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相関地域研究プロジェクト

アフリカにおける地域植生と植物利用の持続可能性(h25~h26)

個別共同研究ユニット
代表: 山本 佳奈(京都大学学際融合教育研究推進センター総合地域研究ユニット臨地教育支援センター・特定助教)
共同研究員: 伊谷 樹一(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授)、伊藤 義将(京都大学アフリカ地域研究資料センター・特任助教)、大石 高典(総合地球環境学研究所・プロジェクト研究員)、大山 修一(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授)、木村 大治(京都大学アフリカ地域研究資料センター・教授)、桐越 仁美(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・博士課程)近藤 史(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・ 助教)、手代木 功基(総合地球環境学研究所・プロジェクト研究員)、友松 夕香(東京大学大学院農業生命科学研究科・博士後期課程)、原子 壮太(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・研究員)、平井 將公(京都大学アフリカ地域研究資料センター・研究員)、藤岡 悠一郎(近畿大学農学部農業生産科学科・博士研究員(PD))、藤田 知弘(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・学振研究員)、村尾 るみこ(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科・助教)、八塚 春名(日本大学 国際関係学部 国際教養学科・助教)、山越 言(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授)、山科 千里(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究資料センター・研究員)、 山本 佳奈(京都大学学際融合教育研究推進センター総合地域研究ユニット臨地教育支援センター・特定助教)
期間: 平成25年4月~平成27年3月(2年間)
目的:  政治経済のグローバル化や社会の流動化が進む現代のアフリカにおいて、地域の植生や植物などの自然環境資源は、昔と形を変えつつも、多くの人々の生活基盤となっている。グローバルな変動のなかで、人々の植物利用は画一化する方向に向かうのではなく、ローカルな固有性に根差した動きが多様化する傾向が見いだされる。そうしたなかで自然環境資源の持続可能性を検討するためには、グローバルな変動のなかで発現するローカリティに目を向けていく必要がある。本研究では、アフリカの地域社会でフィールドワークを行う複数の研究者の参加のもと、アフリカにおける植生や植物利用の持続可能性の検討に向け、ローカル・スケールにおける植生の形成プロセスや管理の実践、植物利用の知恵や技術の継承などの実態を明らかにする。そして、データベースの活用や研究発表を通じたアフリカ内外の地域間比較により、ローカルな事象をグローバル・スケールでの変動プロセスに位置付け、自然環境資源の持続可能性を検討することを目的とする。
研究実施状況: -平成25年度-
 2年計画の1年目である本年度は、研究会の開催とデータベース構築をベースに進めた。研究会は全4回(うち1回は公開ワークショップ)開催した。
 6月11日の第1回研究会では今年度の活動方針について協議した。第2回研究会は7月30日に開催し、「宗教と植物」をテーマに3名が発表し地域間比較を行った。11月12日には第3回研究会を開催し、「アフリカにおける油脂植物とその利用」をテーマに3名がフィールドの事例を発表し、油脂源となる植物種やその利用について比較検討した。第4回研究会は2月1日に公開国際ワークショップを兼ねて開催した。“Honeybees, Flora and Subsistence: Sustainable Use of Insects for Human Consumption in Asia and Africa”というタイトルで、国内外で研究を行う4名がハチミツ採集やハチ‐人関係に関して民族植物学や昆虫生態学など多角的な視点から討論した。
 一方、データベースにかんしては、データ数の増加が重要な課題であることを改めて認識し、入力用データの学名のスペルチェック、フォーマット整備などの作業を進めた。

-平成26年度-
 2年計画の終了年である本年度は、平成27年度中の成果発表を目指して、研究会の開催とデータベースの構築を進めた。研究会は全5回(うち1回は公開シンポジウム)を開催した。6月30日の第1回研究会では昨年度の活動について整理し、今年度の活動方針およびデータベース構築の進め方について協議した。第2回研究会は7月22日に開催し「アフリカの植生研究に関する研究動向の紹介」をテーマに共同研究員2名が発表した。11月18日には第3回研究会を開催し、データベース整備の進捗状況を確認し、成果発表に関する打ち合わせをおこなった。2月14日の第4回研究会は公開シンポジウムを兼ねて『現代アフリカにおける植物利用と地域植生の持続可能性』というタイトルで開催し、現代のアフリカ社会における植物利用の意味や地域植生の変化について8名が報告した。2月21日・22日には第5回研究会『アフリカにおける草本植物の利用―生活史と生育環境からの考察』を開催し9名が発表した。
研究成果の概要: -平成25年度-
 研究成果の第一点目としてあげられるのは、データベースの活用に向けた可能性と課題を明らかにしたことである。第3回研究会では、データベースのキーワード検索を活用して油脂植物の学名や属名、その利用にかんするデータを抽出し、他の文献と比較検討した。その結果、(1)油脂植物利用に関わる文化の地理的分布、(2)油脂源植物およびその利用の多様性を検討するために、データベースの活用が有効であることが示された。一方で、今後の課題として、データおよび地点数の増加、科名・学名の精査などが必要であることが明らかになった。  第二点目の成果は、上記で明らかになった課題に対する取り組みとして、過去に収集して未整理のままになっている大量のデータについて科名・学名のスペルチェックおよび入力形式の整備をすすめ、744件のデータを入力可能にしたことである。
 第三点目の成果は、テーマに沿った地域横断的な比較を行う研究会を通じて、植物利用の地域性と多様性、またグローバルな変動による影響について多くの知見を得たことである。第2回の研究会では、「宗教と植物」という視点からチュニジア、ガーナ、ニジェールの各地における植物と人との関係について事例報告が行われたが、発表者と参加者を含めた議論のなかで、植物に対する人々の価値観の多様性や共通する事象が明らかになった。

-平成26年度-
 成果の第1点目は、持続可能性という視点からアフリカの植物利用と植生管理について再検討したことである。第4回研究会では、半乾燥地から熱帯雨林までアフリカのさまざまな植生帯植物利用の事例が報告され、植物そのものの特性と地域を取り巻く社会経済状況が相互に関係しながら持続性に影響を与えていることが明らかになった。またグローバルな言説である「持続可能性」や「生物多様性」などの概念と地域の状況とのズレについても指摘された。たとえばカメルーンのカカオ畑やエチオピアのコーヒー園でみられる「意図しない多様性」が十分に評価されていないことが報告された。第5回研究会では、生活史が短く、その繁殖に人や動物が積極的かつ容易に関与しえる草本植物の利用に焦点を絞り、植物の生活史や生育環境といった植物の特徴が、人と植物の関係にどのように影響を与えるのか、「持続的」な利用の可能性について議論をおこなった。
 第2点目は、成果発表に向けた準備を進めることができた点である。特に第4回および第5回研究会は学術雑誌への投稿につなげる意図があった。これらの研究会での議論を踏まえて来年度中に特集号を組むことを企画している。
 第3点目は、昨年度に引き続き、アフリカの植生および植物利用のデータベース公開にむけて、整備を進めることができたことである。合計1067のデータについて学名のスペルチェックをおこなうとともに、新体系の植物分類による種名を併記するなど検索の際にヒットしやすいような工夫を加えた。また、別の研究者のデータについて日本語記載データの英訳も進めた。
公表実績: -平成25年度-
1.電子媒体:
“AFlora: The database of plant utilization in Africa”(現在試運転中につき、URL公表は後日行う)
2. 研究論文(査読付き):
Daiji KIMURA. 2013. Constructing Aflora: A Database of Plant Use in Africa. African Study Monographs, 34 (3): 143–159.
3. 公開ワークショップ:
“Honeybees, Flora and Subsistence -Sustainable use of insects for human consumption in Asia and Africa”(2014年2月1日,京都大学)

-平成26年度-
1.電子媒体:
“AFlora: The database of plant utilization in Africa”(現在試運転中につき、URL公表は後日行う)
2.公開シンポジウム:
『現代アフリカにおける植物利用と地域植生の持続可能性』
(2015年2月14日(土)13:00~18:10、京都大学稲盛財団記念館3階中会議室、22名が参加)
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成25年度-
 次年度は、データベースの構築と研究会の開催に加え、研究成果を発表することを共同研究会の活動軸にする。 データベースについては、ひきつづきデータ数の増加をめざすとともに、科名・学名の精査をおこなう。さらにデータベースの活用しながら植生や植物利用に関する地域横断的な比較をすすめる。
 また、本年度は十分に検討できたとはいいがたい「持続可能性」に関する側面について研究会で議論を深める。グローバル・スケールでの地域変動にともなうローカルな植物資源利用の動態および植生景観の変化という側面について検討する予定である。
 2年間の研究成果をふまえて、アフリカの植生や植物利用に関する特集号の出版、植物利用を含めた教科書の出版を検討する。

-平成26年度-
 平成27年度には、本研究の成果を熱帯生態学会でセッションを組んで発表し、その内容を踏まえて学術雑誌(英文)に特集号として発表する予定である。また、『植物からみたアフリカ(仮)』というタイトルの教科書を来年度末までに出版する計画であり、現在、目次の作成や執筆者への依頼を進めている。
 平成27年度CIAS共同研究「現代アフリカ社会における植物利用の持続可能性と地域植生の管理」(平成27年4月より平成28年3月まで)で、これまでの議論を深めながら成果発表につなげる予定である。