1. ホーム
  2. 研究活動
  3. 過去の研究プロジェクト
  4. H25年度~H27年度の研究プロジェクト
  5. 相関地域研究プロジェクト
  6. 熱帯森林―都市関係の社会生態学的比較研究(h27)

相関地域研究プロジェクト

熱帯森林―都市関係の社会生態学的比較研究(h27)

個別共同研究ユニット
代表: 阿部 健一(総合地球環境学研究所・研究推進戦略センタ―・教授)
共同研究員: 阿部 健一(総合地球環境学研究所・研究推進戦略センタ―・教授) 笹岡 正俊(北海道大学大学院文学研究科・准教授)、小泉 都(元・京都大学農学研究科・元研究員)、渕上 ゆかり(大阪大学環境イノベーションデザインセンター・特任研究員)、嶋田 奈穂子(京都大学東南アジア研究所実践型地域研究推進室・連携研究員)、宮内 泰介(北海道大学文学研究科・教授)、de Jong, Wilhelmus Adrianus(京都大学・地域研究統合情報センター・教授)、木村 光伸(名古屋学院大学国際文化学部・教授)、石丸 香苗(岡山大学地域総合研究センター・准教授)、大橋 麻里子(一橋大学大学院社会学研究科・日本学術振興会特別研究員(PD))、竹内 潔(元・富山大学人文学部・元准教授)、山越 言(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授)、竹ノ下 祐二(中部学院大学子ども学部・準教授)、松浦 直毅(静岡県立大学国際関係学部・助教)、服部 志帆(天理大学国際学部・講師)、大石 高典(総合地球環境学研究所・プロジェクト研究員)
期間: 平成27年4月~平成28年3月(1年間)
目的:  本研究では、ヒトとモノの動態に焦点を置いて、主として、東南アジア、ラテンアメリカ、アフリカの熱帯森林と都市との関係を明らかにするものである。熱帯森林はすでに閉鎖的な人間-環境系ではなく、都市との間で、換金作物・野生獣肉・その他の森林産品と日用雑貨の物流がさかんにおこなわれており、また、相互に人が移住し、あるいは移住者の還流が生じている。現代の熱帯森林は、たんに「先住者」の生活世界であるだけでなく、都市住民にとっても、経済的貧困、人間関係の軋轢、内戦状況などの際の生活の選択肢として開かれたものとなっている。本研究は、都市と熱帯森林間のヒト・モノの動態について地域間の事例比較をおこなって、グローバリゼーションの中の「現代の熱帯森林」を具体的に浮き彫りにすることを目的とする。
研究実施状況:  研究会を3回開催し、1) 熱帯諸地域における森林と都市の関係について議論をおこない,2) ディスカッション・ペーパーの草稿の相互査読と討論をおこなった。1)では,コロンビア・アマゾンの集落間の関係やグローバルな政治経済動向が地域社会に及ぼしている影響についての事例をもとに討論をおこなった。また,「山村と都市が共生・共育するまち」を標榜している静岡市北部の中山間地において,地域振興の取り組みについて実地見学をおこなった。2)では,ディスカッション・ペーパーに載せる論考が相互に有機的な関係を持つよう草稿作成時及び各自の原稿完成後に,集中的な討論をおこなった。
研究成果の概要: 1) 都市社会学や都市人類学では,都市-農村の連続性が強調されてきたが,熱帯森林帯では,地域によって,ヒト,モノ,情報の流通が,森林-農村-都市の3層構造になっており,他の地域で都市が持っている流通の結節点の役割を農村が担っている。都市-熱帯森林の関係について地域間比較をおこなう際には,農村の役割に注目する必要がある。
2) 近年の熱帯森林諸地域では,都市から,ヒト,モノ,情報が流入し,また,森グローバルな価値観が地域社会に浸透していたり,外部アクターが地域のなかで重要な位置を占めるようになっており,従来の外部世界/森林,ローカル/グローバル,地域住民/外部アクターといった二項対立的な視点では捉えきれない多相的かつ重層的な状況が生起している。このような状況を理解する視座として,「地域社会」を「在来」の「地域住民」の社会としてではなく,「地域住民」内外の多様なアクターを包摂した動的なアリーナとして位置付け、その上で,アクター間の関係性や交渉の動態を分析し,解釈することが重要となる。また,そのような状況においては,研究者は,かつてよりも重要なアクターとして「地域社会」の動向やガバナンスに関与している。したがって,研究者も,調査や研究プロジェクトを通した自身と他のアクターとの交渉について自覚的な検討をおこなう必要がある。
公表実績:  CIAS ディスカッション・ペーパー 『森をめぐるコンソナンスとディソナンス-熱帯森林帯地域社会の比較研究 』 
研究成果公表計画
今後の展開等:
 上記のディスカッション・ペーパーの論考をもとにして,執筆者各自が先行研究を踏まえた論文を作成し,論集を刊行する予定である。