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宗教実践の時空間と地域

新規プロジェクト

宗教実践の時空間と地域

代表 林 行夫 ・ 小林 知
研究目的: 人々の暮らしのなかで繰り返される宗教実践が生む時空間と、その実践が創出する共同性や絆の様態と動態を、相関型地域研究の視点から比較検討することにより、宗教および地域の概念を再構築するとともに、研究資源を調査対象地や当該の人々を含めて共有する仕組みを考案する。前複合ユニットでは、国境を越えて広がった宗教的関心にもとづく人の移動、経典や聖具の伝播に焦点をあててそこに生きる人々の視点から地域空間の様態を解明した。その成果を踏まえつつ、概念としての宗教の超越性を前提とせず、宗教に関連した様々なモノやコト(聖地や施設、経典・図像、神話・伝承、宗派・儀礼行為)のマッピングと情報の共有化を推進させることにより、宗教実践の時空間が構築される歴史的な過程とその動態を明らかにする。
研究意義: 世界秩序の基礎的な枠組が国民国家からグローバリゼーションへと移行する今日的状況下でも、様々なレベルの権力が生みだす<排除と包摂>が人々の生活に厳しい影響を与えている状況は変わりない。そのなかで、宗教という現象を「制度と実践」のような二項対立的な視点が明らかにする相互に異質な現実を読み解くにとどまらず、人やモノの移動、それらが生みだす連結や共有が浮き彫りにする絆やネットワークの実態を通して多元的に明らかにすることは、現代世界の存立基盤そのものを新たな視座で考究することを意味する。同時に、宗教実践が描く地域像の動態を浮き彫りすることで各地域・宗教の固有の問題状況についての認識を一新する。また、宗教実践の場において人々の行為がうみだす影響力を多角的に検討し、二次元や三次元空間に止まらず、ヒトが生きる基盤をおくメタレベルの時空間の様相に迫ることにより、地域と表裏一体をなす「宗教」の理解を通じて、人間存在の多様性と普遍性を明らかにすることができる。
期待される成果: 本研究では、分担者による個別事例の報告と課題についての総合討論が中心となる。個別報告では、比較宗教学、人類学、歴史学、民俗学などの専門的見地をもつ分担者の学際的立場からの討論に加え、素材とする調査で得られた経験的データを共有する手法についても議論を進める。人の移動や施設のマッピングを通した実践に関する情報の共有化については、前複合ユニットでの活動で見通しを得ている。本研究は、マッピングに関する具体的な事例を積み重ねるとともに、宗教に関わる、文字化できないモノや情報(儀礼の時空間、参加者の動機など)をいかにデータとして保蔵し共有するかについても検討する。このことで、可視化・文字化できる情報を量的に扱って新たな知見を探ろうとする地域情報学の手法を相対化しつつ拡張することが期待できる。さらに、研究対象となる諸現象、思想の普遍性や超越性を前提に学知としての存立基盤を保持してきた宗教学などの立場からの世界理解とも一線を画し、その土地の社会、経済、歴史、人びとの生活に埋め込まれた「宗教」を総合的に論じる方法を導くことが期待される。