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地域研究方法論プロジェクト

アジアと日本を結ぶ実践型地域研究(h25~h26)

個別共同研究ユニット
代表: 安藤 和雄(京都大学東南アジア研究所・准教授)
共同研究員: 安藤 和雄(京都大学東南アジア研究所・准教授)、市川 昌広(高知大学教育研究部・教授)、辰巳 佳寿子(福岡大学経済学部・教授)、中村 均司(元・京都府丹後農業研究所)、南出 和余(桃山学院大学国際教養部・講師)
期間: 平成25年4月~平成27年3月(2年間)
目的:  離農、離村の問題は、日本に固有の問題ではなく、今やアジアの開発途上国でも共通する問題となりつつある。アジアに先駆け日本農村がこの問題に取り組んできた。過疎地、若者の離農、離村、限界集落と呼ばれる「在地」で暮らすこの問題に直面している当事者たちによるインフラ整備や経済問題という従来の農村開発アプローチとは一線を画した文化的なアプローチによる「在地の自覚」に依拠した地域再生の取り組みが日本の各地で起きている。
 本研究では、ミャンマー、ラオス、ブータン、バングラデシュ、インドなどのアジア諸国の大学関係者、NGOなどの農村開発関係者を招聘し、日本のNPO、地方自治体、大学などの各団体と草の根の農村開発に関する国際会議とPLA(参加型学習と実践)調査を共同実施することで、アジアから学び、アジアには日本の問題を発信するという、相互啓発による新しい農村開発の可能性を模索する実践型地域研究を実施する。
研究実施状況: -平成25年度-
 本プロジェクトは、東南アジア研究所実践型地域研究推進室が実施している研究プロジェクト(科研、東南アジア研究所共同研究など)との共同により、以下の研究活動を行った。2013年度の8月、12月を除く毎月末に東南アジア研究所実践型地域研究推進室が主催する京滋フィールドステーション月例研究会にて、実践型地域研究について議論をすすめる。また、7月の約1カ月間に、ブータンの王立ブンタン大学シェラブッチェ大学の若手研究員4名を招聘し京都府南丹市美山町知井振興会傘下の佐々里地区にて知井振興会、佐々里自治会との協働により、アクション・リサーチとして、様々な地元住民、学生ボランティアらとの交流事業、集落住民の参加による話し合い形式のワークショップ、問題発見型のPLAを実施した。11月8~10日に高知県大豊町怒田地区で第5回「文化と歴史そして生態を重視したもうひとつの草の根農村開発に関する国際会議in大豊町」を開催した。この事業にはミャンマー(3名)、ネパール(1名)、ブータン(1名)が参加した。8日は参加者による集落のPRA、9日の公開の地元住民参加型シンポジウム「アジアと日本の山村で心ゆたかに生きる」、10日は怒田集落における地元住民、学生ボランティア、会議発表参加者らと、怒田集落の住民である氏原氏の問題提起発表にもとづき、オープンな意見交換会をもった。
-平成26年度-
 本プロジェクトは、東南アジア研究所実践型地域研究推進室が実施している研究プロジェクト(科研、東南アジア研究所共同研究、地(知)の拠点事業、SPIRITなど)との共同により、以下の研究活動を行った。2014年度の8月、12月を除く毎月末に東南アジア研究所実践型地域研究推進室が主催する京滋フィールドステーション月例研究会にて、実践型地域研究について議論をすすめた。また、7月の約一ヶ月間、2015年の2月の10日間に、ブータンの王立ブンタン大学シェラブッチェ大学の若手研究員4名と5名をそれぞれ招へいし京都府南丹市美山町知井振興会傘下の佐々里地区にて知井振興会、佐々里自治会との協働により、アクション・リサーチとして、様々な地元住民、学生ボランティアらとの交流事業、集落住民の参加による話し合い形式のワークショップ、問題発見型のPLAを実施した。11月15~17日に京都府南丹市美山町知井地区で第6回『文化と歴史そして生態を重視した もうひとつの草の根農村開発に関する国際会議in 美山町』を開催した。この事業にはミャンマー(1名)、ラオス(4名)、ブータン(1名)、バングラデシュ(1名)、インド(1名)が参加した。15 日は公開の地元住民参加型シンポジウム「アジアの村で何が起こっているのか!?」、16日は美山町知井地区での地域活性に関するPLAを実施した。参加者による集落でのPRAと地域活性に関する個別事業報告会を参加型ワークショップによって実施した。17日は学生ボランティ、会議発表参加者らと総合討論を午前中に開催しオープンな意見交換会をもった。また、実践型地域研究における調査手法の開発として12月と3月バングラデシュのハティア島にてサイクロン被災について現地のNGOとともに村人の対応や知恵を、改良PRAにより調査実施した。
研究成果の概要: -平成25年度-
 アジア諸国における過疎化、離農、離村、高齢化による限界集落等々の問題へのアプローチは、現象の科学的説明とともに、解決策を実践的に行っていくことが強くもとめられている。地域の現場での直観的な問題の理解から、克服への道筋を、問題解決の実践に具体的に参加する人々がたてて、実践を通じて解決策を具体的に模索しつつ、現象を科学的に分析して、第三者に説明するという、問題群を中心にした実践から分析へという、従来の地域研究や既存学問がとってきた方法論を逆さまにする方法論が有効となろう。このことによって問題解決に具体的に参加したいと願っている一般の人々の「善意の力」をも巻き込む参加型の地域研究が具体的に模索される。本研究では、特に、アジアの若い人々、日本の若い人々の「善意の力」を実践に生かせるアクション・リサーチを地域研究として成果として提示したいと願っている。
 2014年7月に実施したアクション・リサーチでは佐々里集落の人々とブータンの若手研究員のボランティア的な交流活動やミニ・ワークショップ、訪問聞き取りのPLAによって、ブータンの若手研究者には、日本の過疎、高齢化の実態を知ってもらうことができ、佐々里集落の人たちには、ブータンの人々の開発や暮らしに関する考え方に直接接してもらうことで、過疎、離農の問題がブータン、日本のそれぞれの固有問題でないという自覚を生むことができた。
 また、11月に実施した高知県大豊町での国際会議では、ネパール、ミャンマー、ブータンの農村開発の諸問題、亀岡市、南丹市美山町知井地区、山口県阿武町、高知県大豊町での地域振興の事例が発表され、過疎化、離農の問題がもはやアジアにおいてはグローバルな問題となっていることと、日本の各地での取り組みから地域連携の重要性が認識された。そして、怒田集落での意見交換から、学生の力が本研究のようなワークショップの場でも発揮される工夫が必要であると指摘された。
 美山町佐々里集落、大豊町怒田集落のいずれの活動も地元新聞(京都新聞、高知新聞)に大きくとりあげられ、佐々里集落の活動については、10分前後の特集が、夕方の関西テレビのニュースで組まれ、社会的な反響があった。

-平成26年度-
 アジア諸国における過疎化、離農、離村、高齢化による限界集落等々の問題へアプローチは、現象の科学的説明とともに、解決策を実践的に行っていくことが強くもとめられている。地域の現場での直観的な問題の理解から、克服への道筋を、問題解決の実践に具体的に参加する人々がたてて、実践を通じて解決策を具体的に模索しつつ、現象を科学的に分析して、第三者に説明するという、問題群を中心にした実践から分析へという、従来の地域研究や既存学問がとってきた方法論を逆さまにする方法論が有効となろう。このことによって問題解決に具体的に参加したいと願っている一般の人々の「善意の力」をも巻き込むこと参加型の地域研究が具体的に模索される。本研究では、特に、アジアの若い人々、日本の若い人々の「善意の力」を実践に生かせるアクション・リサーチを地域研究として成果として提示したいと願っている。
 2013年度と2014年度の7月、8月、2月に実施したアクション・リサーチでは佐々里集落の人々とブータンの若手研究員のボランティア的な交流活動やミニ・ワークショップ、訪問聞取りのPLAによって、ブータンの若手研究者には、日本の過疎、高齢化の実態を知ってもらうことができ、佐々里集落の人たちには、ブータンの人々の開発や暮らしに関する考えて方に直接接してもらうことで、過疎、離農の問題がブータン、日本のそれぞれの固有問題でないという自覚を生むことができた。
 また、2013年度と2014年度のそれぞれ11月に実施した高知県大豊町と京都府南丹市美山町での国際会議では、ネパール、ミャンマー、ブータン、バングラデシュ、ラオスの農村開発の諸問題、亀岡市、南丹市美山町知井地区、山口県阿武町、高知県大豊町での地域振興の事例が発表され、過疎化、離農の問題がもはやアジアにおいてはグローバルな問題となっていることと、日本の各地での取り組みから地域連携の重要性が認識された。そして、怒田集落での意見交換から、学生の力を本研究のようなワークショップの場でも発揮される工夫が必要である指摘を受けて、2014年の美山町では学生ボランティアのセッションを設けて、発表と議論を行い、意見交換を行った。
 美山町佐々里集落、大豊町怒田集落のいずれの活動も地元新聞(京都新聞、高知新聞)に大きくとりあげられ、特に、2013年7月、8月のブータンの若手研究者の佐々里集落の活動については、10分前後の特集が、夕方の関西テレビのニュースで組まれ、社会的な反響があった。
 バングラデシュのハティア島で行った実践型地域研究調査手法は従来の参加型調査PRAに参加型ワークショップを付加し調査結果の評価をインフォーマントに行ってもらった。十分なインフォーマントである村人の参加意識を高める調査手法としての可能性を確認することができた。
公表実績: -平成25年度-
・安藤和雄 2013年「グローバルな問題としての過疎・離農問題ーブータンと日本における実践型地域研究の取組ー」『熱帯農業研究』6 (Extra issue 2 ): 85-86.
・安藤和雄・市川昌広 編 2014年3月31日 『第5回 文化と歴史そして生態を重視したもう一つの草の根の農村開発に関する国際会議-高知県大豊町2013年11月8日~10日―』高知大学自然科学系農学部門「中山間」プロジェクト、京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室(ISBN:978-4-906332-22-9)。
・安藤和雄 2013年「草の根の国際会議in高知県大豊町を終えて」『実践型地域研究ニューズレター ざいちのち No.1 ‐No.65 』京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室:216.

-平成26年度-
・安藤和雄 2013年「グローバルな問題としての過疎・離農問題ーブータンと日本における実践型地域研究の取組ー」『熱帯農業研究』6 (Extra issue 2 ): 85-86.
・安藤和雄 2013年「草の根の国際会議in高知県大豊町を終えて」『実践型地域研究ニューズレター ざいちのち No.1 ‐No.65 』京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室:216.
・市川昌広・祖田亮次・内藤大輔編著.2013年.『ボルネオの〈里〉の環境学-変貌する熱帯林と先住民の知』.昭和堂. ・安藤和雄・市川昌広 編 2014年3月31日 『第5回 文化と歴史そして生態を重視したもう一つの草の根の農村開発に関する国際会議-高知県大豊町2013年11月8日~10日―』高知大学自然科学系農学部門「中山間」プロジェクト、京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室(ISBN:978-4-906332-22-9)。
・安藤和雄 2014 「アジアの過疎・離農問題に挑戦する実践型地域研究の取組」『第24回 日本熱帯生態学会年次大会(宇都宮)講演要旨集』日本熱帯生態学会:67.
・安藤和雄 2014年「アジアと日本を結ぶ実践型地域研究の事例とその意義― ブータンの人たちの佐々里集落滞在が過疎・離農問題を考える契機に―」『実践型地域研究ニューズレター ざいちのち No.66 』京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室:4.
・南出和余2014「経済成長下の若者の都市移動―「わたし語り」の人類学の試み―」 『桃山学院大学総合研究所紀要』第39巻第3号:91-108。
・辰己佳寿子 2014年 「山口県の生活改善における女性リーダーと生活改良普及員-相互啓発と累積的 活動経験によって育まれた主体性-」『中国農村における生活改善に関する研究』: 23-39.
・安藤和雄 2015年 「生存基盤科学研究ユニット萌芽研究『バングラ デシュにおける自然災害に対する防災・減災の 経験知とその有効活用に関するアクション・リ サーチ』の目的と2015年度研究成果報告」『実践型地域研究ニューズレター ざいちのち No.69 』
京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室:3.
・赤松芳郎 2015年「ブータン人研究者の PLA(参加型学習と実践 と実践に向けた課題)」『実践型地域研究ニューズレター ざいちの ち No.68 』京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室:1.
・赤松芳郎 2015年「ブータン研究者のPLA(参加型学習と実践) プログラムと佐々里集落調査」『実践型地域研究ニューズレター ざいちのち No.67 』京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室:4.
・内田晴夫 2015年「第6回 文化と歴史そして生態を重視したもうひとつの草の根の農村開発に関する国際会議 in 美山」『実践型地域研究ニューズレター ざいちのち No.68 』京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室:3.
・安藤和雄・市川昌広 編 2015年3月31日 『第6回 文化と歴史そして生態を重視したもう一つの草の根の農村開発に関する国際会議-京都市美山町知井 2014年11月15日~17日―』高知大学自然科学系農学部門「中山間」プロジェクト、京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室(ISBN: 978-4-906332-22-9)
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成25年度-
 2014年度 8月、12月を除き、京滋フィールドステーション月例研究会に参加する。
7月~8月にかけて、他のプロジェクトと共同し、王立ブンタン大学シェラブッチェ大学の若手研究員4名を招へいし京都府南丹市美山町知井振興会傘下の佐々里地区にて知井振興会の事業に参加して問題克服の事業にボランティア参加する実践活動を重視したPLAを実施する。PLAの終了時に、その成果を知井振興会にて1日をかけて国際ミニ・ワークショップとして成果発表を行う。また、同様に、他のプロジェクトと共同し、 11月初旬に美山町知井地区で5日間の草の根の農村開発国際会議を開催する。

-平成26年度-
 研究成果公表は、2015年度の京滋フィールドステーション月例研究会や、『実践型地域研究ニューズレター ざいちのち』、また、実践型地域研究については、日本のみではなく、本研究で招へいした海外の研究者や実践者との海外での協働研究として実施している。今後も本研究での成果をいかし、国内外で実践型地域研究を協働研究として実施していく計画であり、これらの国内外の成果を日本熱帯農業学会や日本熱帯生態学会で口頭発表や投稿論文としても発表していくことを計画している。また、実践型地域研究については、英文でも報告書の出版も計画している。
 また、本研究の成果にもとづき、2015年度 サントリー文化財団「地域文化に関するグループ研究助成」に『アジアの隣人との協働評価による地域文化の再生・創生に関する参加型実践研究』を安藤が代表者となって申請した。採択されれば、本研究の内容を2015年度、2016年度ともに継続発展させていく予定である。