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強くしなやかな社会をめざして―地域研究の可能性―

新規プロジェクト

強くしなやかな社会をめざして―地域研究の可能性―

代表 山本 博之
研究目的: 災害とは日常生活の延長上にあり、それぞれの社会が抱える潜在的な課題が外力によって露呈した状態である。そのため、災害対応においては、被災前の状態に戻すことではなく、被災を契機に明らかになった社会の潜在的課題に働きかけ、よりよい社会を作ることが期待される。そのためには被災前を含む社会の状況を把握することが不可欠であり、この点において災害対応と地域研究が結びつく意義がある。本プロジェクトでは、(1)制度面を中心にした災害・紛争への早期対応や復興過程における社会の再編、(2)記録・記憶を通じた社会の再生・再編の二つの側面から、強くしなやかな社会づくりに資する学術研究としての「災害対応の地域研究」の提示をめざす。
研究意義: 今日の世界では、国境を越えた人・モノ・情報の移動がさかんであり、また、感染症、テロ、災害、原発事故などのように国境を越えた対応が求められるリスクが増加している。このような状況においては、国ごとに事情を理解し、それらを合わせることで世界を把握するという従来多く見られた地域研究の方法が有効性を失いつつあり、かわりに、国境を越えた関係性を意識しながら個別の地域の事情を把握し、さらにそれぞれの研究者がもつ世界観や将来像に照らした地域像を示すことが地域研究者に求められている。そのような対応が喫緊の課題である災害対応の分野について、実務の現場における活用を十分に意識して、地域研究者どうしの連携や、地域研究者と他分野・他業種の専門家との連携・協業の枠組を提示する。
期待される成果: 以下の3つの特徴をもつ「災害対応の地域研究」を個別の事例に即して提示する。
(1)防災や人道支援・復興の専門性を地域社会固有の社会編成や価値体系、歴史的経緯に即したかたちで展開させるための地域理解を提示することで、地域の事情にねざした災害対応を助ける。
(2)危機に際して顕在化した社会の課題を平常時の社会の課題と結びつけて捉えることで、平常時に捉えにくい地域社会の特徴や社会の再編過程についての理解を深める。
(3)広い意味での災害対応(リスク対応)に関して、歴史的・文化的背景を踏まえた中長期的な視野に立った制度づくりや、記憶や記録の再編から社会の自立のあり方を考えることを通じて、変化や変動に対応しうる強くしなやかな社会(レジリエント・ソサエティ)づくりに資する。