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災害対応の地域研究プロジェクト

ラテンアメリカにおける社会紛争―発生・終結プロセスの比較研究―(h27)

個別共同研究ユニット
代表: 村上 勇介(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員: 幡谷 則子(上智大学外国語学部・教授)、浜口 伸明(神戸大学経済経営研究所・教授)、宮地 隆廣(東京外国語大学大学院国際学研究院・准教授)、安井 伸(慶應義塾大学商学部・准教授)、和田 毅(東京大学大学院総合文化研究所・准教授)、村上 勇介(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
期間: 平成27年4月~平成28年3月(1年間)
目的:  本研究の目的は、近年、ラテンアメリカで増加している社会紛争について、主要な国を対象に分析し、比較研究を行ない、その発生プロセスを明らかにすることである。そして、その分析結果をもとに、社会紛争の終結メカニズムや将来の発生予測・予防にむけた方策を考察する。
 ラテンアメリカでは、1980年代から90年代のネオリベラリズムの時代をへて、植民地時代から続く格差と貧困の問題がより深刻となった。そうした事態を背景に、今世紀にはいり、各国で社会紛争が増加し、政治社会を揺るがす事態となっている。
 そうした社会紛争について、本研究に関連したこれまでの研究(以下の「9.関連プロジェクト」参照)では、社会紛争データベースの整理が進んでいるペルーの事例を中心に分析を行なってきた。その中で分かってきたことは、開発が新たに、あるいは急速に進んだ地域で社会紛争が頻発していることである。そこで、本研究では、ペルーに関し、類似の社会経済的状況ながら社会紛争が頻発していない地域との比較分析結果を確認する。そのうえで、ラテンアメリカの他の国との比較研究を重点的に実施し、社会紛争の発生過程についての分析を深める。また、その結果に基づいて、社会紛争の終結や予防のメカニズムについて検討する。
研究実施状況:  シンポジウム(1回)とワークショップ(3回)において、ペルー以外のラテンアメリカ諸国における社会紛争の傾向を確認するとともに、紛争終結のためのメカニズムが働いている場合について、ペルーとの比較で制度面などの相違について分析を実施した。シンポジウムでは、ブラジル、メキシコ、チリ、コロンビア、ベネズエラ、ペルーをとりあげた。ワークショップは、コロンビア、アルゼンチン、グアテマラについて実施し、考察を深めた。
【シンポジウム】
テーマ:「ポストネオリベラル期のラテンアメリカ政治─現状と課題─」
 期日:2015年6月22日(月曜日)13:30~18:00
 場所:上智大学中央図書館棟9階921会議室
【ワークショップ】
テーマ:“El proceso de paz con las FARC en Colombia”Carlo Nasi (Universidad de Los Andes, Colombia)
日時:2015年6月1日(月曜日) 16:30~20:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階小会議室I
テーマ:“Del kirchnerismo al‘macrismo’: legados, continuidades y rupturas”Enrique Peruzzotti (Universidad Di Tella, Argentina)
日時:2016年1月23日(土曜日) 14:00~18:00
場所:京都大学地域研究統合情報センターセミナー室(稲盛財団記念館2階212号)
テーマ:“Una lectura crítica sobre los procesos de cambio político en Guatemala y América Central: desempeño institucional y dinámicas ciudadanas”Eduardo Nuñez (Instituto Nacional Democrático-Guatemala)
日時:2015年3月5日(土曜日) 14:00~18:00
場所:京都大学地域研究統合情報センターセミナー室(稲盛財団記念館2階212号)
研究成果の概要:  ラテンアメリカでは、1980年代から90年代のネオリベラリズムの時代をへて、植民地時代から続く格差と貧困の問題がより深刻となった。そうした事態を背景に、今世紀にはいり、各国で社会紛争が増加し、ペルーをはじめとする幾つかの国では政治社会を揺るがす事態となっている。そうした社会紛争について、社会紛争データベースの整理が進んでいるペルーの事例を中心に分析を行なった。その中で分かってきたことは、開発が新たに、あるいは急速に進んだ地域で社会紛争が頻発していることである。
 本研究では、ペルーに関し、類似の社会経済的状況ながら社会紛争が頻発していない地域との比較分析結果を確認する作業を行った。その過程で開発する側、とくに開発に携わる企業と地域住民との間に対話や理解促進のための公式、非公式のメカニズムが存在しているか、そしてそれが一定の機能を果たしているか否かによって相違が生ずることが明らかとなった。
 さらに、そうしたメカニズムの機能には、中央政府や州政府といった国家からの支えの有無が関係していることも判明した。それは、近年、新たに紛争化した事例に、当事者間の利害調整メカニズムの成功例とされていたところが含まれていることからも指摘できることである。そうした例では、国家や州政府が当事者間の調整メカニズムに関与することをある時期からしなくなり、開発する側と地域住民側との間に相互不信が拡大し紛争化に至っていた。
 国家の関与については、元来、国家のプレゼンスが高い(アルゼンチンの例)か、その時の政府が社会紛争に取り組む姿勢を常に示している(ボリビアの例)か、という点での違いが、紛争の激化や長期化が起きる(ペルーの例)余地を抑えている可能性がある。
公表実績: ・日本ラテンアメリカ学会西日本部会研究会ワークショップ「低成長期ラテンアメリカの政治経済」(12月19日)
・村上勇介・帯谷知可編『融解と再創造の世界秩序(「相関地域研究」第2巻)』青弓社, 2016年.
研究成果公表計画
今後の展開等:
 専門誌での特集企画を計画する。また、平成28年度からの個別共同研究「低成長期の発展途上諸国における政治経済社会変動の地域間比較研究」において、比較研究分析を深化させる。