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相関地域研究プロジェクト

地域内多様性と地域間共通性の比較政治経済分析—ポスト社会主義国を軸として(h25~h26)

個別共同研究ユニット
代表: 仙石 学(西南学院大学法学部・教授)
共同研究員: 磯崎 典世(学習院大学法学部・教授)、上垣 彰(西南学院大学経済学部・教授)、小森 宏美(早稲田大学教育・総合科学学術院・准教授)、仙石 学(西南学院大学法学部・教授)、月村 太郎(同志社大学政策学部・教授)、林 忠行(京都女子大学現代社会学部・教授)、村上 勇介(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
期間: 平成25年4月~平成27年3月(2年間)
目的:  本研究は、社会主義体制が解体した後の中東欧諸国の政治経済の枠組に現れている多様性について、これを他の地域のポスト社会主義国、および社会主義国ではないが、1970年代以降に民主化したラテンアメリカや東アジアの諸国の事例との比較の中で位置づけていくことを、主たる目的としている。体制転換後の中東欧諸国においては、民主主義と市場経済という大きな枠組こそ共通しているものの、具体的な政治経済にかかわる制度面では国ごとに大きな違いが存在している。だがこのような「地域内における多様性」は中東欧に限られるものではなく、例えば民主化後のラテンアメリカにおいても、政治や経済のあり方には多様な形が見られることが確認されている。さらに加えて、それぞれの地域の中で多様な政治経済の形が見られる一方で、その多様性の中には、中東欧とラテンアメリカそれぞれの地域の相違を越えて同じような状況が現れている場合もあるという、「地域を越えた共通側面」も存在することが確認されている。この「地域内における多様性」と「地域を越えた共通性」との関係を、政治経済に関する制度および政策(これはひいては、「国家・社会関係」という抽象的な視点に関して、事実に基づいた具体的な視点から解明する重要な側面となるはずである)に焦点を当てて、実証的および理論的に明らかにしていくことが、本研究の主要な課題となる。
研究実施状況: -平成25年度-
 今年度は本研究課題と、村上勇介が研究代表者となっている研究課題「中東とラテンアメリカにおける体制転換の比較研究」との共催により、従前より実施している「中東欧とラテンアメリカのいまを比較する」研究会を2回実施した。概要は以下の通りである。
〇2013年度第1回(「中東欧とラテンアメリカのいまを比較する」第11回)研究会
日時:2013年9月15日(日)15:00~18:00
会場:京都大学稲盛財団記念館3階小会議室
テーマ:『ネオリベラリズムの実践現場』合評会
討論者:出岡直也(慶應義塾大学)、谷洋之(上智大学)、平田武(東北大学)
〇2013年度第2回(「中東欧とラテンアメリカのいまを比較する」第12回)研究会
日時:2014年3月22日(土)15:00~18:00
会場:早稲田大学早稲田キャンパス9号館304教室
テーマ:新興民主主義国における政策と政党政治
報告:磯崎典世「韓国:グローバル化への対応をめぐる国内政治」
岡田勇(地域研)「1990~2012年のラテンアメリカにおける炭化水素部門の政策比較」
藤嶋亮(同志社大学)「2000年代ルーマニア政党政治における『左』と『右』」

-平成26年度-
 今年度は本研究ユニットと、村上勇介准教授が研究代表者となっている研究ユニット「中東とラテンアメリカにおける体制転換の比較研究」との共催により、従前より実施している「中東欧とラテンアメリカのいまを比較する」研究会を1回実施した。概要は以下の通りである。
【「中東欧とラテンアメリカのいまを比較する」第13回研究会】
実施日:2015年3月29日 14:00〜18:00
会場:早稲田大学早稲田キャンパス16号館10階社会科学科室
テーマ:ラテンアメリカと東欧における「ポスト」ネオリベラル?
報告者および報告タイトル:
・村上勇介(京都大学) 「ポスト新自由主義期ラテンアメリカの『旋回』」
・仙石学(北海道大学) 「ポストネオリベラル期の制度変革-中東欧諸国における年金制度『再』改革を事例として」(これ以外に論文集寄稿予定の小森宏美(早稲田大学)、中田瑞穂(明治学院大学)、横田正顕(東北大学)が、論文の内容に関する簡単な報告を行った。)
研究成果の概要: -平成25年度-
 今年度は上記の通り、これまでの研究を総括し今後の研究の方向性を検討するための、前プロジェクトの研究成果である『ネオリベラリズムの実践現場』の合評会、および中東欧とラテンアメリカに、同様の環境にある韓国を加えた政党政治と政策との連関の比較分析の研究会を実施した。前者の合評会においては、外部コメンテーターのコメントと執筆者のリプライを通して、ネオリベラリズム的な政策の受容を分析するためには国内要因と国外要因の両方を検討する必要があり、特に国内政治要因を十分に検討する必要があること、他方でネオリベラリズム的な政策の受容の時期はその後の国内政治、特に政党の政策位置や有権者の指向性に影響を与えていて、それが国ごとの政党政治の形の違いと密接に連関しているというように、「ネオリベラリズム後」の政治についても十分に検討する必要があること、その際により広い比較の視野を含める必要があることなどが提起された。第2回目の研究会においては、それぞれの国および地域の事例から政策に政党政治がどのような影響を与えているかについての検討が行われたが、そこではグローバル化した経済においては各国が独自に実施できる経済政策の選択肢は限定されていることや、有権者の均質化に伴いどの政党も固定的な支持層を確保できなくなり「包括政党」的な指向を強めていることから、政党の指向性と政策との連関が弱くなっている(「右派」が市場経済、「左派」が国家介入といった形の類型化はできなくなっている)こと、ただしそのプロセスには各国ごとの歴史および政治・制度も影響を与えているため、全体的な動きと地域固有の要因との連関を見ていく必要があることが明らかにされた。

-平成26年度-
 今年度は上記の研究会において、ネオリベラル的な政策が実施された後の東欧及びラテンアメリカにおける政策対応についての検討を行った。東欧ではネオリベラル的な市場を利用した基金型年金制度の改編に関して、反ネオリベラル的な対応を行ったハンガリー、「プラグマティックなネオリベラル路線」により妥協を通しての制度改編を行ったポーランド、そして教条的なネオリベラル路線を採用したチェコという対比が存在するが、ポーランド以外の国に関してはその持続可能性が問題となっていることが明らかとされた。他方のラテンアメリカにおいては、ネオリベラル的政策への反動から一部の国において急進左派が政権を獲得したものの、ベネズエラのように資源を保有する国を例外として、結局はネオリベラル的な政策を大きく変更することは困難であることが示された。この点を踏まえた議論を通して、現在ではいかなる政党が政権についても合理性に基づいた「現実的選択」としては「穏健なネオリベラル」的な政策をとらざるをえなくなっていることが明らかにされたが、他方で「ネオリベラリズム」の内容は多様であり、どのような「ネオリベラリズム」的政策が追求されるかという点についても検討が必要であることも示された。この点については論文集に寄稿予定の他の原稿(南欧の福祉改革、チェコの家族・教育政策、エストニアにおけるネオリベラリズムの継続)ともあわせてさらに検討を行い、継続するプロジェクト(8.参照)においてとりまとめを行う予定である。
公表実績: -平成25年度-
 2013年度に関しては5.で記した研究会の開催のみ。今後論文集などの形で研究成果をまとめていく予定である。

-平成26年度-
 現時点では上記にあげた研究会を実施したのみだが、現在これまでの研究会の成果を元とした論文集を作成する作業を進めている。
研究成果公表計画
今後の展開等:
-平成25年度-
 2013年度の研究成果を受けて、2014年度はポスト社会主義国を軸とした地域間比較をさらに進めていく予定である。その際には特に、「政党政治における『左派』と『右派』」、もしくは「政党のイデオロギーと現実の政策の連関」などに今年度は焦点を当てることを想定している。具体的な研究活動としては、2013年度と同様に年間2回程度の研究会を京都もしくは東京で実施するとともに、研究成果をとりまとめた論文集の出版についても検討を行う予定である。このため今年度の研究費については、主として研究会開催のための旅費および会場利用費に用いるが、他に代表者である仙石が京都に1回出張し、共同研究者である村上勇介氏と論文集出版のための協議を行うことを予定している。

-平成26年度-
 研究成果については上記であげたように、現在論文集『ポストネオリベラル期の新興民主主義国(仮題)』としてとりまとめの作業を行っている。これは2015年度後半に地域研叢書としての公刊を予定している。またこの地域内多様性と地域間共通性を比較するプロジェクトについては、「ポストネオリベラル」の問題に焦点を絞る形で、2015年度の共同研究個別ユニット「ネオリベラリズム以後の新興民主主義国の多様性—ポスト社会主義国を軸として」において、さらなる調査・研究を進める予定である。