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災害対応の地域研究プロジェクト

災害・紛争と復興(h25~h27)

複合共同研究ユニット
代表: 西 芳実(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員: 西 芳実(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、村上 勇介(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、山本 博之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
期間: 平成25年4月~平成28年3月(3年間)
目的:  災害や紛争は、個人や社会が直面する目前の差し迫った人道上の危機であり、直接被害を受けていない地域を含む外部社会から解決のための働きかけが行われる。また、災害や紛争の被害はしばしば複合的な形であらわれるため、要因の究明や対応にあたっては、多様な専門性が求められる。このような意味で、災害や紛争に対応する現場は文化的背景や専門の異なる人々が協業する場となっている。
 本プロジェクトでは、以上のことを念頭に置きながら、紛争・災害への早期対応や復興過程における社会の再編について、実務者や現地社会との連携を視野に入れながら研究を行う。とりわけ、災害や紛争の現場となっている地域社会に関する地域研究の知見を踏まえることで、業種や専門性、地域を越えて理解される情報や技術を提供する方法を検討する。
研究実施状況: -平成25年度-
 地域研の地域情報学プロジェクトとの共同により、インドネシアの事例を中心とする「災害と社会 地域情報マッピングシステム」ならびにラテンアメリカの事例を中心とする社会紛争データベースとそれに基づく社会紛争マッピングシステムの開発を順次進めた。
 また、地域研の「災害対応の地域研究」プロジェクトとの共同により、地域研究と地域情報学の知見を活用して、突発的に発生する自然災害や紛争への対応を通じて社会が平時から潜在的に抱える社会問題に対応することをめざす新しい地域研究のあり方を示すための商業出版の企画を検討した。

-平成26年度-
①京大地域研の地域情報学プロジェクトとの共同により、インドネシアの事例を中心とする「災害と社会 地域情報マッピングシステム」ならびにラテンアメリカの事例を中心とする社会紛争データベースとそれに基づく社会紛争マッピングシステムの開発を順次進めた。
②京大地域研の「災害対応の地域研究」プロジェクトとの共同により、東南アジア諸国における紛争や災害からの復興の事例を広義の災害対応と捉えなおしたうえで、地域社会の外部の関与者が当事者としてどのような役割を果たしうるかを検討し、その成果を商業出版として発表した。
③紛争や災害により断絶しがちな地域社会のアイデンティティの再編を助けるための個人端末ツールとして、国立情報学研究所北本朝陽研究室との共同により、スマホアプリ「アチェ津波被災地メモハン」を制作した。

-平成27年度-
①京大地域研の地域情報学プロジェクトとの共同により、インドネシアの事例を中心とする「災害と社会 地域情報マッピングシステム」ならびにラテンアメリカの事例を中心とする社会紛争データベースとそれに基づく社会紛争マッピングシステムの開発を順次進めた。
②京大地域研の「災害対応の地域研究」プロジェクトとの共同により、原発事故・産業事故への対応や戦争・革命・政変などの急激な社会変動に対する社会の反応も含めて「災害対応」と捉えて社会のレジリエンスを検討した。また、日本の災害復興の事例と世界の災害復興の事例を比較し、両者を架橋する手法を検討した。
③JSPS拠点形成事業「アジアの防災コミュニティ形成のための研究者・実務者・情報の統合型ネットワーク拠点」と連携して、インドネシア、フィリピン、マレーシア、日本の災害対応研究と実践を共有する国際セミナーを2回実施した。また、インドネシア、フィリピン、マレーシアの若手研究者を対象に日本の防災実践を伝えるフィールド研修を日本国内3か所で実施し、文化社会背景の異なる国で災害対応の実践を共有する方法を検討した。
研究成果の概要: -平成25年度-
 上記のデータベース等の開発を進める過程で、防災・人道支援・国際協力等の実務家が地域研究者により収集・分析された地域情報を活用する上での課題が整理された。地域研究者が収集する情報は多様な関心にもとづいており、また、情報の形態も、地図、写真、証言、新聞記事、論文、フィールドノート、映像等多岐にわたる。これらの情報を整理する上では、目的に応じて①特定のテーマや関心に基づき研究者が作成する個別のデータベース、②複数のデータベースを互いに繋ぎ合わせ、データを重ねて分析するための地域研究基礎データベース、③専門知識がなくても一目で全体の様子が捉えられ、個別の情報にアクセスできるデザインを持った一般向けデータベースの三つの層に分けてそれぞれ検討・開発する必要がある。
 この知見を踏まえて、今年度は出版2点、ウェブ公開3点の成果が得られた。

-平成26年度-
 上記のデータベース等の開発を進める過程で、防災・人道支援・国際協力等の実務家が地域研究者により収集・分析された地域情報を活用する上での課題が整理された。多様な情報を一元的に保存・表示する総合的なデジタル・アーカイブのほかに、利用者や利用目的に即して用途と情報の種類と量を限定したスマホ・アプリの必要性が確認され、スマホアプリの公開に至った(ウェブ公開①②)。 また、地域と時代を越えて紛争や災害からの復興の経験を共有するための方法を検討した。東南アジアについて復興における外来者の役割を検討し、また、アジアについて複数地域間における災いの記憶・記録を検討し、その成果を出版①②によりまとめた。

-平成27年度-
①上記のデータベース等の開発を進める過程で、特定地域や特定テーマについてオンライン記事情報を自動収集・自動分類する個人向けメールアラート・システム「BeritaKU」を開発し、インドネシア(3紙)、マレーシア(4紙)、フィリピン(2紙)、ベトナム(2紙)についてオンライン記事の自動収集を開始した。
②上記の②について、それぞれの成果を地域研叢書シリーズ「災害対応の地域研究」第四巻、第五巻として商業出版した(出版〔1〕〔2〕)。また、その過程で、高校生・大学生を対象にした災害地域情報の読み解きのためのガイドブックを地域研ブックレット「情報とフィールド科学」第四巻として商業出版した(出版〔3〕)。
③インドネシア、フィリピン、マレーシアとの国際セミナーならびにフィールド研修を通じて、(1)日常的に繰り返し発生する「小さな災害」と大規模な被害を伴い社会全体で中長期にわたる対応が必要な「大きな災害」を区別すること、(2)災害対応を検討する上で社会の流動性の高さを留意することの重要性、(3)日本を含めた4か国で共有可能な災害としての水害、という3つの知見を共有した。
公表実績: -平成25年度-
(1)出版
 京都大学学術出版会から「災害対応の地域研究」シリーズの刊行が開始され、下記2点が出版された。
 ①山本博之『復興の文化空間学:ビッグデータと人道支援の時代』(京都大学学術出版会、2013年)
 ②西芳実『災害復興で内戦を乗り越える:スマトラ島沖地震・津波とアチェ紛争』(京都大学学術出版会、2013年)
(2)ウェブ公開(データベース等)
 ①「アチェ津波アーカイブ」(2013年12月公開) http://aceh.mapping.jp/
 ②「アチェ津波モバイル博物館」(基盤地図改訂版、2014年3月更新) http://disaster.net.cias.kyoto-u.ac.jp/Aceh/
 ③「災害と社会 地域情報マッピングシステム」(基盤地図改訂版、2014年3月更新) http://disaster.net.cias.kyoto-u.ac.jp/Indonesia/
(3)新聞掲載
 朝日新聞「アチェの津波被害、モバイルで継承 京大「博物館」公開」(アチェ津波モバイル博物館について 2013年9月28日掲載
)  毎日新聞「スマトラ沖大地震:首都大、学生らサイト公開 津波被害と復興、デジタル地図で」(アチェ津波アーカイブについて、2013年12月27日掲載)

-平成26年度-
【出版】
・牧紀男・山本博之編『国際協力と防災―つくる・よりそう・きたえる』(京都大学学術出版会、2015年)
・貴志俊彦・山本博之・西芳実・谷川竜一『記憶と忘却のアジア』(青弓社、2015年) 【ウェブ公開(データベース等)】
・スマホアプリ「アチェ津波モバイル博物館」 http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/~yama/bosai/app_atmm.html
・スマホアプリ「アチェ津波被災地メモハン」 http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/~yama/bosai/app_memohunt.html
【公開シンポジウム】
・公開研究会「アジアの防災と国際協力―抵抗力をつくる・回復力に寄り添う」(2014 年12月10日)
・京都=アチェ国際ワークショップ「スマトラ大津波から10年:情報コミュニケーション技術を活用した防災実践と展望」(2015年3月21日、京都大学)
【新聞掲載】
・日本語紙12件、インドネシア語9件、英語紙1件、テレビ1件
・2014年12月14日日本経済新聞「スマトラ沖地震の津波 被害・復興記録アプリで閲覧」
・2014年12月16日京都新聞「スマトラ津波復興アプリに 「震災被災地でも活用を」 京大准教授開発 街並み写真や証言写真」
・2014年12月25日NHKニュースおはよう日本「インド洋大津波の記憶伝えるアプリ 京大開発」
・2014年12月27日朝日新聞(天声人語)天声人語「津波の記憶をとどめる」
・2015年1月12日Kompasテクノ面「日本の研究者がアチェの津波に関するアンドロイド・アプリを制作」(Doktor Jepang Ciptakan Aplikasi Android "Tsunami Aceh)
・2015年1月31日朝日新聞「インド洋大地震・津波から10年 現地で薄れる防災意識」

-平成27年度-
【出版】
〔1〕清水展・木村展『新しい人間、新しい社会―復興の物語を再創造する』(災害対応の地域研究5、京都大学学術出版会、2015年)
〔2〕川喜田敦子・西芳実『歴史としてのレジリエンス―戦争・独立・災害』(災害対応の地域研究4、京都大学学術出版会、2016年)
〔3〕西芳実『被災地に寄り添う社会調査』(情報とフィールド科学4、京都大学学術出版会、2016年)
【システム開発】
・BeritaKU(東南アジア現地語オンライン記事自動収集・分類・アラートシステム)
【公開セミナー】
・International Workshop "Toward Building Regional Platform for Disaster Risk Reduction in Asia"(2015年12月15-16日、京都大学稲盛財団記念館)
・International Conference-Workshop on Toward Building a Regional Platform for Disaster Risk Reduction in Asia(2016年3月2-3日、アテネオデマニラ大学)
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成25年度-
 各個別ユニットの研究課題を踏まえて、災害対応・紛争対応の実務の分野で地域研究者の知見が効果的に活用されるための手法について検討する研究会を組織する。また、防災・人道支援・地域研究・報道の各分野の専門家の知見を取り入れた災害対応の取り組みとその意義をまとめ、ディスカッションペーパーの刊行等を通じて公開する。

-平成26年度-
 複数地域間で紛争・災害からの復興の経験を共有するための枠組みを引き続き検討する。また、災害対応・紛争対応の実務の分野で地域研究者の知見が効果的に活用されるための手法について検討する研究会を組織する。防災・人道支援・地域研究・報道の各分野の専門家の知見を取り入れた災害対応の取り組みとその意義をまとめ、ディスカッションペーパーの刊行等を通じて公開する。

-平成27年度-
 複数地域間で紛争・災害からの復興の経験を共有するための枠組みを引き続き検討する。また、災害対応・紛争対応の実務の分野で地域研究者の知見が効果的に活用されるための手法について検討する研究会を組織する。防災・人道支援・地域研究・報道の各分野の専門家の知見を取り入れた災害対応の取り組みとその意義をまとめ、ディスカッションペーパーの刊行等を通じて公開する。 また、戦争や災害などの災厄からの立ち直りについて文化社会的背景の相違を踏まえて高校生を読者対象に構成した『災厄からの立ち直り』(仮)を2016年度中に商業出版する予定である。