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地域情報学プロジェクト

非文字資料の共有化と研究利用(h25~h27)

複合共同研究ユニット
代表: 貴志 俊彦(京都大学地域研究統合情報センター)
共同研究員: 石川 禎浩(京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター・教授)、小野寺 史郎(埼玉大学教養学部・准教授)、川島  真(東京大学大学院総合文化研究科・准教授)、貴志 俊彦(京都大学地域研究統合情報センター・教授)、呉 孟晋(京都国立博物館学芸部・研究員)、小林聡明(慶煕大学哲学科・専任教員)、白山 眞理(日本カメラ博物館・運営委員)、孫 安石(神奈川大学外国語学部・教授)、瀧下 彩子(東洋文庫・研究員)、武田 雅哉(北海道大学大学院文学研究科文学部・教授)、田島 奈都子(青梅市立美術館・学芸員)、谷川 竜一(京都大学地域研究統合情報センター・助教)、陳 來幸(兵庫県立大学経済学部・教授)、丸田 孝志(広島大学大学院総合科学研究科・教授)
期間: 平成25年4月~平成28年3月(3年間)
目的:  非文字資料は、地域や歴史の記憶としてだけでなく、人々の集合的記憶を反映させており、近年その学術利用の価値が再認識されている。本プロジェクトは、歴史学、美学、カルチュラル・スタディーズ、表象文化論、メディア論などのディシプリンを連携させて、地域研究における非文字資料の研究や解釈の方法について共同討議することを目的とする。この複合プロジェクトでは、東アジアを事例としつつも、その他の地域との比較検討を進めている。
なお、本プロジェクトで、非文字資料の表現手段やその効果が、特定の政策や機構、メディアやテクノロジーによって規定されるだけでなく、その底流には、人びとのアイデンティティや集合的記憶、国家観や時代認識など、さまざまなファクターが深くかかわってきたことに留意したい。こうした観点から、非文字資料の解釈や分析の方法論について検討を加えるとともに、非文字資料共有化の枠組みについても討議を進めたいと考えている。
研究実施状況: -平成25年度-
①非文字資料の研究利用方法を共同討議
 各個別研究ユニット「写真雑誌に見る第二次世界大戦期の記憶とジェンダー・エスニシティの表象分析」、「20世紀前半のサハリン島に関する歴史的記憶」、「集合的記憶と中東欧地域の音楽:比較研究に向けてのデータベース構築」との連携を強化し、合同で学術カンファレンスを主催した。
②非文字資料の共有化の試みを公開
 公益財団法人東洋文庫等との連携により、戦前の写真、写真帳、画報類のウェブ・アーカイブを公開した。
③機関とデジタル・アーカイブの研究連携を協議
 非文字資料データベースの連携(統合)を進めるため、京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター、米国ラファイエット大学等との協議を開始した。手始めに、人文研所蔵の華北交通写真2レーン分をデジタル化し、これらを共有する方法について共同討議をおこなった。

-平成26年度-
(1) 非文字資料の研究利用方法を共同討議
・個別研究ユニット「写真雑誌に見る第二次世界大戦期の記憶とジェンダー・エスニシティの表象分析」との共同で、2015年3月15日、広島で公開シンポジウムを開催した。
・個別研究ユニット「20世紀前半のサハリン島に関する歴史的記憶」と共同で、9月3日~10日ロシアサハリン州で、現地研究者と学術交流を進めるとともに、初歩的ながら図画像資料を用いたフィールドワークを実践した。
・京都大学人文科学研究所所蔵の「華北交通写真群」の写真資料の本年度課題分のデジタル化を実施し、メンバー内ではあるが、すべてのデジタル化写真の共有をはかった。
(2) 非文字資料の共有化の試みを公開
公益財団法人東洋文庫等との連携により、戦前の写真、写真帳、画報類のウェブ・アーカイブを公開した。本年度は、下記の成果のとおり、雑誌『北支』および写真帳『亜細亜大観』のデータベースを構築し、公開した。
(3)機関とデジタル・アーカイブの研究連携を協議
非文字資料データベースの連携(統合)を進めるため、ラファイエット大学から来訪した2名の研究者とともに、統合システムの方法について共同討議するとともに、今後の協力が約束された。

-平成27年度-
 本年度は、これまで共同で調査、研究してきた京都大学人文科学研究所所蔵の華北交通写真および神戸中華同文学校の行事資料を中心として、具体的な成果のまとめを進めた。
 前者については、2015年12月20日、京都大学人文科学研究所で「華北交通写真協議会」を開催し、12名が報告をおこなった。とくに、西村陽子氏(花園大学)は「華北交通写真データベース:仕様と実装」と題して、構築中のデータベースを披露して注目を集めた。また、2016年2月23日には、石川県政記念しいのき迎賓館にて「東亜学術論壇2016―交錯する東アジア像」と題するワークショップを開催し、華北交通写真の学術利用を含め、非文字資料の超域研究の可能性についての議論を進めた。
 後者については、2016年1月28日から4月9日まで、神戸華僑歴史博物館で「春節祭特別展:神戸華僑の戦後70年~神戸中華同文学校の行事写真を中心に~」を開催した。デジタル化された史資料の社会還元を試みるひとつの模索であったが、2016年2月1日付『毎日新聞』にとりあげられるなど、強い関心が寄せられた。
 その他、昨年度まで進めていた音資料の国際研究成果として、貴志俊彦・川島真・孫安石編著『増補改訂 戦争・ラジオ・記憶』(勉誠出版、2015年8月、総632ページ)の編集、刊行をおこなった。
研究成果の概要: -平成25年度-
①非文字資料の研究利用の試み
 各個別研究ユニット等との共同討議により、第二次世界大戦、つづく冷戦の時代に用いられたビジュアル・メディアの共通点に留意することが必要であることが確認されるとともに、報道、広報、宣伝、プロパガンダの各機能の選別の方法を明らかにすること、ビラ、画報、写真、イラスト、漫画などのメディア媒体のメソッドの相互影響について分析する必要があることで共通認識が得られた。とりわけ、こうした非文字資料分析にはジェンダー的視点が不可欠であること、戦争の時代に顕在化するジェンダー問題は現代にも引き継がれていることに留意すべきことが確認された。
②非文字資料の研究利用の試み
 公開が滞っていた非文字資料を公開するためには、資料の内容を実見し、所蔵先と利用者がデジタル化作業の意義についての共同認識をもつ必要がある。幸いにもプロジェクト初年度は、公益財団法人東洋文庫との連携が実現し、共同で非文字資料のデジタル・アーカイブを構築することができた。ただ、横断検索、地理上へのプロット方法、類似画像の検索方法、画像分析の方法など、非文字資料のタグ付けや分類など、残された課題も少なくない。これらの課題は、次年度以降に持ち越された。

-平成26年度-
・2015年3月15日に広島で、同月17日に京都で共同研究の途中経過の成果報告をおこなった。多くの参加者からは、原爆や戦争をめぐる記録の重要性とともに、それらの記憶化を継続させるためのメソッドづくりの重要性が指摘された。その両面から、渡邉英徳氏が開発されたヒロシマ・アーカイブ、ナガサキ・アーカイブには強い関心が寄せられた。
・出版物としては、非文字資料研究(画像、写真、音声等)をめぐる3冊の研究成果を刊行した(以下、下記7参照)。白山眞理の『〈報道写真〉と戦争』は、名取洋之助・木村伊兵衛・土門拳ら報道写真家たちの実像に迫り、日本の報道写真(ルポルタージュ・フォト)がどのように生まれ、それらがいかに戦争と関わったのかついて読み解く。貴志俊彦『日中間海底ケーブルの戦後史』は、残された文字記録と、音声による記憶との相互補完性について検証するために、1976年日中間海底ケーブル建設事業をトピックとして取り上げた。貴志俊彦・山本博之・西芳実・谷川竜一編『記憶と忘却のアジア』のうち、坂部、泉水、貴志各論考は、満洲、沖縄、華北の記憶化の定位過程と同時に、忘却過程を重視し、記録の両面性について喚起する。
・公益財団法人東洋文庫との共同作業により、雑誌『北支』全ページ画像データベース(2014年4月7日公開)及び写真帳『亜細亜大観』データベース(2015年3月31日公開)を構築した。この2つのデータベースにより、グラフ雑誌や写真帳の公開の2つのモデルを提示できたと考える。同時に、異なったアプリケーションを利用した図画像データベースを統合化する方法が課題として浮かび上がった。

-平成27年度-
(1) 貴志俊彦・白山眞理編『京都大学人文科学研究所所蔵華北交通写真集成(仮)』(国書刊行会、2016年10月刊行予定)
第1冊
=総論=
貴志俊彦(京都大学)「華北交通株式会社とその弘報戦略」
白山眞理(日本カメラ博物館)「華北交通写真の分類と利用」
=各論報告=
富澤芳亜(島根大学)「華北交通と占領地の鉱工業」
萩原 充(釧路公立大学)「華北交通株式会社による新規鉄道建設」
山本一生(東京大学)「北支占領地の学校教育が写真で記録されることの意味―『北支』と「華北交通写真」との比較を通して」
菊地 暁(京都大学)「華北交通写真と民俗表象」
向井佑介(京都府立大学)「華北交通写真にみる日中戦争期の史跡調査」
梅村 卓(明治学院大学)「中国共産党の華北イメージ―『晋察冀画報』を中心に」
太田 出(広島大学) 「宣撫官と愛路運動」
瀧下彩子(東洋文庫)「華北交通写真に見る戦前期観光業」
第2冊
第1部「引き伸ばし写真(分類写真)」(担当:白山眞理、竹中朗)
第2部「軍報道課(部)検閲済印付写真」(担当:貴志俊彦)
(2) 5.で触れたたように、2016年1月28日~4月9日、神戸中華同文学校、神戸中華同文学校校友会、神戸市、神戸新聞社、南京町商店街振興組合の後援を得て、神戸華僑歴史博物館で「春節祭特別展:神戸華僑の戦後70年~神戸中華同文学校の行事写真を中心に~」を開催した。展示資料は、神戸中華同文学校が所蔵する「学校行事写真」「学校通訊」を中心としたが、同校と神戸華僑とに関係する多彩な写真も展示され、関係者の注目を惹いた。
(3) 昨年度までの成果をもとに、貴志俊彦・川島真・孫安石編著『増補改訂 戦争・ラジオ・記憶』(勉誠出版、2015年8月、総632ページ)の編集作業を進め、刊行に至った。全体構成は、次のとおり。第1部:戦争とラジオ、第2部:ラジオと「帝国」、第3部:冷戦とラジオ、第4部:研究の新潮流、第5部:ラジオ研究著作シリーズ―自著・他著を語る、第6部:ラジオ研究のための文献・資料紹介、巻末資料。
公表実績: -平成25年度-
①個別研究ユニットとの学術討論会を合同開催
a) 「写真雑誌に見る第二次世界大戦期の記憶とジェンダー・エスニシティの表象分析」と:
2013年8月3日~4日、合同ワークショップ「戦争とジェンダー表象」(敬和学園大学尋真館、万代市民会館研修室)/2013年12月15日、シンポジウム「ビジュアル・メディアとジェンダー」(公益財団法人東洋文庫2F)/2014 年2月24日~25日、ワークショップ「戦争とジェンダー表象研究」(京都大CIASセミナー室)
b) 「20世紀前半のサハリン島に関する歴史的記憶」と:
2013年6月30日、合同ワークショップ「非文字資料研究の理論構築に向けての事例検討Ⅰ」(北海道大学・人文社会科学総合教育研究棟 W 308室)
c)「集合的記憶と中東欧地域の音楽:比較研究に向けてのデータベース構築」と:
2013年9月23日、合同ワークショップ「中央ヨーロッパ音楽の比較研究に向けて―集合的記憶としての国民音楽」(京都大学稲盛財団記念館3階 中会議室)
②(財)東洋文庫との連携によるウェブ・アーカイブの公開
a) 「柏原英一(1914~2009)写真帳」http://www.tbcas.jp/ja/lib/lib2/(2013年7月公開)
b) 「『亜東印画輯』データベース」http://www.tbcas.jp/ja/lib/lib3/(2014年3月公開)
c) 「華北交通広報雑誌『北支』データベース」http://124.33.215.236/research/hokushi/hokushi.php(2014年3月テスト版公開)
③ 他機関との研究連携の強化
2013年6月17日、ポール・バークレイー教授(米国ラファイエット大学)講演会を合同主催(学習院大学・文科省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業等との連携)

-平成26年度-
【出版】
・白山眞理『〈報道写真〉と戦争』(吉川弘文館、2014年、総513頁ページ)
・貴志俊彦『日中間海底ケーブルの戦後史――国交正常化と通信の再生』(吉川弘文館、2015年2月、総254ページ)
・貴志俊彦・山本博之・西芳実・谷川竜一編『記憶と忘却のアジア』(青弓社、2015年3月、総248ページ)
【公開シンポジウム等】
・2015年3月15日、Remapping Hiroshima: 「ヒロシマ」を(再マッピングする――核時代の到来・起点としての「ヒロシマ」――、広島市まちづくり市民交流プラザ 6階 マルチメディアスタジオ
・2015年3月17日、華北交通論集第1回協議会、京都大学人文科学研究所本館1Fセミナー室2
【データベース】
・雑誌『北支』全ページ画像データベース(2014年4月7日公開)(http://124.33.215.236/research/hokushi/hokushi.php
・写真帳『亜細亜大観』データベース(2015年3月31日公開)(http://www.tbcas.jp/ja/lib/lib4/

-平成27年度-
・『亜東印画輯』データ・データベースの横断検索システム及びマッピング・システムの開発(公益財団法人東洋文庫と合同事業)
・貴志俊彦・川島真・孫安石編著『増補改訂 戦争・ラジオ・記憶』(勉誠出版、2015年8月、総632頁)
・神戸華僑歴史博物館で「春節祭特別展:神戸華僑の戦後70年~神戸中華同文学校の行事写真を中心に~」を開催(2016年1月28日から4月9日まで)
・華北交通写真第2回協議会
日時:12月20日(日) 13:00~18:00
場所:京都大学地域研究統合情報センター2階 セミナー室
・公開ワークショップ「東亜学術論壇2016―交錯する東アジア像」
日時:2016年2月23日(火)13:00~19:00
場所:石川県政記念しいのき迎賓館のセミナールームB-1
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成25年度-
 本複合研究ユニットと、他機関、科研費プロジェクト等との連携、協力により、下記の活動を企画中である。
① 京都大学人文研現代中国地域研究センター、米国ラファイエット大学等との連携により、人文研所蔵の華北交通写真を用いた展示会の開催、出版物の刊行を準備するほか、非文字資料データベースの連携(統合)の実現に向けたプランを討議する。
② 神奈川大学、沖縄県立公文書館等との連携により、1950~70年代の琉球政府による広報写真(約4万点)、関連文書の収集・調査研究を進め、非文字資料リテラシーについて検討する。
③ 個別研究ユニット「写真雑誌に見る第二次世界大戦期の記憶とジェンダー・エスニシティの表象分析」との連携により、非文字資料の類似画像検索システム導入を検討する。
④ 個別研究ユニット「集合的記憶と中東欧地域の音楽:比較研究に向けてのデータベース構築」との連携により、音楽/音データベースの先行例を検討する。
個別研究ユニット「20世紀前半のサハリン島に関する歴史的記憶」、ボン大学アジア研究科との連携により、写真資料分析の方法論について検討

-平成26年度-
本年度は、京都大学人文科学研究所所蔵の「華北交通写真群」に特化させて、2016年秋の論文集刊行に向けて集中的に研究を進める予定である。そのための具体的な作業は、以下のとおりである。
① 整理カードに貼りつけた密着プリント・紙焼きプリンとネガとの
照合作業を実施し、ネガの状態をチェックし、それらの所蔵状況について、全般的な調査を実施する。
② 研究メンバーは、「華北交通写真群」から「企業」「鉄道」「鉱工業」「愛路運動・治安・宣撫」「弘報」「写真(家)」「考古・遺跡」「民俗」「教育」、それぞれのトピックを担当し、地域、時代として考証すべき写真を選択し、分析・考証する。
③ 戦時期発行の『晋察冀画報』(中国)、『Picture Post』(イギリス)などと比較検証する。
以上の成果を検討するために、2015年12月頃に公益財団法人東洋文庫会議室にて、華北交通論集第2回協議会を開催する。

-平成27年度-
・『亜細亜大観』等のデータ・データベースへの横断検索システム及びマッピング・システムの応用
・2016年9月に中国紹興市で開催計画中の東亜研究論檀2016-2において合同成果公表予定
・貴志俊彦・白山眞理編『京都大学人文科学研究所所蔵華北交通写真集成(仮)』(国書刊行会、2016年10月刊行予定)
・日本カメラ博物館で企画展「華北交通写真とその時代(仮)」の開催準備(2016年12月から1ヵ月間を予定)