加により、本共同研究の最終成果の刊行に関するワークショップを開催した。現時点での寄稿予定者は横田正顕、野上和裕、伊藤武、八十田博人、細田晴子、西脇靖洋、秦泉寺友紀、村田奈々子の8名である。
研究成果の概要: -平成26年度-
 学会報告と研究会が盛んに行われた初年度とは異なり、今年度は初年度の諸報告を基にした成果物の刊行、並びに共同研究期間終了後における出版企画に向けての準備に多くの時間が割かれた。
 初年度の研究では、一口に「ユーロ危機」といっても、各国の危機発生の経路、危機の深度、危機の直接的結果について重大な差異があり、それぞれの国における「ユーロ危機」自体の背景にある構造的問題の特定が分析の上で極めて重要なポイントとなることが確認されたが、本年度においてはこの点がさらに深く掘り下げられた。
 特に注目されたのは、金融危機と財政危機の組み合わせの違いがもたらす各国政治への影響の違いと、ユーロ危機の波及過程で生じた政党政治の変動幅の違いが何に由来するのかという点であった。ギリシャでは2009年以前の政党システムがほぼ解体的な変化を経験したのに対し、ポルトガルやスペインではむしろ安定的な要素が目立っている。また、変化の側面だけではなく、変化しなかった側面ないしユーロ危機以前から継続している問題とそうでないものの区別が必要であるという認識も共有された。
 これとの関連で、スペインにおけるPODEMOSといった新興政党の急浮上や、カタルーニャ独立住民投票問題が、ユーロ危機の影響という文脈でどの程度理解でき、あるいは持続的な影響を持つのかという点が問題となるが、これらの評価については最終成果物の作成を通じて一定の結論が出るものと思われる。
公表実績: -平成26年度-
 本研究課題に関連した公表実績としては、出版、電子媒体が多くを占めた。大学紀要は含まない等の制約にもかかわらず、全体として10本の業績があり、うち査読論文が4本、国際査読誌への投稿が3本あった。代表的な業績としては、以下のものが挙げられる。
・平田武「ハンガリーにおけるデモクラシーのバックスライディング」『体制転換/非転換の比較政治』(日本比較政治学会年報第16号)
・Katsuyuki Takenaka, “Participation in Landscape and Local Knowledge: Priorat, Agricultural Landscape of the Mediterranean Mountains,” Globalization and New Challenges of Agricultural and Rural Systems. Proceedings of the 21st Colloquium of the Commission on the Sustainability of Rural Systems of the International Geographical Union
・Haruko Hosoda, “El europeísmo en España: entre el catolicismo y la socialdemocracia,” Shoji BANDO/Mariela INSÚA(eds.),Actas del II Congreso Ibero-Asiático de Hispanistas(Biblioteca digital, Pamplona, 2014)
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成26年度-
 2015年3月30日に実施された最後の研究会においては、本共同研究の最終成果を書籍として刊行することが決定した。このため、2015年度の京都大学学術出版助成への申請した上で、CIAS研究叢書「地域研究のフロンティア」シリーズからの刊行を想定した執筆計画を募ったところである(詳細については5.本年度の研究実施状況も参照)。
 本研究プロジェクトは2015年3月をもって終了するが、共同研究の枠組みとしては、首都大学東京・野上和裕教授を研究代表者とする科学研究費基盤(B)「ユーロ圏危機下における南欧政治の構造変容に関する比較研究」(課題番号:25285043、平成25~28年度)と並走しながら進められてきた。右科研の資金的サポートを得ながら、最終成果物の刊行作業は続き、また科研の最終年度であるH28年度に向けて、本研究プロジェクトとも関連するシンポジウム、学会報告などが行われる予定である。