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地域研究方法論プロジェクト

官公庁や民間企業やマスコミと接合される地域研究の方法論の検討(h25~h26)

個別共同研究ユニット
代表: 立岩 礼子(京都外国語大学京都ラテンアメリカ研究所・主任研究員)
共同研究員: 伊藤 未帆(東京大学教養学部東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ・特任講師)、狐崎 知己(専修大学経済学部・教授)、鈴木 茂(東京外国語大学大学院総合国際学研究院・教授)、立岩 礼子(京都外国語大学京都ラテンアメリカ研究所・主任研究員)、西 芳実(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、幡谷 則子(上智大学外国語学部・教授)、宮原 曉(大阪大学グローバルコラボレーションセンター・副センター長/准教授)、山本 博之(京都大学地域研究統合情報セン ター・准教授)
期間: 平成25年4月~平成27年3月(2年間)
目的:  本研究は、日本の官公庁・民間企業・マスコミ等の現場において、いかなる地域研究の成果が必要されているかという実社会における地域研究のニーズを分析した上で、当該分野の実務者に対して地域研究者による研究成果をいかなる形で発信するべきかを検討する。
 今日、地域研究の重要性はますます高まっており、外交を担う外務省などの官公庁をはじめ、海外に進出する民間企業、海外事情を報道するマスコミにとっては、諸外国の地域事情は重要な情報であることは明白である。さらに言えば、そうした情報は単なる統計あるいはデータとして提示されるだけでは不十分で、交渉相手あるいは関心地域の歴史や文化への理解を深め、日本との相互理解のもとに共存する世界を構築するために援用されるべきである。その意味で、地域研究者による研究成果が果たすべき役割は大きいはずである。しかしながら、現状では、こうした研究成果が十分に実務者に活用されているとは言い難く、ましてや交渉や取引あるいは取材の現場を通して社会に還元されているとは考えにくい。
 従って、本研究では、官公庁・民間企業・マスコミ等の実務者が必要としている地域研究による成果を分析し、その発信方法の改善の可能性を検討する。
研究実施状況: -平成25年度-
 本年度は初年度であるため、まず、4月から5月にかけて、日本の官公庁・民間企業・マスコミ等の現場におけるインフォーマントとして協力可能な方々のリストップを行うことからプロジェクトを始動させた。最終的に、外務省3名、企業2名、マスコミ関係者4名に絞り、NPO法人1名も含めることにした。5月末に、リストアップされた人たちにインフォーマントの依頼とスケジュールの調整伺いを研究責任者である立岩が行うことを確認した。調整作業を行って行く過程で、当初の予定を変更し、初年度にマスコミ関係者との意見交換を行うことにした。12月2日(月)13:30~15:30(於:京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室)にて、ジャーナリスト石丸次郎氏(アジアプレス代表、NPO法人iAsia関西支部代表)及び立岩陽一郎氏(NHK衛星放送記者、iAsia関東支部代表)とのセミクローズドの研究会を開催した。

-平成26年度-
 本年度は、昨年度リストアップした日本の官公庁・民間企業・マスコミ等の現場におけるインフォーマントと個別に研究会を開いた。官公庁からのインフォーマントは関西政府代表全権特命大使三輪昭氏、民間企業からは三菱商事(株)グローバル渉外部部長秋山諭宏氏及び次長梨本博氏、マスコミからは毎日新聞外信部記者米村耕一氏、朝日新聞大阪社会部記者武田肇氏、NHK衛星放送記者立岩陽一郎氏、アジアプレス・インターナショナル代表ジャーナリスト石丸次郎氏に協力を願った。また、NPO法人からは、調査報道アイ・アジア(i Asia)及び FM わぃわぃの金千秋氏に協力を得た。
 今年度前半は、昨年度から活発な意見交換が進んだマスコミ関係者との協働で、公開シンポジウム「世界はレイシズムとどう向き合ってきたか―地域研究とジャーナリズムの現場から」の準備として5月28日を皮切りに複数回の研究会を実施し、7月26日に公開シンポジウムを大阪・中之島で開催し、レイシズムについて世界の現場から、そして日本の現状も視野に入れつつ市民とともに考える場を持った。
 また、7月7日には三菱商事本社にて、上記インフォーマント2名へのヒヤリングを実施した。三菱商事の海外調査の方法、商社による地域研究の成果の利用状況、地域研究者との協働の可能性について、情報の提供および意見交換を行った。
 さらに、10月9日には外務省大阪分室(大阪合同庁舎4号館4階)にて関西政府代表全権特命大使へのヒヤリングを実施した。大使の三輪氏からは、外務省と研究者の連携について詳細な助言をいただいた。
研究成果の概要: -平成25年度-
 初年度はマスコミ関係者との情報及び意見交換を行うべく、研究会を実施した。そこで、まず、地域研究者とジャーナリストの間では、基本的に海外の地域事情に向ける眼差しは共有可能なものであり、発信媒体や発信する相手も共通するものがあることを確認することができた。
 本研究の最大の関心の1つは、地域研究者による研究成果をジャーナリストがどのように利用しているかという点である。この点については、多くのジャーナリストがネット上で検索することで情報を得ているということであった。従って、地域研究者が主たる発信の場としている紙媒体に掲載されている研究成果をジャーナリストが利用する率はかなり低く、紙媒体から情報を得ようとするジャーナリストはほぼ皆無であることも明らかになった。
 一方、人々の新聞離れや、テレビにおけるニュース番組の縮小などにより、既存のニュース報道のあり方が問われる中、インターネット配信ニュースの重要性は増すばかりであり、既存のマスメディアの体制が崩壊する現状にあって、日本のジャーナリズムも変革を余儀なくされているとのことであった。併せて、ジャーナリストから今後は地域研究者もインターネットを通じて発信する必要性が唱えられ、その1つの場としてアジアプレスのHPへの投稿が提案された(地域研究者にとって研究成果の発表の場としての紙媒体の位置づけについては、本研究で議論するテーマとしない)。
現在は、アジアプレスのHPへ研究成果や現地報告を投稿する際の投稿規定について検討を始めている。また、地域研究者とジャーナリストによる会合を引き続き行うことを確認した。

-平成26年度-
 本研究では、官公庁・民間企業・マスコミ等の実務者が必要としている地域研究による成果を分析し、その発信方法の改善の可能性を検討した。
 官公庁との連携としては、外交情報の収集・分析を専門に行う国際情報統括官組織(Intelligence and Analysis Service)である国際情報局や次官級とのコラボレーションを実現することが重要であり、突発性の高い国際問題に対して、どんな地域研究者が協力できるかを見えるようにするためのコンタクト・ポイントを設定する必要があることがわかった。また、専門調査員派遣制度を効果的に活用するべく、帰国者と派遣予定者との意見交換会などの開催なども必要であることも明らかになった。
 企業との連携においても、やはり地域研究者のリストが求められた。企業は独自の方法で収集現場の生の情報や限定された地域の情報を深く追究しているため、その地域を大局的に理解し、関心国の周辺地域の反応と日本との関係において状況を理解する上で、地域研究者のニーズがあることが明らかになった。今回の研究会の成果として、地域研究コンソーシアム(JCAS)2014年度年次集会においてインフォーマントの登壇の可能性を探った。残念ながら、今年度は実現に至らなかったが、来年度以降でJCASに限らず、企業との連携の場の実現を目指すべく提言を行っていきたい。
 マスコミ関係者との連携は、公開シンポジウムの準備、実施を通じて地域研究による成果の発信方法の幅を広げる突破口を作ることができたと言える。また、アジアプレス・インターナショアルを通じて、地域研究者によるYahooの国際ニュースへの投稿が実現する運びとなった。
公表実績: -平成25年度-
 特になし

-平成26年度-
 公開シンポジウム「世界はレイシズムとどう向き合ってきたか―地域研究とジャーナリズムの現場から」(2014年7月26日、大阪・中之島)を開催した。本シンポジウムの内容は、動画配信を (http://www.youtube.com/watch?v=3Y3OvrgZOCk)を行っている。また、京都ラテンアメリカ研究センターニュ−ズレター(2014年7月号)にて報告した。地域研究コンソーシアム(JCAS)2014年度年次集会のポスターセッションに参加し、JCASコラボレーションシリーズにて刊行する。
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成25年度-
 マスコミのインフォーマントを増やし、研究会合を継続する。また、官公庁(主に外務省を想定)及び民間企業(主に海外に進出している民間企業や商工会議所を想定)を対象にした研究会を実施する。3つの分野について1回ずつ、合計3回の研究会合を行う。研究会合は各分野のインフォーマントと研究会メンバーによるセミクローズドの形で行う。基本的に京都大学地域研究統合情報センターで行うが、事情によってはインフォーマントの所属先で行うこともある。それぞれの研究会合の様子は音声起稿して共同研究員の間で共有する。地域研究コンソーシアム(JCAS)の年次集会のポスターセッションに参加し、JCASのネットワークを通じて研究成果を発表するとともに研究内容に対するフィードバックを得る機会とする。さらに、一般公開のワークショップを開催し、官公庁、民間企業、メディアの実務者とどのような具体的な協働が可能であるかを具体的に検討し、地域研究コンソーシアム(JCAS)に対して必要な提言を行う。

-平成26年度-
 官公庁、企業、マスコミからも、地域研究者情報(氏名、所属、連絡先、専門地域、専門分野、主な業績、近年の研究内容)がアクセスしやすい形で開示されていることが望まれているため、まずはこの点について具体的に動いていく必要がある。