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ポストグローバル化期の国家社会関係

新規プロジェクト

ポストグローバル化期の国家社会関係

代表 村上 勇介
研究目的: 1980年代以降、世界各地に波及し、各々の社会のあり方を変動させたグローバル化は、今日、踊り場にさしかかっている。一方では、中東革命を筆頭に体制移行・民主化が現在進行形で進んでいる地域・国があり、新自由主義経済路線は基調として様々な地域に影響を与え続けている。情報化も引き続き世界各地での変容を加速させている。だが他方では、「勝者」と「敗者」が明瞭となり新自由主義路線の見直しや反対が広まっているほか、中央アジアなどの旧ソ連圏での権威主義体制の存続や、中東民主化にともなう国家のイスラーム化、ラテンアメリカにおける民主主義体制の後退例などが観察される。本研究は、グローバル化の潮流が前世紀末のような支配的、一方的な傾向ではなくなっている今世紀初頭の位相について、社会変動の中心的力学を生みだす国家社会関係の観点から分析し、今後を展望することを目的とする。実施にあたっては、体制移行・民主化、福祉、教育など、地域横断的な課題設定を行い、研究対象とする地域がことなる研究者から構成される個別共同研究ユニットを立ちあげ、地域間比較研究を基軸にすえる。
研究意義: 本研究の意義は、第一に、各地域や各国の歴史的、構造的な要因を踏まえつつ、ポストグローバル化期の国家社会関係について、世界の複数の地域における動態を深層から解明することである。グローバル化の浸透とその影響の現れ方は地域によってことなり、また同一地域内でも相違が生じている場合がある。そうした事実は、状況や行為主体に起因する要因に加え、各地域や各国の歴史的、構造的な条件によって規定されていることが背景にあると考えられる。この点について、グローバル化以降の政治・経済・社会の主要な行為主体間の関係の変化、ならびにその関係のもとで構築・再編される公式・非公式の制度に焦点をあてて分析をおこなう。歴史的、構造的な条件および変動する行為主体間関係と制度をつまびらかにする作業をつうじ、地域間および地域内の比較分析を実施する。第二に、本研究は直接的な対象となる地域以外の地域との比較研究の基礎を形成する。他地域との比較研究の出発点となり、またその今後を考えるうえで示唆を与えるものである。第三に、前記の第二点目と関連し、本研究は、比較分析枠組の構築につながる。各地域の事例から帰納的に比較研究の枠組を抽出する議論を展開し、比較研究の俎上にあがった地域間の比較からえられた分析枠組を、対象地域以外の地域の事例から検証する。
期待される成果: 本研究の期待される成果は、第一に、地域横断的な課題設定のもと、ポストグローバル化期における国家社会関係の主要な側面について、その実態を明らかにすることである。グローバル化は時間差をともなって世界各地にひろまった。共通した現象もあれば、相違する側面も見られた。同様の状況は、ポストグローバル化の現在においても観察される。そこで、歴史的、構造的な条件や制約をも視角に収めつつ、地域を超えた共通性や地域内での相違を解明することで、国家社会関係の現代的位相を提示する。それは、従来の地域像とはことなった、地域にたいする見方や理解、分析を可能とする。第二に、特定の専門分野が実施する演繹的な比較分析とは異なり、実態に即した比較研究の分析枠組を新たに編み出す契機となる。一定の枠組みによって演繹的に地域を切りとって比較するのではなく、矛盾する事例も射程にいれつつ帰納的に分析枠組を構築する試みである。