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地域情報学プロジェクト

書誌情報データベースの地域情報学的新展開を探る(h25~h26)

個別共同研究ユニット
代表: 帯谷 知可(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員: 帯谷 知可(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、柴山 守(京都大学国際交流推進機構・研究員/地域研究統合情報センター・特任教授)、坪井 祐司(東洋文庫・研究員)、兎内 勇津流(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター・准教授)、原 正一郎(京都大学地域研究統合情報センター・教授)、藤本 透子(国立民族学博物館民族文化研究部・助教)
期間: 平成25年4月~平成27年3月(2年間)
目的:  本研究は、京都大学地域研究統合情報センター(以下、CIAS)においてデータベース整備が進められているCIAS所蔵資料「石井米雄京都大学名誉教授蔵書コレクション」(以下、「石井コレクション」)および「トルキスタン集成」を主たる素材として、基本的には書誌情報に基いて構築されるようなコレクション・データベースを、図書館的な書誌情報検索にとどまらない新しい形へ、地域情報学の最先端の議論やツール開発などとも連携しながら、地域研究に携わる者が積極的に関わることによって、より地域研究にとって意味のある形へと展開させていく方向性を探ることを目的とした。さらに、これら2つのコレクション個々のデータベース化の成果を取りこみつつ、地域情報学的な書誌情報データベース構築の手法のひとつとして一般化することも視野に入れた。
研究実施状況: -平成25年度-
 2013年度は、「石井コレクション」データベース構築および「トルキスタン集成」データベースリニューアル版構築の進捗状況や手法を共有・確認しつつ、双方のデータベース構築担当者が話題提供し、ブレーンストーミング的なディスカッションを行う研究会を2回開催した。また、研究会での議論を受けて、「トルキスタン集成」データベースにおける全文検索機能付与の可能性を探るため、既存の多言語対応OCRソフトによって、旧正書法で書かれ、場合によっては活字の極めて見にくいロシア語がどの程度読み取り可能かの実験を行った。
 研究会の詳細は以下の通り。
【第1回研究会】(2013年11月28日、京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室)
報告:帯谷知可「『トルキスタン集成』DB構築の進捗状況について」
柴山守「『トルキスタン集成』目録の語彙分析」
【第2回研究会】(2014年3月14日、京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室)
報告:帯谷知可「『トルキスタン集成』の全体像の提示に向けて――書誌情報整備の完了にあたって」

-平成26年度-
 2014年度は、2014年3月に公開された「石井コレクション」データベースの事例を参照しながら、2013年度に書誌情報整備をおおむね終了した「トルキスタン集成」データベースのリニューアルについて具体的検討を進める形で活動を行った。CIAS内で地域情報学プロジェクトとも連携して随時研究打ち合わせを行ったほか、以下の通り研究会を2回開催した(うち第2回研究会は本個別ユニットの2年間の活動のとりまとめとして開催)。また、以下「6.研究成果の概要」「7.本研究課題に関連した公表実績」で具体的に示すように、ディスカッション・ペーパーの刊行ならびにCIAS地域情報学プロジェクトとの連携のもと「トルキスタン集成」データベース・リニューアル版の作成を行った。
【第1回研究会(2014年7月29日、CIASセミナー室)】
報告:帯谷知可「トルキスタン集成の分類カテゴリーの統一について」
同「トルキスタン集成DBリニューアルに向けて」
ディスカッション
【第2回研究会(2015年2月12日、拡大研究会、CIASセミナー室)】
「書誌情報データベースの新しい形を模索する―『石井米雄コレクション』と『トルキスタン集成』の事例から」(CIAS地域情報学プロジェクト研究会「データの可視化と問題発見」と合同開催)
報告:帯谷知可「書誌情報データベースの可能性を探る―『石井米雄コレクション』と『トルキスタン集成』の事例から」
亀田尭宙(CIAS)「外の知識から見た『トルキスタン集成』」
ディスカッション
研究成果の概要: -平成25年度-
 研究会においては、先行する「石井コレクション」データベース構築の事例をもとに、書誌情報とキーワードで構成される語彙体系で意味空間を考えるためのしくみ、そのための語彙分析の重要性、時空間データの可視化事例などについて議論が行われ、「トルキスタン集成」の事例ではそれらは意味を持つか、持つとすればそれらをどのような形で適用すべきかを検討した。特に問題となるのは、「石井コレクション」の例ではこのコレクションに地域研究の観点からもフィットするキーワード群として既存のある図書分類カテゴリーをそのまま利用することが可能であったが、「トルキスタン集成」の場合にはいくつかのキーワード群が錯綜しているという点であり、その整理が重要課題であるとの認識に至った。
 各々のデータベース構築の成果としては、「石井コレクション」データベースは「血の通った」検索が可能なバーチャル図書館として2013年度中に公開された。「トルキスタン集成」については、CIAS地域情報学プロジェクトとの協力のもと、懸案であった書誌情報整理を終了し、これまで存在しなかった同集成全594巻すべてをカバーする別冊の巻別目次『「トルキスタン集成」全594巻巻別インデクス』(CD)を作成した。これによって「石井コレクション」データベースを参照しつつ、書誌情報をベースとした地域情報学データベースの2例目として次のステップを検討するための準備ができた。

-平成26年度-
 2年間の活動によって、本研究では地域情報学の進展をふまえた新しい形の書誌情報データベースの方向性に関連して、以下の知見を得た。
(1)地域研究にとって重要な資料コレクションのデータベース化を前提とするなら、そこに含まれる個々のコンテンツの重要性に加えて、さまざまなキーワードの連鎖や連関(キーワード・ループ)によって検索を行いつつ、コレクションの中を探索することは、そのコレクションが内包する意味世界を探索することにつながり、単なる書誌情報検索を越えて、そのコレクションをめぐって地域研究にとって意味のある発見ができる可能性がある。
(2)そのためにはまず書誌情報の整理が必要であり、さらにそのコレクションに見合ったキーワード群を設定することが重要である。
(3)キーワード群の設定のためには、そのコレクションに見合った分類カテゴリーの導入と、書誌タイトル等の語彙分析を組み合わせる方法がさしあたり有効であると考えられる。このキーワード群の設定のしかたが地域研究者と情報学研究者とのコラボレーションの見せどころである。
(4)書誌情報に時空間情報(出版地・出版年や何らかの事柄の生起した場所・年月日など)を加えておくことで地域情報学的なツールを応用した分析が可能となり、コレクションの多角的把握のためにも有益である。
 このような方向性は、「石井コレクション」データベースならびに「トルキスタン集成」データベースの構築過程で地域研究者と情報学研究者が協働するなかで、さまざまな試行錯誤とフィードバックから得られたものである。「石井コレクション」データベースは、石井米雄氏の書斎を再現したバーチャル書架を準備し、ツリー構造によって示されるオントロジー的なキーワード連鎖(書誌タイトルの語彙分析と図書分類カテゴリーの導入によってキーワード群が形成されている)によって、バーチャル書架とキーワードの間を行き来しながら書誌情報検索を行うバーチャル図書館として構築されている。DVDによりスタンド・アロンでも検索を可能にしたという特徴を持つ。一方、「トルキスタン集成」データベースは、①巻別検索、②キーワード検索、③時空間情報の利用、④参加型の試み、の4つの選択肢をもつものとしてリニューアル版の構想を固めた。①はこれまで存在しなかった、全巻を通じた書誌情報の整備・統合を実現させたもの、②は同データベース試行版をもとにした従来型のキーワード入力検索に加えて、キーワード連鎖(書誌タイトルの語彙分析と「トルキスタン集成」編纂当時のテーマ分類の適用によって主たるキーワード群を形成することを想定)による検索手法を検討したもの、③は時空間情報からコレクションを多角的に分析しようとする試み、④は現代の視点からコレクションを見直す試みである。「トルキスタン集成」データベースでは書誌検索の後、さらにPC上で資料PDFの閲覧が可能である(京都大学内限定)。リニューアル版は2015年度に公開し、順次機能を追加していく予定である。
 また、本研究の成果の一環として、2015年2月12日の拡大研究会の記録という形でディスカッション・ペーパー1点(帯谷知可編『書誌情報データベースの地域情報学的新展開を探る』(CIAS Discussion Paper No. 51)、京都大学地域研究統合情報センター、2015.)を刊行した。
公表実績: -平成25年度-
【出版】
・Tsuboi, Yuji, “Muslims under dual jurisdictions: The Nadrah issue form the perspective of Qalam,” Dari Warisan ke Wawasan, 1: 60-80, 2013.
・Hara, Shoichiro, “Applying Topic Maps to SNA for Thailand healthcare activities,” PNC 2013 Annual Conference and Joint Meetings Abstract and Program Book, p.107, 2013.
・原正一郎(内藤求と共著)「TOPIC MAPSを利用したマンガ情報の組織化」『情報処理学会 人文科学とコンピュータ(CH)研究報告、2014-CH-101』、pp.1-8、2014年。
【報告】
・柴山守「データでみる石井米雄先生―〈ひと〉と〈研究〉」公開ワークショップ「地域研究スピリッツ―石井米雄を語る―」(2014年3 月8日、京都大学稲盛財団記念館)。
・Hara, Shoichiro, “How do we organize classical resources into contemporary digital materials?,” Symposium “From Tradition to Vision: Seminar and Launching of QALAM Digital Publications” (Organized by Klasika Media-Akademi Jawi Malaysia, 2013.09.11, Kuala Lumpur, Malaysia).
・Hara, Shoichiro, “Selected Databases Systems that Indicate Community-wide Data of Diverse Aspects of the Life and Human Conditions that Affect Health: Data Integration of RECAP and TCNAP and their applications using GIS and Topic Maps, “ Workshop “Community Data Base System Enhancing Policy Making for Community-based Initiatives in Health Promotion,”in IUHPE 21st World Congress on Health Promotion,” (Organized by IUHPE, 2013.08.25-29, Pattaya, Thailand).
・Hara, Shoichiro,“Development of Digital Gazetteer Using Semantic Web Technologies - A Case Study for "Knowledge of Areas,” PNC 2013 Annual Conference and Joint Meetings (2013.12.10, Kyoto University).
【電子媒体】
・帯谷知可監修『「トルキスタン集成」全594巻巻別インデクス』(CD)(CIAS Discussion Paper No. 44)、2014年。
【データベース構築・公開】
・柴山守 「石井米雄コレクション」DB
【その他】
・帯谷知可 「トルキスタン集成」DBに関するポスター展示、Pre-Session, PNC 2013 Annual Conference and Joint Meetings (2013.12.9, Kyoto University)

-平成26年度-
【出版】
・帯谷知可編『書誌情報データベースの地域情報学的新展開を探る』(CIAS Discussion Paper No. 51)、京都大学地域研究統合情報センター、2015.
・帯谷知可「書誌情報データベースの可能性を探る―『石井米雄コレクション』と『トルキスタン集成』の事例から」帯谷編『書誌情報データベースの地域情報学的新展開を探る』(CIAS Discussion Paper No. 51)、京都大学地域研究統合情報センター、2015、pp. 6-13.
・柴山守「『石井米雄コレクション』データベースの基本コンセプト・構造の提示とその『トルキスタン集成』データベースへの応用」帯谷編『書誌情報データベースの地域情報学的新展開を探る』(CIAS Discussion Paper No. 51)、京都大学地域研究統合情報センター、2015、pp. 30-36.
・柴山 守「地域情報学-地域分析への新たな挑戦」『21世紀の東南アジア研究―地球社会への発信』(京都大学東南アジア研究所50周年記念誌)京都大学東南アジア研究所、2015、pp.112-114.
・Shibayama Mamoru, The East-West Cultural Corridor -Medieval Communication Network in Mainland Southeast Asia (Progress Report, No.1/2014), National Research Council of Thailand, 108 p., 2014.
・Shibayama Mamoru, “An Examination of the East-West Cultural Corridor,” SPAFA Journal, SEAMEO SPAFA, 2014.
・Shibayama Mamoru, “The East-West Cultural Corridor between Myanmar and Thailand,” Proceedings of ANGIS and CRMA Bangkok Meeting 2015 (The Princess Maha Chakri Sirindhorn Anthropology Centre, Bangkok, Thailand, 5-6th, January 2015).
・坪井祐司「宗教の制度化、民族の制度化―1950年代前半のマラヤ政治と『カラム』の戦略」『マレーシア研究』3: 29-46、2014.
藤本透子(宇山智彦と共編著)『カザフスタンを知るための60章』明石書店、2015.
【口頭報告】
・帯谷知可「中央アジア関連資料収集の展望―ウズベキスタンを中心に」(国立国会図書館関西館説明聴取会、2015年3月5日)
・Shibayama Mamoru, “Interdisciplinary Research and Area Studies on Sustainable Development." (Keynote Lecture, International Conference on Interdisciplinary Research and Studies on Sustainable Development 2014, Kamphaeng Phet Rajabhat University in Collaboration with the Graduate Northern Rajabhat University Network (GNRU), Kamphaeng Phet Rajabhat University, August 5, 2014.)
・柴山守「石井米雄コレクションにおけるバーチャル図書館機能と閲覧ナビゲータによる情報探索」(第181回KU-librarians研究会報告、京都大学附属図書館、2014年8月26日).
・Tsuboi Yuji, “World view of Malay Muslim intellectuals during the 1950s’.” (The 9th International Malaysian Studies Conference, August 19, 2014.)
【データベース】
・「石井米雄コレクション」データベース(2014年3月公開) http://app.cias.kyoto-u.ac.jp/archives/supsearch/G0000004collection-default
・「トルキスタン集成」データベース(リニューアル版)(2014年度作成、2015年度公開予定)
・「東南アジア地域研究史資料集成データベース」 http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/database/#cat2
(1) 図書・雑誌など文献・資料(約1,300点)および (2) フィールド記録写真画像(約8,000点)は「道は、ひらける-石井米雄と東南アジア研究」から閲覧できる。(3) 19世紀バンコク水路・灌漑・家屋配置資料(約8,000点)および (4) ハノイ遺蹟拓本資料(約2,500点)は平成27年3月末現在公開準備中。
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成25年度-
 平成26年度は、「石井コレクション」DB構築の経験を活かしつつ、「トルキスタン集成」DBリニューアル版の構築準備(分類カテゴリーの整理、語彙分析、時空間情報の整備、また現行の「トルキスタン集成」DBにすべての資料画像を付け書誌情報検索・資料閲覧DBとして完成させることなど)を進め、さらに本個別ユニットの最終年度となることから、とりまとめとして、双方のDB構築の経験を、地域情報学の書誌情報データベースの新形態として一般化・理論化することをめざしたい。
 具体的な活動としては、研究会を2回開催し、研究成果をディスカッション・ペーパー等の形で刊行することを予定する。

-平成26年度-
(1)データベースの進化: 書誌情報データベースとしての進化形を反映させるべく、「石井コレクション」「トルキスタン集成」両データベースについては本研究期間中にできた部分から公開しながら、機能の追加やデザインの変更等によって、CIAS地域情報学プロジェクトと協力してさらなる進化形を模索していく。例えば具体的には、キーワードの表示法として、設定するキーワード数に限定のないハイパーボリック・ツリーを採用する、あるいはバーチャル本棚として動く本棚、取り出せる本といった形を採用する可能性などが考えられる。
(2)「トルキスタン集成」データベースのリニューアル版が公開となった後、両データベース構築の経験をとりまとめ、学会等で報告するとともに、雑誌『地域研究』の特集等の形で活字にする。
(3)キーワード・ループを用いた検索方法を、必ずしも書誌情報ベースではないが、地域研究のために意味のあるコレクションのデータベース(写真や新聞記事など)に応用する可能性も検討できるかもしれない。